36 / 51
第35章|嫉妬の暴発
しおりを挟む
王宮の午後は、香が薄いほど残酷だった。
香が薄いと、言葉がよく響く。
言葉がよく響くと、噂がよく育つ。
リーシャは回廊を歩いていた。
必要最低限の動線。必要最低限の礼。必要最低限の言葉。
それでも視線は刺さる。刺さるたび、胸の奥が少しずつ冷える。
白い手袋の指先を揃え、微笑を固定する。
泣けば負ける。
泣かなければ“つまらない妃”。
その二択の中で、生き残る方を選ぶ。
先頭に護衛ロラン。
半歩後ろに侍女長アグネス。
少し離れて王弟アドリアン――近づかない、触れない、けれど“同行”の事実だけが王宮の絵になる距離。
(燃えるなら、燃えればいい)
リーシャはそう思うようになっていた。
燃える炎は痛い。でも炎があるうちは、まだ自分が消えていない。
曲がり角の先で、香が一段甘くなった。
貴婦人たちの輪があった。
侯爵夫人ベアトリス。
伯爵夫人ミレーユ。
子爵夫人カトリーヌ。
公爵夫人オリヴィア。
令嬢エヴァとリリアナ。
扇の影に噂屋ヴィオラ。
そして輪の外側に、古参女官マルタが立っている。
彼女は何も言わない。言わない代わりに、空気を整える。空気が王宮の秩序だ。
扇が揺れ、一斉に礼が降る。
礼儀正しい。礼儀正しいほど、棘が隠れる。
「王妃陛下、ご機嫌麗しゅう」
ベアトリスの声は甘い。甘いほど危険だ。
リーシャは微笑で返す。
「皆さまも、ご機嫌よう」
その瞬間、ミレーユの視線が白い手袋に落ちた。
落ちた視線を、カトリーヌが拾う。
「今日も白い手袋。……寒いんですものね」
エヴァが無邪気に言う。
「でも素敵。王弟殿下って、本当にお優しい」
“優しい”という単語は、噂の合図だ。
優しい=特別。特別=恋。恋=罪。
王宮はすぐそこへ飛ぶ。
オリヴィアが上品に言った。
「距離は品位ですわ。
あまり近いと、世間が――」
世間。
世間という刃で人を縛る。
そしてヴィオラが、断定しない声で仕上げる。
「絵になりますわ。
王妃の白い手袋、護衛ロラン、王弟殿下……」
“護衛ロラン”。
その名を出した瞬間、ロランの背がわずかに硬くなった。
彼は何も言わない。言えば燃料になるから。
ミレーユが、舞踏会の夜を蒸し返すように囁く。
「抱き留めたのも護衛でしたものね」
陰謀ではない。
ただの悪趣味だ。
だから止められない。
リーシャは足を止めない。
止めたら負ける。
止めた瞬間、「王妃は気にした」と噂が結論を作る。
ロランが半歩前で、静かに道を作った。
噂にならない距離。
守るほど燃える距離。
回廊を抜けると、空気が一段冷たくなった。
その冷たさが、今は救いだった。
執務棟の手前。
温度が奪われるような気配がそこにあった。
国王レオニス。
黒い礼装。硬い背筋。氷の瞳。
その半歩隣に、淡い金。
セレス。
金髪と黄金のドレス。
彼女は国王の袖口を整えていた。
触れることが許される距離。止められる距離。
“内側の者”の距離。
リーシャは礼をした。深く、完璧に。
視線は上げない。目を合わせない。
合わせれば意味を探してしまう。意味は毒だ。
「陛下」
国王の返事は頷きだけ。
言葉はない。
けれど視線だけが、リーシャではなくロランへ刺さった。
「ロラン」
低い声。短い声。
短いほど危険だ。
ロランは即座に跪く。
「陛下」
国王の眉間が僅かに寄る。
苛立ちの奥に、焦りが混じる。
奪われる恐怖が混じる。
嫉妬が命令の形を取る。
「王妃に近づくな」
一度目。
ロランが一拍置いて答える。
「護衛として必要な距離を――」
「違う」
国王が切る。
「王妃に近づくな。……何回も言ってる」
“何回も”という一語が、余裕ではなく追い詰められた音で落ちた。
命令の形をしているのに、喉の奥に嫉妬が混じっている。
リーシャの胸が冷える。
(守りたいなら、言葉をください)
でも届くのは命令だけ。
命令だけが、王妃を透明にする。
ロランは言葉を削る。
「承知しました。距離を改めます」
その瞬間、リーシャの足元がわずかに揺れた。
ロランが距離を取る。
距離を取れば、護衛の壁が薄くなる。
薄くなった瞬間、王妃は倒れる。
突風が回廊を抜けた。
カーテンが揺れ、冷気が流れ込み、リーシャのドレスの裾が一瞬引かれる。
たったそれだけでバランスが崩れる。
(……っ)
転倒未遂。
舞踏会の夜と同じ“絵”を、王宮はまた欲しがる。
だが今度はロランが近づけない。
近づけば命令違反。
