星空、きらり。

柏木あきら

文字の大きさ
18 / 18
番外編

3

しおりを挟む
「だいたいお前があんな態度とるから」
「だって仕方ないだろ、大和がモテモテだったんだから」
大和の部屋に着いてもまだ、二人押し問答を続けていた。
「それ言うんならお前だって、いい雰囲気だしてたじゃないかよ」
「え?俺が?」
「今朝だよ。なんかノート見せながら、赤い顔して話してたぜ」
「あっ。篠原さんかあ」
「名前まで教えてもらったのか」
大和はふくれっつらを見せる。それを見て明彦は何だかおかしくなってきた。
「なあ、大和。もしかして、妬いてた?」
そう聞くと大和は急に顔を背ける。だが耳の先が赤くなっていることに気づいてないようだ。
「何だよ二人して妬いてたのか」
明彦がそう言いながら笑う。大和が妬いていたことが何だか嬉しくて。

「あの子たちほんとに神楽が好きみたいでさ。篠原さんが言ってた」
「分かってたよ。あいつらが練習見てた時の目、明彦と同じなんだ。真っ直ぐに見てた」
大和がそんなことに早々に気づいていたことに、やはり団長だなと明彦は改めて感じた。

大和が入れてくれたコーヒーを啜って、明彦はソファにもたれかかる。
「あー、何だか長い二日間だったなあ」
大和と話せないだけでこんなに辛いなんて。どれだけ大和にはまってるんだろうと思うと、恥ずかしくなってくる。
すると大和は明彦の横に座り、突然耳たぶを舐めてきた。
「ひゃっ!」
「誰のせいで長い二日間になったと思ってんだよ」
舐めてきた舌がそのまま首すじに移動する。大和の長い指が明彦の頬をさすると身震いした。
「お前、疲れてるんじゃ…」
「寂しかった分、甘えさせろ」
その言葉に、明彦はカアッと頬を赤らめた。

****

「おー!あのサークルのサイトに俺らが出てる」
田口が嬉しそうにそう声を上げたのはそれから一週間後。練習場にあるパソコンを立ち上げ、団員みんなで閲覧する。
神楽団訪問というコーナーで栗栖神楽団が紹介されていた。
神楽に対する想いや、和気あいあいとした団員たちの様子など文章と画像でしっかりと掲載されていて、それを照れ臭そうにみんなで見る。
「たぐっちゃん五割り増しカッコよく写されとるの!団長と変わらんわ」
「ほんまじゃ、贔屓されとる」

大笑いしながら見ていくうちに、一つの写真が目に入り、田口は微笑んだ。
「これ、ええな」
どれどれ、と皆が覗きこんだ写真。
『団員が作り上げる神楽奉納』と説明があり、写真には舞台の袖から神楽を舞う大和を、真剣な眼差しで見つめている明彦が映し出されていた。
「主に裏方を担当する東條さんが見つめる先は団長の大和さん。東條さんもまた欠かせない大切な団員なのだ、だってさ!」
明彦は冷やかされて真っ赤になる。いつの間にこんな写真を撮られていたんだろうと思いながらその写真を見る。
『あいつらが練習見てた時の目、明彦と同じなんだ。真っ直ぐに見てた』
大和が言っていた言葉を明彦は思い出す。
じっと大和をみる自分の目は、確かに彼女たちと、そして観客たちと同じ目をしていた。

「悪い、遅くなった」
仕事が長引いて練習時間に遅刻してきた大和が声をかけると、みんなが一斉に視線をパソコンから大和に向けてきたので、大和は驚く。
「な、何?」
「いやーやっぱり大和と明彦コンビはええのぉ」
田口がそう大声で言うと、周りのみんなが爆笑する。明彦はさらに真っ赤になっていて、大和はその様子に理解できずポカンとしている。
「もうこんな時間だし、練習はじめましょ!大和も来たことだし!」
明彦が慌てて声を上げると、はいはーいと皆が動き始める。
事情が全く掴めない大和は面白くない。憮然とした顔をしながら、明彦に耳打ちした。
「あとで教えろよ!」
分かった分かった、と言いながら明彦は笑う。

秋の夜に、今日も神楽の音が響く。

【了】
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

俺の婚約者は小さな王子さま?!

