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氷が溶けていくように
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「シチャ……?」
「話してくれてありがとう。カークは頑張っていたんだね」
ドクン、と鼓動が跳ね上がる。薬害の件があったあとはもちろんそんな言葉をかけられたことは一度もなかった。きっと彼も軽蔑するだろうと思っていたのに。お客だから、といえどここまでしてくれるだろうか。
「僕は分かるよ。人々を救うための薬が、そんなことになって悔しかっただろうな。でもカークの薬はきっと誰かを救っていたと思う。……それにカークは本当はもう一度あの薬と向き合いたいんだろう?」
饒舌な彼の言葉にカークは呆気に取られていた。なぜなら、自分の心の奥に閉まっていたそれを鏡に映し出されたかのようにシチャが指摘したからだ。――どうして、シチャはこんなにも俺の心を揺さぶるのか。鼻がツンとして目の奥が熱くなってくる。じわじわと胸にある温かい感情が湧き出してきて、カークの涙がグラスの氷に落ち、溶けていく。シチャはその涙に気づいていたが無言で彼を腕に包んだままだ。気がつけばカークもまた、それに甘えてシチャの体に手を回していた。
店内は相変わらず賑やかなのに、ここだけが時間が止まったかのように――静寂が二人を包んでいた。
その夜から、寝床に戻ってもシチャの笑顔が胸の奥に焼きついて離れなくなった。
彼を思い出すたび、胸の奥が疼く。守りたいと思っていたはずなのに、いつしかそれだけでは足りない。――もっと彼を内面から知りたい。自分の感情を持て余し、カークは眠りにつけない日が続いた。
夏が去り、すっかり秋の気配となった頃。路地裏がやけに明るいなと感じていると、大きな月が夜空に浮かんでいた。石畳の道が幻想的に輝いてあたりの喧騒がどこかにいったかのように静寂を感じつつカークは店を目指して歩く。
今夜もまた、シチャは給仕の日だ。カウンターでナルに飲み物を作ってもらっている間にシチャと他愛のない話をする。
「そう言えばダンサーたちはオーナーがみんなつれてきたのか?」
「まさか。たいていの子は自分からこの店に来たんだよ。ルモンド自ら連れてきたのは僕を入れて三人くらいさ。あのミウケされた子とあとは――」
「シチャ、できたぞ」
話を断ち切るようにナルが酒とつまみをカウンターに置いた。ありがとう、とそれを受け取りカークに渡す。何故だかさっきの話はそこで終わりシチャは他の話に切り替えた。新しい曲の振り付けを考えているがなかなか難しいといった話を聞いているうちに、カークはふと先日聞きそびれたシチャの『夢』を聞きたいと思い問う。
シチャは少し照れくさいようで頭を振る。カークの言葉に彼は頭を掻いた。シチャをもっと知りたい一心でカークが彼の顔を覗き込むと、観念したように彼は口を開いた。
「笑わない?」
「誓うよ」
「話してくれてありがとう。カークは頑張っていたんだね」
ドクン、と鼓動が跳ね上がる。薬害の件があったあとはもちろんそんな言葉をかけられたことは一度もなかった。きっと彼も軽蔑するだろうと思っていたのに。お客だから、といえどここまでしてくれるだろうか。
「僕は分かるよ。人々を救うための薬が、そんなことになって悔しかっただろうな。でもカークの薬はきっと誰かを救っていたと思う。……それにカークは本当はもう一度あの薬と向き合いたいんだろう?」
饒舌な彼の言葉にカークは呆気に取られていた。なぜなら、自分の心の奥に閉まっていたそれを鏡に映し出されたかのようにシチャが指摘したからだ。――どうして、シチャはこんなにも俺の心を揺さぶるのか。鼻がツンとして目の奥が熱くなってくる。じわじわと胸にある温かい感情が湧き出してきて、カークの涙がグラスの氷に落ち、溶けていく。シチャはその涙に気づいていたが無言で彼を腕に包んだままだ。気がつけばカークもまた、それに甘えてシチャの体に手を回していた。
店内は相変わらず賑やかなのに、ここだけが時間が止まったかのように――静寂が二人を包んでいた。
その夜から、寝床に戻ってもシチャの笑顔が胸の奥に焼きついて離れなくなった。
彼を思い出すたび、胸の奥が疼く。守りたいと思っていたはずなのに、いつしかそれだけでは足りない。――もっと彼を内面から知りたい。自分の感情を持て余し、カークは眠りにつけない日が続いた。
夏が去り、すっかり秋の気配となった頃。路地裏がやけに明るいなと感じていると、大きな月が夜空に浮かんでいた。石畳の道が幻想的に輝いてあたりの喧騒がどこかにいったかのように静寂を感じつつカークは店を目指して歩く。
今夜もまた、シチャは給仕の日だ。カウンターでナルに飲み物を作ってもらっている間にシチャと他愛のない話をする。
「そう言えばダンサーたちはオーナーがみんなつれてきたのか?」
「まさか。たいていの子は自分からこの店に来たんだよ。ルモンド自ら連れてきたのは僕を入れて三人くらいさ。あのミウケされた子とあとは――」
「シチャ、できたぞ」
話を断ち切るようにナルが酒とつまみをカウンターに置いた。ありがとう、とそれを受け取りカークに渡す。何故だかさっきの話はそこで終わりシチャは他の話に切り替えた。新しい曲の振り付けを考えているがなかなか難しいといった話を聞いているうちに、カークはふと先日聞きそびれたシチャの『夢』を聞きたいと思い問う。
シチャは少し照れくさいようで頭を振る。カークの言葉に彼は頭を掻いた。シチャをもっと知りたい一心でカークが彼の顔を覗き込むと、観念したように彼は口を開いた。
「笑わない?」
「誓うよ」
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