躊躇いが生まれる。躊躇いは時間になる。時間は危険になる。
リーシャは自力で踏みとどまった。
王妃の姿勢で。王妃の微笑で。
倒れない。倒れない。倒れない。
倒れないことが、逆に胸を痛ませた。
倒れたら、国王が来たかもしれない――という毒が生まれるからだ。
セレスがすぐに国王の腕を掴み、柔らかく囁いた。
「陛下、ここは……皆さまが」
“ここは”。
公の場。
王が弱点を見せられない場。
国王の足が止まる。
止まったまま、目だけがリーシャを見る。
焦り。
嫉妬。
奪われる恐怖。
でも来ない。
来られない。
来れば王が人間になってしまうから。
リーシャは微笑を崩さず、静かに言った。
「お気遣いなく」
言うほどに心が遠くなる。
遠くなればなるほど、生き残る。
ロランは歯を食いしばり、さらに半歩下がる。
守れない悔しさが背中に滲む。
その背中を、貴婦人たちの扇が見逃さない。
「見た?」とカトリーヌが息を弾ませる。
「王妃様、一人で踏みとどまったわ」
ミレーユが笑う。
「強いのね。……強いから、誰も守らない」
ベアトリスが甘く言う。
「そして陛下は、守るのはセレス様」
陰謀ではない。
ただの観察。
ただの悪意。
ただの言葉遊び。
それが王妃を殺す。
リーシャはロランを庇いたかった。
庇えばロランが救われる。
でも庇った瞬間、国王の嫉妬がさらに燃え、ロランがもっと遠ざけられる。
だからリーシャは、庇う言葉を飲み込んだ。
(私が言えば、また誰かが傷つく)
その理解が、リーシャの心を完全に閉じさせる。
国王が最後に、リーシャへ向けて短く命じた。
「……余計な噂を増やすな」
余計な噂。
増やしているのは誰だ。
でも王宮では、問い返す方が罪になる。
リーシャは礼をした。完璧に。
「承知しました、陛下」
その返事の冷たさが、リーシャ自身を守る鎧になった。
鎧がある限り、泣かずにいられる。
そしてリーシャは胸の内で、静かに確認する。
(私はもう、戻らない)
国王の嫉妬は救いにならない。
救いにならないまま、命令だけが増える。
命令だけが増えるなら、私は自分で選ぶ。
自分の隣を。
自分の未来を。
回廊の奥で、ヴィオラが扇の陰で目だけ笑った。
今日の“絵”は、明日の“真実”になる。
――王妃は守られない。
――王弟が守る。
――王は嫉妬する。
――セレスが止める。
香が薄いと、言葉がよく響く。
言葉がよく響くと、噂がよく育つ。
リーシャは回廊を歩いていた。
必要最低限の動線。必要最低限の礼。必要最低限の言葉。
それでも視線は刺さる。刺さるたび、胸の奥が少しずつ冷える。
白い手袋の指先を揃え、微笑を固定する。
泣けば負ける。
泣かなければ“つまらない妃”。
その二択の中で、生き残る方を選ぶ。
先頭に護衛ロラン。
半歩後ろに侍女長アグネス。
少し離れて王弟アドリアン――近づかない、触れない、けれど“同行”の事実だけが王宮の絵になる距離。
(燃えるなら、燃えればいい)
リーシャはそう思うようになっていた。
燃える炎は痛い。でも炎があるうちは、まだ自分が消えていない。
曲がり角の先で、香が一段甘くなった。
貴婦人たちの輪があった。
侯爵夫人ベアトリス。
伯爵夫人ミレーユ。
子爵夫人カトリーヌ。
公爵夫人オリヴィア。
令嬢エヴァとリリアナ。
扇の影に噂屋ヴィオラ。
そして輪の外側に、古参女官マルタが立っている。
彼女は何も言わない。言わない代わりに、空気を整える。空気が王宮の秩序だ。
扇が揺れ、一斉に礼が降る。
礼儀正しい。礼儀正しいほど、棘が隠れる。
「王妃陛下、ご機嫌麗しゅう」
ベアトリスの声は甘い。甘いほど危険だ。
リーシャは微笑で返す。
「皆さまも、ご機嫌よう」
その瞬間、ミレーユの視線が白い手袋に落ちた。
落ちた視線を、カトリーヌが拾う。
「今日も白い手袋。……寒いんですものね」
エヴァが無邪気に言う。
「でも素敵。王弟殿下って、本当にお優しい」
“優しい”という単語は、噂の合図だ。
優しい=特別。特別=恋。恋=罪。
王宮はすぐそこへ飛ぶ。
オリヴィアが上品に言った。
「距離は品位ですわ。
あまり近いと、世間が――」
世間。
世間という刃で人を縛る。
そしてヴィオラが、断定しない声で仕上げる。
「絵になりますわ。
王妃の白い手袋、護衛ロラン、王弟殿下……」
“護衛ロラン”。
その名を出した瞬間、ロランの背がわずかに硬くなった。
彼は何も言わない。言えば燃料になるから。
