触手召喚士

柏木あきら

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10.触れたい

 翌日。その日の朝コオはワスカとどんな顔をして会えばいいんだと悩んだが、ワスカは何もなかったかのようにいつも通りだった。そして薬草の探索している間、あまりの暑さにコオの悩みは吹き飛んだ。暑くて何度も足を止めるコオにワスカは容赦なくまくし立てる。そんなんじゃヤハもユキも見つからないぞとワスカが呆れ顔をしながら休もうとするコオに水筒を差し出す。
 (相変わらず口は悪いんだから)
 それでもこうして水をくれるワスカの優しさにコオは口元を緩めた。

 それから数日間は何もなかったのだが相変わらずコオは夜になると体が疼く。ティカの毒性は強いからとワスカが言っていたのをコオは思い出しながらため息をついた。まさかワスカにもう一度召喚してくれと頼むわけにはいかない。
「全く……」
 ベッドから降りて、水を飲むためにあくびをしながら廊下に出るとワスカの部屋からは灯りが漏れていた。まだ起きているのかと思いながらその灯りをぼんやりと見つめる。
 (あのとき、なんで俺はワスカにキスしたんだろう)
 気持ちが昂っていたとはいえ、たまたまそこにいた人間にキスをしたくなるものだろうか。それともワスカだからキスをしたいと思ったのか。確かにワスカはムカつく時もあるけれど一緒にいると楽しい。それにあの逞しい腕と褐色の肌に強い眼差し……
「……っ」
 ベッドにいる時から多少疼いていた下半身がさらに熱を帯びてきた。コオは慌てて部屋に戻ろうとした時、ワスカの部屋のドアが開いた。
「コオ? どうした」
 背中から聞こえたワスカの声。なんだっていつもコイツはタイミング悪いんだと舌打ちする。返事をしないコオを不審に思いワスカはコオの体を無理矢理自分の方に向けた。
「あ……」
 コオは前屈みになり、膨れてしまったものを何とか見られまいとするが、ワスカはすぐ気がついてしまった。
「……部屋に行こうか?」
 それはティカを呼ぼうか、という意味だろう。コオは違う、と言いたかったのに何も言えずにいた。ただこのまま部屋でひとりではいたくない。気がつくとコオはうなづいていた。

 部屋の中でシュルシュルとティカが壁一面に伸びていく。それをベッドの上に座っているぼんやりとコオが見ている。そしてワスカは少し離れたところでコオを見ていた。
 器用なティカはまるで優しくエスコートするかのようにコオのパジャマを剥ぎ取る。露わになった白い肌にティカの触手が伸び、胸の突起に触れられてコオは思わず声を上げた。
「う……っ、あ……」
 甘い声が上がり始めてティカの触手も何本も増えていく。いつもの快楽にコオは身を震わしながら、ふとワスカの方を見る。彼に見られるのは初めてではないけれど今日は特に見られたくないと感じた。
 (いやだ、見ないでくれ)
 コオは声を上げながらも目を閉じていると、ティカの触手が触れてこないことに気づく。不思議に思い目を開けてみると、ワスカが目の前に立っていて先ほどまでコオの体を弄っていたであろうティカの触手を握りしめている。そのティカはもう細く枯れたように萎んでいたのだ。そして彼はコオをじっと見つめていたがやがて壁一面のティカをもぎとり、彼らもすべて萎み死んでしまった。
 突然のワスカの行動にコオは驚き、動くことができない。すると手にしていたティカを放り投げてワスカはベッドに上がり込み、コオのほおに指で触れた。その目はうっすら潤んでいる。彼の名前を呼ぼうとしたとき、硬い何かがコオの体に当たった。すぐさまそれが何か分かり、コオは息を呑んだ。
 (ワスカの、勃ってる)
 ティカとの行為を見て、そういう気持ちになってしまったのだろうか、とコオが戸惑っていると突然ワスカはコオを抱きしめた。そして小さな声で言う。
「コオが触れられているの、もう我慢出来ない」
 その泣きそうな声にコオは目を見開いた。それはどういう意味なのだろうか。触手召喚士としての申し訳ないという罪悪感からなのか……それとも、もっと単純な気持ちなのか。
「……ティカほど気持ちよくできないかもだけど、俺がコオに触れたい」
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