触手召喚士

柏木あきら

文字の大きさ
13 / 14

13.進む道

 お互いの想いをぶつけ合ったこの日から、二人は夜を共にするようになった。体を重ねることもあれば、手を繋ぎ、キスを交わすだけのゆっくりした時間を過ごすときもある。こんな夜が過ごせるのもあと少し。コオの滞在期間は着々と終わりに近づいていた。コオはワスカが湯に入っている間にベッドに寝転び、ぼんやりと天井を見上げていた。
 (この部屋も見納めかあ)
 三日後にコオは帰らなくてはいけない。そのことはワスカも知っているから、いまこうして一緒の部屋で過ごすようにしている。コオが帰ってしまったあと、彼は自分のことを忘れないだろうか、などと後ろ向きの考えが浮かんでは消える。
 それに、街へ戻り一級薬草師の資格を取ったところで、それをどこで活かすべきなのか、自分はどういう道に進みたいのか、全く見当がつかないのだ。ため息をつくとうつ伏せになりワスカを待った。
 翌日。コオは明日の滞在最終日まで密林に入って色々な薬草を探していた。滞在中、見つけたのは希少性の高いものから普段使われているものまで。ココリス村は薬草の宝庫だった。
「研究者がこの村に来る理由が分かるな」
 汗を拭きながら手にした薬草を見つめる。それは独特の香りを放つシイ。皮膚の再生に役立ち、主に切り傷や火傷に効果がある。
「俺には薬草の見分けがつかない」
 クスコスは知っていたワスカだが、さすがに二級薬草の知識には到底及ばない。だが、コオがいろんな薬草を見つけては、その名前と効力を一つずつ教えていた。
「ああ、腹減ったな。昼飯はなんだろう」
 一旦戻って昼食をとり午後からまた出かけるのがいつもの流れだ。宿に到着し、ドアを開けると目の前にはステラがいた。
「お、ちょうどよかった。ワスカ、コオ。悪いけど昼食は自分たちで温めてくれるか」
 少し慌てているステラの様子に、コオは何かあったのだろうかと首を傾げた。
「何かあったんですか」
「うちのやつがな、怪我をしたらしいんだ。湯を少しかぶって火傷している」
「えっ」
「ひどくないらしいんだが、薬草師に処方してもらわないといけないから隣村まで行ってくる」
「ここに一級薬草師はいないの? ストックとかは」
 とワスカはそう聞いたがステラは首を振った。
「実はこの村にはストックはない。村人は怪我や病気になると隣村まで行くしかないんだ」
 それを聞いていたコオは手にあるシィをギュッと握る。火傷に効く薬草は手の中にあり、配合の知識もある。なのに自分は何も動けず、ステラは隣村まで行かなければならないなんて。これがもし、急を要する怪我や病気だったら……? コオの青ざめた顔を見てステラはその額を指で押した。
「お前が気にすることはないからな、すぐ戻る」
 ステラはコオの気持ちを分かってくれたのだろう。少し口元を緩めると、帽子を被り宿を後にした。
感想 0

あなたにおすすめの小説

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

神官、触手育成の神託を受ける

彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。 (誤字脱字報告不要)

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

創作BL短編集

さるやま
BL
短編まとめました。 美形×平凡、ヤンデレ、執着・溺愛攻め多め

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。