ミレーユが、舞踏会の夜を蒸し返すように囁く。
「抱き留めたのも護衛でしたものね」
陰謀ではない。
ただの悪趣味だ。
だから止められない。
リーシャは足を止めない。
止めたら負ける。
止めた瞬間、「王妃は気にした」と噂が結論を作る。
ロランが半歩前で、静かに道を作った。
噂にならない距離。
守るほど燃える距離。
回廊を抜けると、空気が一段冷たくなった。
その冷たさが、今は救いだった。
執務棟の手前。
温度が奪われるような気配がそこにあった。
国王レオニス。
黒い礼装。硬い背筋。氷の瞳。
その半歩隣に、淡い金。
セレス。
金髪と黄金のドレス。
彼女は国王の袖口を整えていた。
触れることが許される距離。止められる距離。
“内側の者”の距離。
リーシャは礼をした。深く、完璧に。
視線は上げない。目を合わせない。
合わせれば意味を探してしまう。意味は毒だ。
「陛下」
国王の返事は頷きだけ。
言葉はない。
けれど視線だけが、リーシャではなくロランへ刺さった。
「ロラン」
低い声。短い声。
短いほど危険だ。
ロランは即座に跪く。
「陛下」
国王の眉間が僅かに寄る。
苛立ちの奥に、焦りが混じる。
奪われる恐怖が混じる。
嫉妬が命令の形を取る。
「王妃に近づくな」
一度目。
ロランが一拍置いて答える。
「護衛として必要な距離を――」
「違う」
国王が切る。
「王妃に近づくな。……何回も言ってる」
“何回も”という一語が、余裕ではなく追い詰められた音で落ちた。
命令の形をしているのに、喉の奥に嫉妬が混じっている。
リーシャの胸が冷える。
(守りたいなら、言葉をください)
でも届くのは命令だけ。
命令だけが、王妃を透明にする。
ロランは言葉を削る。
「承知しました。距離を改めます」
その瞬間、リーシャの足元がわずかに揺れた。
ロランが距離を取る。
距離を取れば、護衛の壁が薄くなる。
薄くなった瞬間、王妃は倒れる。
突風が回廊を抜けた。
カーテンが揺れ、冷気が流れ込み、リーシャのドレスの裾が一瞬引かれる。
たったそれだけでバランスが崩れる。
(……っ)
転倒未遂。
舞踏会の夜と同じ“絵”を、王宮はまた欲しがる。
だが今度はロランが近づけない。
近づけば命令違反。
躊躇いが生まれる。躊躇いは時間になる。時間は危険になる。
リーシャは自力で踏みとどまった。
王妃の姿勢で。王妃の微笑で。
倒れない。倒れない。倒れない。
倒れないことが、逆に胸を痛ませた。
倒れたら、国王が来たかもしれない――という毒が生まれるからだ。
セレスがすぐに国王の腕を掴み、柔らかく囁いた。
「陛下、ここは……皆さまが」
“ここは”。
公の場。
王が弱点を見せられない場。
国王の足が止まる。
止まったまま、目だけがリーシャを見る。
焦り。
嫉妬。
奪われる恐怖。
でも来ない。
来られない。
来れば王が人間になってしまうから。
リーシャは微笑を崩さず、静かに言った。
「お気遣いなく」
言うほどに心が遠くなる。
遠くなればなるほど、生き残る。
ロランは歯を食いしばり、さらに半歩下がる。
守れない悔しさが背中に滲む。
その背中を、貴婦人たちの扇が見逃さない。
「見た?」とカトリーヌが息を弾ませる。
「王妃様、一人で踏みとどまったわ」
ミレーユが笑う。
「強いのね。……強いから、誰も守らない」
ベアトリスが甘く言う。
「そして陛下は、守るのはセレス様」
陰謀ではない。
ただの観察。
ただの悪意。
ただの言葉遊び。
それが王妃を殺す。
リーシャはロランを庇いたかった。
庇えばロランが救われる。
でも庇った瞬間、国王の嫉妬がさらに燃え、ロランがもっと遠ざけられる。
だからリーシャは、庇う言葉を飲み込んだ。
(私が言えば、また誰かが傷つく)
その理解が、リーシャの心を完全に閉じさせる。
国王が最後に、リーシャへ向けて短く命じた。
「……余計な噂を増やすな」
余計な噂。
増やしているのは誰だ。
でも王宮では、問い返す方が罪になる。
リーシャは礼をした。完璧に。
「承知しました、陛下」
その返事の冷たさが、リーシャ自身を守る鎧になった。
鎧がある限り、泣かずにいられる。
そしてリーシャは胸の内で、静かに確認する。
(私はもう、戻らない)
国王の嫉妬は救いにならない。
救いにならないまま、命令だけが増える。
命令だけが増えるなら、私は自分で選ぶ。
自分の隣を。
自分の未来を。
回廊の奥で、ヴィオラが扇の陰で目だけ笑った。