大和 柊霞
BL
「私の婚約者になってくれますか?」 そう言い放ったのはこの国の王子さま?! 同性婚の認められるパミュロン王国で次期国王候補の第1王子アルミスから婚約を求められたのは、公爵家三男のカイルア。公爵家でありながら、長男のように頭脳明晰でもなければ次男のように多才でもないカイルアは自由気ままに生きてかれこれ22年。 今の暮らしは性に合っているし、何不自由ない!人生は穏やかに過ごすべきだ!と思っていたのに、まさか10歳の王子に婚約を申し込まれてしまったのだ。 「年の差12歳なんてありえない!」 初めはそんな事を考えていたカイルアだったがアルミス王子と過ごすうちに少しづつ考えが変わっていき……。 頑張り屋のアルミス王子と、諦め系自由人のカイルアが織り成す救済BL

ステッドファスト ー恋に一途な僕らの再会ー

ブンダバー
BL
中学の頃から、橋本はずっと鏑木だけを想い続けてきた。 一方の鏑木も、橋本に特別な感情を抱いていながら、モデルとして生きる彼の未来を思い、その一歩を踏み出せずにいた。 時が経ち、広告代理店に勤める社会人となった鏑木と、人気モデルとして芸能界で活躍する橋本は、仕事をきっかけに偶然の再会を果たす。 ――あの頃、言えなかった気持ち。 ――守りたかった距離。 大人になった今だからこそ、再び動き出す両片想い。 恋も、仕事も、簡単じゃない。それでも不器用に前へ進もうとする 青年たちの、芸能界を舞台にした再会ラブストーリー。 果たして、二人が想いを伝え合える日は来るのか――。 そんな2人を見守る幼馴染サブカップルにも注目!

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!

カフェ・コン・レーチェ

こうらい ゆあ
BL
小さな喫茶店 音雫には、今日も静かなオルゴール調のの曲が流れている。 背が高すぎるせいか、いつも肩をすぼめている常連の彼が来てくれるのを、僕は密かに楽しみにしていた。 
苦いブラックが苦手なのに、毎日変わらずブラックを頼む彼が気になる。 今日はいつもより温度を下げてみようかな?香りだけ甘いものは苦手かな?どうすれば、喜んでくれる? 「君の淹れる珈琲が一番美味しい」
苦手なくせに、いつも僕が淹れた珈琲を褒めてくれる彼。 照れ臭そうに顔を赤ながらも褒めてくれる彼ともっと仲良くなりたい。 そんな、ささやかな想いを込めて、今日も丁寧に豆を挽く。 甘く、切なく、でも愛しくてたまらない―― 珈琲の香りに包まれた、静かで優しい記憶の物語。

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

Nova | 大人気アイドル×男前マネージャー

むぎしま
BL
大人気アイドル・櫻井来夢が恋をしたのは、 ライバル事務所のマネージャー・本郷ルカだった。 強く、知的で、頼れる大人の男。 その背中に憧れ、来夢は彼を追いかける。 ──仕事のできる色男・本郷ルカは、女にモテた。 「かっこいい」「頼りたい」「守ってほしい」 そんな言葉には、もう慣れていた。 けれど本当の心は、 守られたい。愛されたい。 そして、可愛いと思われたい。 その本心に気づいてしまった来夢は、 本郷を口説き、甘やかし、溺愛する。 これは、 愛されることを知った男と、 そのすべてを抱きしめたアイドルの、 とても幸せな恋の話。 独占欲強めな年下アイドル (櫻井 来夢)   × 愛に飢えた有能マネージャー (本郷 ルカ) ーー 完結しました! 続編もよろしくお願いいたします〜〜!! (櫻井×本郷要素もあります!!) 番外編も第二章も書きたい!!

青龍将軍の新婚生活

蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。 武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。 そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。 「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」 幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。 中華風政略結婚ラブコメ。 ※他のサイトにも投稿しています。

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

処理中です...