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田舎編
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出向先での仕事は初めこそ大変だったものの、一ヶ月する頃には何とか慣れた。デスクワークばかりしていたとはいえ、販売促進部にいた明彦の商品知識は抜群だ。車のことを相談しに来る客に対して明確な回答ができるため、段々と信頼を得ていた。
生活面でも「東條くんはまるで息子のようでかわいい」と年配の人達に可愛がられている。明彦の苦手だった愛想笑いも、何とか克服できそうである。
毎日が充実、まではまだいかないものの初日に感じていた重たい気持ちはなくなりつつある。
それでもまだ、苦手なものはあり……。
「何だ、まだ出来ねえの」
タイヤ交換の作業をしていた明彦に話しかけていたのは大和だ。
初めて会った時からのあの態度は変わることなく、いつも明彦に喧嘩口調で絡んでくる。
「……すみません」
愛想笑いを浮かべつつもきっと目が笑っていないだろうと自分でも分かっている。
(だいたいこれお前の車じゃねえだろ……!何で作業終わるの待ってるんだ!)
タイヤ交換をしている軽トラは山野のもの。大和にやいのやいの言われる筋合いはないのにと口を尖らせると、大和はその理由を話した。
「山野さんから頼まれたんだよ、俺に乗ってきて欲しいって」
「え? マジで」
当初、山野はこちらに出向いてくれる話だったがどうやら都合が悪くなってしまったらしい。思わずタメ口になってしまい、明彦は慌てて口をふさぐ。
「あと5分で仕上げろよ」
大和は吐き出すようにそう言うと、タバコの箱を開けながら置灰皿のある方へ向かっていった。
「~~~っ」
地団駄を踏む明彦を、事務所から様子を見ていた新井が苦笑していた。
そんなこんなで明彦と大和の『仲の悪さ』は町内でも有名になっていった。若い男性がいない地区なので、まるで兄弟喧嘩のように二人のやり取りを周りは微笑ましく見ていた。
「だからお前なんでそんなに絡んでくんだよ!」
「お前の字が汚くて、河野のじっさんが困ってるから聞いてやってんだろ」
明彦はいつの間にか大和に対して敬語を使わなくなっていた。
「んー、いつ見ても痴話喧嘩しとるのお」
「痴話喧嘩っていうか、夫婦喧嘩じゃわ」
二人の様子を見ながら、その場にいた近所の人が笑う。
「違います!!」
「違う!!」
明彦と大和はハモりながら全否定した。
今日も一日、無事終了。
夕焼けで染まる事務所で頬杖をつきながら、明彦はため息をつく。
(ったく、何であいつはいつも絡んでくんだよッ)
もう四か月経つのに大和の態度は相変わらずだ。
事務員さんが淹れてくれた番茶を飲みながら、心を落ち着かせる。ここに来てすっかり勤務中の飲み物は、コーヒーからお茶になっていた。事務員さんが淹れてくれるコーヒーが甘ったるく、お茶にしてもらったという経緯があるのだ。
「明彦くん、おるかいね」
外から山野の声が聞こえて、明彦は返事をしてドアを開けた。
「どうされました?」
「今晩暇かいね? 神社の境内で秋祭りがあるんよ」
「秋祭りですか」
その神社は明彦の住んでいる場所からそう遠くなかった。とはいえ、友人も家族もいない明彦が行ったところで何を楽しめというのか。暫く考えてふと気がついた。
(もしかして)
山野は独りの明彦を気遣ってくれているのかもしれない。職場と家だけの往復ではなく、たまには『寄り道』をしろと。
「……一回家に帰って行ってみますね! ありがとうございます」
明彦がそう言うと、まるで親戚のおじさんのような暖かい笑顔を見せた。
生活面でも「東條くんはまるで息子のようでかわいい」と年配の人達に可愛がられている。明彦の苦手だった愛想笑いも、何とか克服できそうである。
毎日が充実、まではまだいかないものの初日に感じていた重たい気持ちはなくなりつつある。
それでもまだ、苦手なものはあり……。
「何だ、まだ出来ねえの」
タイヤ交換の作業をしていた明彦に話しかけていたのは大和だ。
初めて会った時からのあの態度は変わることなく、いつも明彦に喧嘩口調で絡んでくる。
「……すみません」
愛想笑いを浮かべつつもきっと目が笑っていないだろうと自分でも分かっている。
(だいたいこれお前の車じゃねえだろ……!何で作業終わるの待ってるんだ!)
タイヤ交換をしている軽トラは山野のもの。大和にやいのやいの言われる筋合いはないのにと口を尖らせると、大和はその理由を話した。
「山野さんから頼まれたんだよ、俺に乗ってきて欲しいって」
「え? マジで」
当初、山野はこちらに出向いてくれる話だったがどうやら都合が悪くなってしまったらしい。思わずタメ口になってしまい、明彦は慌てて口をふさぐ。
「あと5分で仕上げろよ」
大和は吐き出すようにそう言うと、タバコの箱を開けながら置灰皿のある方へ向かっていった。
「~~~っ」
地団駄を踏む明彦を、事務所から様子を見ていた新井が苦笑していた。
そんなこんなで明彦と大和の『仲の悪さ』は町内でも有名になっていった。若い男性がいない地区なので、まるで兄弟喧嘩のように二人のやり取りを周りは微笑ましく見ていた。
「だからお前なんでそんなに絡んでくんだよ!」
「お前の字が汚くて、河野のじっさんが困ってるから聞いてやってんだろ」
明彦はいつの間にか大和に対して敬語を使わなくなっていた。
「んー、いつ見ても痴話喧嘩しとるのお」
「痴話喧嘩っていうか、夫婦喧嘩じゃわ」
二人の様子を見ながら、その場にいた近所の人が笑う。
「違います!!」
「違う!!」
明彦と大和はハモりながら全否定した。
今日も一日、無事終了。
夕焼けで染まる事務所で頬杖をつきながら、明彦はため息をつく。
(ったく、何であいつはいつも絡んでくんだよッ)
もう四か月経つのに大和の態度は相変わらずだ。
事務員さんが淹れてくれた番茶を飲みながら、心を落ち着かせる。ここに来てすっかり勤務中の飲み物は、コーヒーからお茶になっていた。事務員さんが淹れてくれるコーヒーが甘ったるく、お茶にしてもらったという経緯があるのだ。
「明彦くん、おるかいね」
外から山野の声が聞こえて、明彦は返事をしてドアを開けた。
「どうされました?」
「今晩暇かいね? 神社の境内で秋祭りがあるんよ」
「秋祭りですか」
その神社は明彦の住んでいる場所からそう遠くなかった。とはいえ、友人も家族もいない明彦が行ったところで何を楽しめというのか。暫く考えてふと気がついた。
(もしかして)
山野は独りの明彦を気遣ってくれているのかもしれない。職場と家だけの往復ではなく、たまには『寄り道』をしろと。
「……一回家に帰って行ってみますね! ありがとうございます」
明彦がそう言うと、まるで親戚のおじさんのような暖かい笑顔を見せた。
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