今日の“絵”は、明日の“真実”になる。
――王妃は守られない。
――王弟が守る。
――王は嫉妬する。
――セレスが止める。
523
あなたにおすすめの小説
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫」と笑った夫。~王宮から私が去ったあと「愛していた」と泣きついても、もう手遅れです~
水上
恋愛
「君は完璧だから、放っておいても大丈夫だ」
夫である王太子はそう笑い、泣き真似が得意な見習い令嬢ばかりを優先した。
王太子妃セシリアは、怒り狂うこともなく、静かに心を閉ざす。
「左様でございますか」
彼女は夫への期待というノイズを遮断し、離縁の準備を始めた。
冷たい王妃の生活
柴田はつみ
恋愛
大国セイラン王国と公爵領ファルネーゼ家の同盟のため、21歳の令嬢リディアは冷徹と噂される若き国王アレクシスと政略結婚する。
三年間、王妃として宮廷に仕えるも、愛されている実感は一度もなかった。
王の傍らには、いつも美貌の女魔導師ミレーネの姿があり、宮廷中では「王の愛妾」と囁かれていた。
孤独と誤解に耐え切れなくなったリディアは、ついに離縁を願い出る。
「わかった」――王は一言だけ告げ、三年の婚姻生活はあっけなく幕を閉じた。
自由の身となったリディアは、旅先で騎士や魔導師と交流し、少しずつ自分の世界を広げていくが、心の奥底で忘れられないのは初恋の相手であるアレクシス。
やがて王都で再会した二人は、宮廷の陰謀と誤解に再び翻弄される。
嫉妬、すれ違い、噂――三年越しの愛は果たして誓いとなるのか。
あなたの隣は私ではないけれど、それでも好きでいてもいいですか、レオナルド様
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢エリアーナには、三年間ずっと抱えてきた秘密がある。
婚約者であるヴァルフォード公爵・レオナルドへの、誰にも言えない恋心だ。
しかし彼の隣にいるのは、いつも幼馴染の伯爵令嬢・ソフィア。
儚げな笑顔と上目遣いで男性を虜にするあざとい彼女に、レオナルドも例外ではないようで——
「レオ、私のこと嫌いにならないでね?」
「……そんなことにはならない」
また始まった二人の世界。
【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない
くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、
軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。
言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。
――そして初めて、夫は気づく。
自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。
一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、
「必要とされる存在」として歩き始めていた。
去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。
これは、失ってから愛に気づいた男と、
二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。
――今さら、遅いのです。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
「君は地味な裏方だ」と愛人を優遇するサイコパス気質の夫。〜私が去った後、商会の技術が全て私の手によるものだと気づいても、もう手遅れです〜
水上
恋愛
「君は地味だから裏方に徹しろ」
効率主義のサイコパス気質な夫は、妻であるクララの磨いた硝子を愛人の手柄にし、クララを工房に幽閉した。
彼女は感情を捨て、機械のように振る舞う。
だが、クララの成果を奪い取り、夫が愛人を壇上に上げた夜、クララの心は完全に凍りついた。
彼に残した書き置きは一通のみ。
クララが去った後、商会の製品はただの石ころに戻り、夫の計算は音を立てて狂い始める。
これは、深い絶望と、遅すぎた後悔の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる