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第38章「白百合の間への召喚(王家の動き)
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夜が明ける前の薄闇。
別邸の窓辺には、
まだ影の余韻のような白百合の香りが残っていた。
シャルロットは
王都からの医師を呼び寄せた侍従たちとともに、
カルロスの寝室に寄り添っていた。
夫の胸に残る白い痣は
昨夜より薄くなっていたが、
体温はまだ弱いまま。
シャルロットは
冷たさが戻らない夫の手を握りながら、
自分の涙の跡が消えているのを見て
かすかな安堵を覚えた。
(……わたくしの涙が……
ほんの少しだけ……
呪いを押し返した……)
だが同時に胸は締めつけられる。
(もし影が再び……
公爵さまに触れれば……
命さえ奪われてしまう……)
その時だった。
部屋の扉が静かにノックされ、
侍従長が重々しい顔で入ってきた。
「奥方様……
王都より“召喚状”が届きました」
シャルロットは顔を上げる。
召喚状——
それは“王家からの命令”を意味する。
侍従長は文書を差し出した。
白の封蝋には、
“王族の紋章と白百合”が刻まれている。
シャルロットの胸がざわついた。
(白百合……
影と……同じ花……)
震える手で封蝋を割ると、
中から上質な紙に記された短い命令文が現れた。
《公爵夫人シャルロット・レイエル・フォン・アストリアへ》
本日夕刻、“白百合の間”へ出頭されたし。
影の件について直接聴取を行う。
王宮より。
シャルロットは息を呑んだ。
(白百合の間……
あの“影の事件”を王家が……
正式に取り扱う……)
侍従長は静かに続けた。
「奥方様……
この召喚は、
“影の出現”を王家が重大事として扱った証です。
おそらく……
“影の真実”をお尋ねになりたいのでしょう」
シャルロットの手が震える。
(影の真実……
ミレイユの出生、呪い、わたくしの涙……
それを……王宮で……話す……?)
カルロスの胸がかすかに上下する。
彼はまだ完全には意識を取り戻していない。
シャルロットは夫の頬に触れながら
小さく囁いた。
「公爵さま……
わたくし……
行かねばなりません……
あなたを守るためにも……」
カルロスの指が
かすかにシャルロットの手を握った。
「……い……く……な……」
「公爵さま……」
「危険……だ……
白百合の間……は……」
言いかけた言葉は途切れたが、
その警告の意味は十分伝わる。
白百合の間——
そこはかつて、
“影の妻”が審議された部屋。
シャルロットは決意を込めて言った。
「大丈夫です。
必ず戻ってまいります。
あなたの“本妻”として」
カルロスの指が、
弱々しくも確かに握り返す。
夕刻。
王宮へ向かう馬車は、
静かに石畳を走っていた。
窓の外には、
白百合を象った街灯が並ぶ。
街灯の下を通るたび、
シャルロットの胸がざわりと揺れる。
(わたくしの涙が……
呪いを薄める力を持つ……
それを王家が知れば……
わたくしは……)
馬車が王宮へ入り、
侍従に案内されて
“白百合の間”の前に立った時。
シャルロットは息を呑んだ。
高い天井。
白い大理石の柱。
壁一面には白百合のレリーフが刻まれ、
その中心には
大きな“影とも光ともつかぬ紋章”が浮かぶ。
まるで——
影と白百合を祀る部屋。
重い扉がゆっくりと開かれ、
シャルロットは一歩踏み出した。
中には、
王太后、第二王子、宮廷魔術師、王家の記録官が揃っていた。
まるで裁きの場。
王太后が言った。
「ようこそ、レイエル公爵夫人。
あなたに尋ねたいことが、
山ほどございます——
“影の妻の涙”について。」
シャルロットは立ったまま、
静かに息を吸った。
(わたくしは——
逃げない。本妻としてここに立つ。)
白百合の間の空気が張り詰める。
(ミレイユ……
わたくしは……
あなたの“影”の真実を知るために来ました。)
そして王太后の次の言葉が、
シャルロットの心臓を冷たく締めつけた。
「まずはひとつ確認いたします。
——あなたは、本当に“影ではない”のですね?」
シャルロットの呼吸が止まった。
別邸の窓辺には、
まだ影の余韻のような白百合の香りが残っていた。
シャルロットは
王都からの医師を呼び寄せた侍従たちとともに、
カルロスの寝室に寄り添っていた。
夫の胸に残る白い痣は
昨夜より薄くなっていたが、
体温はまだ弱いまま。
シャルロットは
冷たさが戻らない夫の手を握りながら、
自分の涙の跡が消えているのを見て
かすかな安堵を覚えた。
(……わたくしの涙が……
ほんの少しだけ……
呪いを押し返した……)
だが同時に胸は締めつけられる。
(もし影が再び……
公爵さまに触れれば……
命さえ奪われてしまう……)
その時だった。
部屋の扉が静かにノックされ、
侍従長が重々しい顔で入ってきた。
「奥方様……
王都より“召喚状”が届きました」
シャルロットは顔を上げる。
召喚状——
それは“王家からの命令”を意味する。
侍従長は文書を差し出した。
白の封蝋には、
“王族の紋章と白百合”が刻まれている。
シャルロットの胸がざわついた。
(白百合……
影と……同じ花……)
震える手で封蝋を割ると、
中から上質な紙に記された短い命令文が現れた。
《公爵夫人シャルロット・レイエル・フォン・アストリアへ》
本日夕刻、“白百合の間”へ出頭されたし。
影の件について直接聴取を行う。
王宮より。
シャルロットは息を呑んだ。
(白百合の間……
あの“影の事件”を王家が……
正式に取り扱う……)
侍従長は静かに続けた。
「奥方様……
この召喚は、
“影の出現”を王家が重大事として扱った証です。
おそらく……
“影の真実”をお尋ねになりたいのでしょう」
シャルロットの手が震える。
(影の真実……
ミレイユの出生、呪い、わたくしの涙……
それを……王宮で……話す……?)
カルロスの胸がかすかに上下する。
彼はまだ完全には意識を取り戻していない。
シャルロットは夫の頬に触れながら
小さく囁いた。
「公爵さま……
わたくし……
行かねばなりません……
あなたを守るためにも……」
カルロスの指が
かすかにシャルロットの手を握った。
「……い……く……な……」
「公爵さま……」
「危険……だ……
白百合の間……は……」
言いかけた言葉は途切れたが、
その警告の意味は十分伝わる。
白百合の間——
そこはかつて、
“影の妻”が審議された部屋。
シャルロットは決意を込めて言った。
「大丈夫です。
必ず戻ってまいります。
あなたの“本妻”として」
カルロスの指が、
弱々しくも確かに握り返す。
夕刻。
王宮へ向かう馬車は、
静かに石畳を走っていた。
窓の外には、
白百合を象った街灯が並ぶ。
街灯の下を通るたび、
シャルロットの胸がざわりと揺れる。
(わたくしの涙が……
呪いを薄める力を持つ……
それを王家が知れば……
わたくしは……)
馬車が王宮へ入り、
侍従に案内されて
“白百合の間”の前に立った時。
シャルロットは息を呑んだ。
高い天井。
白い大理石の柱。
壁一面には白百合のレリーフが刻まれ、
その中心には
大きな“影とも光ともつかぬ紋章”が浮かぶ。
まるで——
影と白百合を祀る部屋。
重い扉がゆっくりと開かれ、
シャルロットは一歩踏み出した。
中には、
王太后、第二王子、宮廷魔術師、王家の記録官が揃っていた。
まるで裁きの場。
王太后が言った。
「ようこそ、レイエル公爵夫人。
あなたに尋ねたいことが、
山ほどございます——
“影の妻の涙”について。」
シャルロットは立ったまま、
静かに息を吸った。
(わたくしは——
逃げない。本妻としてここに立つ。)
白百合の間の空気が張り詰める。
(ミレイユ……
わたくしは……
あなたの“影”の真実を知るために来ました。)
そして王太后の次の言葉が、
シャルロットの心臓を冷たく締めつけた。
「まずはひとつ確認いたします。
——あなたは、本当に“影ではない”のですね?」
シャルロットの呼吸が止まった。
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