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声
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やがて奥の部屋からシチャの悲鳴とも――嬌声ともつかない声が聞こえてきた。扉で仕切られていないのはおそらくそれをわざと聞かせるためだろう。部屋に移動していない客たちはニヤニヤと笑っていたり、中には覗きながら己の股間をしごいている者までいた。
「どうして、お前はあの子を引き取ったのだろう? なぜこんな酷いことを――」
「後天性オメガだから引き取ったんだ。しかも彼はアルファからオメガになった。聞いたことがあるか?」
ルモンドの言葉にカークは息を呑んだ。ベータからオメガ、アルファになるのは聞いたことがあるが、アルファからオメガなど聞いたことがない。
この国では――いや世界でもいるかいないか。やがて自分がベータからアルファになった時の戸惑いを思い出した。
周りの人間の目の色が変わり称賛を受け――変わり身の速さに少年だったカークは人間の得体の知れない怖さを感じていた。ましてやそれがアルファからオメガへ、なんて。彼の戸惑いや恐怖は想像を絶する。
「……まあいいだろう。お望み通りシチャに合わしてやるよ。哀れで可哀想な姿を目に焼き付けるがいい」
乱暴にカークの服を掴み上げ、ルモンドはシチャの入る部屋へと彼の体を引きずりながら進んだ。
***
ヒートが近い気がする、とシチャは体をさする。あの夜から、カークを避けるようになってどれくらい経っただろう。いつもの席に彼がいて自分のダンスを観ていることは分かっていた。以前ならば見守るかのような彼の視線が嬉しくて目線を交わしていた。だが今はそれをやめた。
自分が関わることで、ルモンドが彼に何をするかわからない。彼に何かが起こることを考えるだけで、気が狂いそうで眠ることもできない。眠ってしまえば悪夢を見る。――それであれば自分から離れていけばいいんだ、と悲しい決断をした。月夜のあの日、唇を重ねたことを――想いを重ねられたことを大切に自分の奥底にしまっておけばいい。そのうちカークだって離れていくだろう。そもそもこんな場末の街に来るべき人種ではないのだ。たまたま気があって――少し触れただけなんだ。
重い体を引きずるようにして、シチャはフロアに出た。この日は給仕で、相手はカークが来る前によく来ていたベータの男。 シチャに酒を注がせながら下世話な話ばかりしてくるので正直気が滅入っていた。彼の話を右から左に聞き流しながらふとシチャはカークとの時間を思い出した。
カークは寡黙でどちらかというと自分のほうが多くを語っていた。穏やかに酒を飲み、シチャに酒を注がせるのは初めだけ。あとは手酌だった。
客というよりも友人のような関係が恋愛感情を持ち始めたのはいつの頃だろうか。
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「後天性オメガだから引き取ったんだ。しかも彼はアルファからオメガになった。聞いたことがあるか?」
ルモンドの言葉にカークは息を呑んだ。ベータからオメガ、アルファになるのは聞いたことがあるが、アルファからオメガなど聞いたことがない。
この国では――いや世界でもいるかいないか。やがて自分がベータからアルファになった時の戸惑いを思い出した。
周りの人間の目の色が変わり称賛を受け――変わり身の速さに少年だったカークは人間の得体の知れない怖さを感じていた。ましてやそれがアルファからオメガへ、なんて。彼の戸惑いや恐怖は想像を絶する。
「……まあいいだろう。お望み通りシチャに合わしてやるよ。哀れで可哀想な姿を目に焼き付けるがいい」
乱暴にカークの服を掴み上げ、ルモンドはシチャの入る部屋へと彼の体を引きずりながら進んだ。
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ヒートが近い気がする、とシチャは体をさする。あの夜から、カークを避けるようになってどれくらい経っただろう。いつもの席に彼がいて自分のダンスを観ていることは分かっていた。以前ならば見守るかのような彼の視線が嬉しくて目線を交わしていた。だが今はそれをやめた。
自分が関わることで、ルモンドが彼に何をするかわからない。彼に何かが起こることを考えるだけで、気が狂いそうで眠ることもできない。眠ってしまえば悪夢を見る。――それであれば自分から離れていけばいいんだ、と悲しい決断をした。月夜のあの日、唇を重ねたことを――想いを重ねられたことを大切に自分の奥底にしまっておけばいい。そのうちカークだって離れていくだろう。そもそもこんな場末の街に来るべき人種ではないのだ。たまたま気があって――少し触れただけなんだ。
重い体を引きずるようにして、シチャはフロアに出た。この日は給仕で、相手はカークが来る前によく来ていたベータの男。 シチャに酒を注がせながら下世話な話ばかりしてくるので正直気が滅入っていた。彼の話を右から左に聞き流しながらふとシチャはカークとの時間を思い出した。
カークは寡黙でどちらかというと自分のほうが多くを語っていた。穏やかに酒を飲み、シチャに酒を注がせるのは初めだけ。あとは手酌だった。
客というよりも友人のような関係が恋愛感情を持ち始めたのはいつの頃だろうか。
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