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ダンスバー【レイヴン】
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扉はところどころが錆びていて、ノブの彫刻も金箔が剥がれている。そして店名と思われる単語、【レイヴン】と扉の中央に彫られていた。カークはそのノブを手に取り扉を開く。厚くて重い扉を開いた先に見えたのは、もうもうとたちこめる煙草の煙と青紫の店内照明。煙の中に客と思われる人々のシルエットが浮かぶ。
そっと足を進めると革靴の底がニチャニチャと音を立てる。なにかの脂なのだろうか、滑りやすくて不快な床に立ち、辺りを見渡す。
店内は思ったより広い。カウンター席が七つにテーブル席は五つ。そして前方には一段高くなった丸い舞台のようなものがある。カークは自身を隠すようにフェイスベールを目元まで上げ、奥のカウンターにすすむと端の席に座り腰を落ち着かせた。すると狐目のバーテンダーが声をかけてくる。
「あまり見かけない顔だな、何にするかい」
「おすすめで」
オーダーをしてしばらくの間店内をぼんやりと眺めていると照明が突然消え、店内前方にある小さな舞台だけが桃色の照明に浮かび上がる。客たちは声をあげるがカークはその様子を冷ややかに見ていた。きっとこの舞台ではダンスショーが行われるのだろう。しかもここは欲望の街【ダスク】なのだから上品なダンスではないことは確かだ。
大音量の音楽が流れ、舞台袖から出てきたのは、先ほど外であった男みたいな、短い丈のパンツを履いた男――少年にも見える――だ。彼は客に愛嬌を振りまいている。
客のテンションとは裏腹にカークは視線をカウンターに戻すとバーテンダーがオーダーした酒をテーブルに置いた。
「お客さん、今更と思うけどウチは男しかいねぇが大丈夫かい」
「ああ、別に」
そっけない返事に狐目が糸のように細くなり口元を緩めた。
「そうかい。なら楽しみな。ウチの子たちは【ダスク】でも一番の踊り子たちだからよ」
そう言われて仕方なく視線を舞台に戻す。音楽に合わせケープを使い少し官能的に腰をくねらせると、周りの客は興奮したようにダンサーの名前を呼んでいる。カークは特に何の感情もなく眺めていると、ふらふらと年配の男が声をかけてきた。歩き方からしてかなり泥酔しているようだ。
「なあなあ、お前さん。もしかして『奇跡のアルファ』じゃないかい」
それを聞いてカークはその男を殴りたくなる衝動に駆られた。一番聞きたくない言葉だからだ。
「……」
「やっぱりそうか。横顔がベールから見えてもしかしてと思っての。お前さんが作ってくれた薬、【リナッシタ】でワシも嫁もあの病気がすぐ良くなって」
男はカークが答えないのは肯定だ、と捉えたのか隣に座りそのままベラベラと喋り続ける。一方でカークは酒の入ったグラスを握りしめたまま微動だにしない。【リナッシタ】もまた耳を塞ぎたくなる言葉なのだ。カークの苛立ちをよそに、男は馴れ馴れしくも肩を叩いてくる。いい加減にしろと拳を握ったとき……
そっと足を進めると革靴の底がニチャニチャと音を立てる。なにかの脂なのだろうか、滑りやすくて不快な床に立ち、辺りを見渡す。
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客のテンションとは裏腹にカークは視線をカウンターに戻すとバーテンダーがオーダーした酒をテーブルに置いた。
「お客さん、今更と思うけどウチは男しかいねぇが大丈夫かい」
「ああ、別に」
そっけない返事に狐目が糸のように細くなり口元を緩めた。
「そうかい。なら楽しみな。ウチの子たちは【ダスク】でも一番の踊り子たちだからよ」
そう言われて仕方なく視線を舞台に戻す。音楽に合わせケープを使い少し官能的に腰をくねらせると、周りの客は興奮したようにダンサーの名前を呼んでいる。カークは特に何の感情もなく眺めていると、ふらふらと年配の男が声をかけてきた。歩き方からしてかなり泥酔しているようだ。
「なあなあ、お前さん。もしかして『奇跡のアルファ』じゃないかい」
それを聞いてカークはその男を殴りたくなる衝動に駆られた。一番聞きたくない言葉だからだ。
「……」
「やっぱりそうか。横顔がベールから見えてもしかしてと思っての。お前さんが作ってくれた薬、【リナッシタ】でワシも嫁もあの病気がすぐ良くなって」
男はカークが答えないのは肯定だ、と捉えたのか隣に座りそのままベラベラと喋り続ける。一方でカークは酒の入ったグラスを握りしめたまま微動だにしない。【リナッシタ】もまた耳を塞ぎたくなる言葉なのだ。カークの苛立ちをよそに、男は馴れ馴れしくも肩を叩いてくる。いい加減にしろと拳を握ったとき……
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