触手召喚士

柏木あきら

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7.提案

 翌日。朝食をとりながらワスカに今日は探索を休みにしようとコオは提案した。
「え? どうして」
「この暑さだよ、ちょっと休まないと体がもたない。そりゃワスカは地元だから慣れてるだろうけどさ」
 ココット村に来て三週間。天気の悪い日以外はずっと密林に通っていたコオの突然の提案にワスカは違和感を感じていたようだが、やがて『それもそうだな』と呟いた。
「ワスカもたまには休めよ、俺の顔ばかり見ても飽きるだろ。彼女とかさあ」
「いない」
 ワスカは野菜を口に頬張り、コオから顔を背けた。するとスープを持ってきたステラが笑いながら二人に話しかけてきた。
「ダメダメ。こいつはそういうの興味ないんだから。村一番の美人がいいよってきてもウンともしないんだぜ」
「ステラ、そんなこと言わなくていいから」
「本当のことだろう? 」
 食べ終わった皿を引きながらステラは台所へと戻る。室内ではターバンを外しているワスカはこんな田舎の村人にしては顔が整っている。濃い茶色の瞳に銀の髪はどことなく色気を感じる。そりゃモテるだろうなあとぼんやり見ているとうっかり目が合う。
「なに」
「いやお前カッコいいのに、もったいないなって。俺がその顔ならさあ」
「コオは可愛らしい顔じゃないか」
 咄嗟にそんな言葉をかけられて、コオはポカンとする。ワスカは少し口元を緩め、手を伸ばしてコオの前髪に触れた。
「ふわふわの髪に、大きな目がまるで犬みたい」
「犬……」
 ワスカの精いっぱいの褒め言葉なのだろう。コオはありがとう、と苦笑いする。
「じゃあコオのお言葉に甘えて、一旦家に戻る」
 この宿からそんなに遠くないところにワスカの家があり、両親と兄弟の合わせて六人で暮らしているのだ。食事を済ませた後、ワスカはじゃあと部屋に戻りそのまま宿を出て行った。

 ワスカに手を振りその姿が見えなくなるのを確認してコオは部屋に戻り、自分から今日は休みだと言ったはずなのに、いつもの帽子を被り宿を出た。目指すはワスカに止められたあの禁足地だ。密林を数分歩きながら流れてくる汗を拭う。クスコスや他の薬草を探すわけではない。禁足地に踏み入れて、あのツルにまた触れて欲しいがために向かうのだ。
 ワスカはコオが禁足地にあったツルを切ったからではなく、踏み入れたから襲われたのだと言っていた。それならば行けばきっとまたツルは現れるはずだ。ただ自分の快楽だけのためにワスカに嘘までついて行く自分が情けなくてコオはため息をつく。

 しばらく歩くと大きな木の根元に生えているクスコスを見つけた。皮肉なもので、クスコスが禁足地の目印となっていた。コオは生唾を飲み込み、足を前に進めようとした時……
「コオ!」
 背後から名前を呼ばれて、心臓が飛び出してしまいそうなほどコオは驚き、振り向くとその先にはターバンをしていないワスカが立っていたのだ。サアッと血の気が下がるのを感じコオは拳を握る。
「……どうして」
「様子がおかしいからもしかしてと思ったんだ。ティカの毒性は強いから」
 ティカという名前を出されてコオは体を揺らす。きっとワスカは分かっている。何故コオが約束を破ってまで禁足地に来たのかを。ワスカがコオに近寄ろうとしたがコオは後退りする。
「近寄るな」
「コオ」
 なんでここにお前がくるんだ、と涙を滲ませながら呟いた。
「軽蔑しただろ? あんな……ことされて今度は自分から望んでるなんて。自分でも情け無いって分かっているんだ。でも体が疼いて」
「コオ、大丈夫。軽蔑なんてしていないから」
 そう言われても羞恥でコオはワスカの顔を見れず俯いたまま。するとワスカはコオの腕を引っ張り自分の方へ引き寄せ、その体を抱きしめた。コオは驚き目を見開きながらもワスカの腕の中で落ち着きを取り戻す。以前にもこの場でこうしてワスカの匂いを感じたなあと思いながら。抱きしめられた腕はゆっくりとコオの背中をさすっていた。まるで母親が子供をあやすように。
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