十年越しの幼馴染は今や冷徹な国王でした

柴田はつみ

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第十章 別れの言葉

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翌朝、エラナは、レオを呼び出した。部屋に差し込む柔らかな光が、エラナの表情を、どこか決意に満ちたものに見せていた。


「レオ…」



「王妃様」



レオは、エラナの前に、静かに跪いた。


「わたくし、決めたわ。…あなたと、この王宮を出る」



エラナの言葉に、レオは、顔を上げた。その瞳は、驚きと、そして喜びの色に揺れていた。



「王妃様…」



「もう、わたくしには、ここにいる理由がないの。…アレン様は、わたくしを愛していない。わたくしも、もう、アレン様を、信じることはできない」



エラナは、そう言って、レオの手を握った。



「…あなたには、心から感謝しているわ。あなたのおかげで、わたくしは、もう一度、生きる勇気を持つことができた」



レオは、エラナの言葉に、何も言わずに、ただ、強く、その手を握り返した。



「…さあ、準備をしましょう。今夜、ここを出るのよ」



エラナは、そう言って、立ち上がった。レオも、静かに立ち上がり、エラナに深く頭を下げた。



その日の夜、エラナは、再びアレンの部屋を訪れた。扉を叩くと、アレンの声が、冷たく響いた。



「…何の用だ」



「陛下…わたくしです。エラナです」


「…用はない。下がれ」


アレンの言葉に、エラナは、震える声で言った。



「…最後のお別れを、申し上げたくて」



エラナの言葉に、部屋の中が、静まり返った。やがて、重い扉が、ゆっくりと開いた。
アレンが、厳しい表情で、扉の向こうに立っていた。



「…最後だと?」



「はい。わたくしは、今夜、この王宮を出ていきます」



エラナは、そう言って、アレンの目を、真っ直ぐに見つめた。アレンの表情に、微かな動揺が走った。



「…どういうことだ」



「もう、陛下のおそばにいることは、できません。…陛下は、わたくしを愛していない。わたくしも、もう…」



エラナは、そこで言葉を止めた。



「…もう、いい。勝手にしろ」



アレンは、そう言って、扉を閉めようとした。だが、エラナは、その手を、強く掴んだ。


「待ってください、陛下!」


アレンは、エラナの強い力に、驚いたように、動きを止めた。


「…わたくしは、あなたの妻でした。…ほんの一瞬でも、あなたのことを、信じようとしました。…ですが、あなたは、わたくしの心を、踏みにじった」



エラナの言葉に、アレンは、何も言い返すことができなかった。



「…さようなら、陛下。…どうか、お幸せに」


エラナは、そう言って、アレンの手を離した。そして、アレンに背を向け、静かに歩き出した。


アレンは、エラナの後ろ姿を、ただ、呆然と見つめていた。その背中は、どこか、とても小さく、寂しげに見えた。



「…待て」



アレンの声が、背後から聞こえた。だが、エラナは、振り返らなかった。



「…お前は、どこへ行くのだ」


アレンの声は、先ほどまでの冷たさを失い、どこか、焦燥に満ちていた。だが、エラナは、もう、その声に、応えることはなかった。



エラナは、ただ、前だけを見て、歩き続けた。新しい人生を始めるために、愛のない結婚から、自由になるために。



アレンは、その場に立ち尽くし、ただ、エラナの、遠ざかる後ろ姿を、見つめ続けることしかできなかった。


まるで、自分の人生から、最も大切なものが、音もなく、消え去っていくかのように。
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