舞踏会は裏切りの夜

柴田はつみ

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12 賢者の選択

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ある冬の午後、王城の図書室で、リリアナはエドワードとともに書物を読んでいた。窓の外には雪が舞い、静かな時間が流れていた。


「リリアナ、覚えているかい? 君と初めて会ったのは、この廊下だった。あの時は、まさか君がこんなにも知恵と勇気を持つ女性だとは、夢にも思わなかった」



エドワードは、そう言って微笑んだ。リリアナは、静かに彼を見つめ返した。


「殿下…私も、殿下が、アルフレッド様のような方ではないと知ったとき、どれほど安堵したかわかりません」


彼女の言葉には、もはや過去への恨みも悲しみもなかった。


ただ、真実を見抜けた自分への誇りが、静かに輝いていた。


「アルフレッド…彼に会ったよ」


エドワードは、突然そう告げた。リリアナは、一瞬息をのんだ。


「彼は、君を失ったことを深く後悔していた。そして、君に許しを請いたいと…」


リリアナは、静かに目を閉じた。彼の言葉が、彼女の心を揺るがすことはなかった。


「殿下。私は、彼を許すつもりです。ですが、彼が求めているような、『元の関係に戻るための許し』ではありません」


「では、どのような許しを?」


「彼の後悔は、彼自身が成長するためのものです。私が与える許しは、彼の人生を終わらせるのではなく、彼に新しい一歩を踏み出させるためのもの。そして、私自身の過去に、終止符を打つためのものです」




彼女の言葉に、エドワードは深く頷いた。


「君は、本当に賢い。そして、強い」


エドワードは、リリアナの手をそっと取った。彼の温かい手に、リリアナの心臓が静かに高鳴る。


それは、アルフレッドに向けたような、浮ついた高揚感ではなかった。彼の信頼と、優しさと、そして確かな愛を感じる、穏やかで確固たる鼓動だった。



「リリアナ、私はこの国の未来を、君と共に歩みたい」


彼の言葉は、まるで雪解けのように、彼女の心に染み渡った。


「君の知恵と勇気が、この国を導く力になる。そして…何よりも、君といることで、私は自分自身でいられる。君の誠実さが、私の心を照らしてくれる」



リリアナは、彼の言葉に涙が溢れそうになった。舞踏会で受けた裏切りが、彼女を絶望の淵に突き落とした。


だが、その絶望があったからこそ、彼女は真の自分を見つけ、そして、真の愛にたどり着くことができた。


「殿下…」


「愛している、リリアナ。この国の未来を、そして君の人生を、私に任せてくれないか」



エドワードのまっすぐな眼差しに、リリアナは静かに頷いた。彼女の選択は、過去への報復でも、誰かのための犠牲でもない。



それは、彼女自身の幸せと、そしてこの国の未来を築くための、賢者の選択だった。



窓の外では、雪が止み、晴れ間が覗き始めていた。


光が、リリアナとエドワードの未来を祝福するように、静かに降り注いでいた。
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