【完結】落ちぶれ後天性アルファと踊り子オメガの小夜曲

柏木あきら

文字の大きさ
18 / 39

妊娠しないオメガの使い道

しおりを挟む
 舞台の上のシチャはうずくまったまま――肩で息をしている。そして照らされた体が真っ赤だ。シチャの周りにはベータの客たちが集まっている。彼の放つヒートの香りに当てられているのだろう。
 やがて彼が顔を上げるとヒートのオメガ特有の『欲情している』潤んだ瞳。その瞳がカークの方を向いている。その瞬間、シチャを助けなければと理性が叫ぶのに、体の奥底では彼を押し倒せと本能が吠えていた。猛烈に襲いたい衝動に駆られる自分にカークは手元にあったマドラーを自らの掌に突き刺しその衝動をなんとか止めるとカウンター内にいるナルに怒鳴った。
「なぜ、ヒート中のシチャがでているんだ! 厳重に管理しているんじゃないのか」
 早く止めなければ、と額に青筋を立て巻き立てるカークにナルは冷ややかに答えた。
「店の方針なんだよ。――シチャはヒート中でも出すってね」
「どうして! 襲われてしまうだろう」
「襲わせるんだよ。ほら、アルファの本能がうずくだろう? お前も楽しめばいい」
 背後から声がして、カークが振り返るとそこにいたのはオーナーのルモンドだ。アルファである彼だが、シチャのヒートの香りは影響がないらしく涼しそうな顔で――微笑んだ。楽しそうに。
「……何言って――」
 目を見開くカークのフェイスベールを長い人差し指で弄びながら答えた。
「シチャは後天性オメガだ。いいかい、後天性オメガは妊娠しない。他のオメガは妊娠されるとやっかいだから出さないんだ。それに――ヒート中のオメガとヤレるって評判だしな」
 ぐったりとしたシチャを店のスタッフが抱えて舞台から降ろし、布で仕切った部屋へと移動させ――数人の客が一緒に消えた。カークの心臓は爆発寸前だ。
「何をさせる! あの客たちに!」
 烈火のごとく怒り狂ったカークは彼らを止めるべく、駆け出したがルモンドがその体を掴み押し倒した。床に叩きつけられてカークは唸りを上げる。
「お前がシチャのなんだと言うんだ? ただの客にうちの踊り子しょうひんに対してとやかく言われる筋合いはない」
 倒れ込んだカークの背中をルモンドは汚いものを排除するかのように革靴で蹴り上げた。
「後天性アルファに何が出来る? 番もできない出来損できぞこないめ」
 周囲の客が、ルモンドの言葉に同調するようにゲラゲラと笑う。その声が、カークの背を焼くように突き刺さる。
 通常のアルファであれば、運命の番を見つけうなじを噛めば番うことができる。だが後天性アルファはそれができない。後天性オメガが妊娠できないように彼らもまた欠如している。オメガのヒートの香りも普通ならもっと早い段階で気づける。しかしカークのようにピークにならないと分からない。それもまた後天性アルファだからだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

αに軟禁されました

雪兎
BL
支配的なαに閉じ込められたΩ。だがそれは、愛のはじまりだった――。

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

黒とオメガの騎士の子育て〜この子確かに俺とお前にそっくりだけど、産んだ覚えないんですけど!?〜

せるせ
BL
王都の騎士団に所属するオメガのセルジュは、ある日なぜか北の若き辺境伯クロードの城で目が覚めた。 しかも隣で泣いているのは、クロードと同じ目を持つ自分にそっくりな赤ん坊で……? 「お前が産んだ、俺の子供だ」 いや、そんなこと言われても、産んだ記憶もあんなことやこんなことをした記憶も無いんですけど!? クロードとは元々険悪な仲だったはずなのに、一体どうしてこんなことに? 一途な黒髪アルファの年下辺境伯×金髪オメガの年上騎士 ※一応オメガバース設定をお借りしています

処理中です...