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バットトリップ
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聞きたくもない声が耳に入ってくる。だがルモンドは部屋の前の布をめくり引きずってきたカークの体を押し込め、背中を蹴り上げた。うぁ、と声をあげて思わず目を開く。そして彼の瞳に映ったのは――
華奢な背中に残る赤い傷跡。臀部の辺りから垂れている粘液のような雫。四つん這いになった彼が、目の前の男に奉仕している姿だった。さらに別の男が後ろから覆いかぶさろうとしている。
「やめろッ!」
勢いよく立ち上がり、その男に掴み掛かろうとしたが部屋にいた黒服に殴られ倒れたカークの頭皮を後ろからルモンドに掴まれた。
「なに邪魔しようとしてるの? よく見てみなよ、あの子は物欲しそうにしてるだろう?」
あられもない姿のシチャは力無く振り向くと恍惚とした表情を見せて――すぐ目を見開いた。カークが目の前にいることにいま気がついたのだ。
「逃げろ!」
思わず叫ばずにいられなかったカークに彼は眉をひそめ後ずさりしながら、敵意を剥き出しにしたようにカークを睨みつけてきた。
「見るな」
低く絞り出すような声。その声色は怒りより羞恥と絶望が滲んでいた。カークが手を伸ばそうとすると突然、シチャが声を荒げた。
「分かる? この体の疼きが止まらない屈辱が! こうでもしなきゃ僕は生きていけないんだ!」
それを聞き、カークは息を飲んだ。後天性アルファと同じように、後天性オメガもまた番を作ることができない。通常のオメガであれば番を作ることでヒートは落ち着くのだが、彼はそれが出来ない。半年に一度のヒートはずっと続くのだ。
「シチャ……」
「途中からアルファになった奴にはわからないだろう? こんな惨めな思いしながら暮らすことなんて! なんで僕がオメガなんかにならなきゃいけなかったんだ!」
興奮のあまり、シチャは頭をかきむしり、床を叩きつけ始め体はぶるぶると震え始めた。その異様な光景に、シチャのそばにいた男達は後ずさりして逃げていく。
「あーあ。バッドトリップ入っちゃったかな」
叩きつける拳は血が染み始め、呼吸音がひゅーひゅー、と聞いたこともない音を出す。涙でぐしゃぐしゃになったシチャの顔をルモンドは乱暴に掴んだ。
「もういいだろう、シチャ。おいで」
「ああ、あああ…………!」
言葉にならない雄叫びが部屋に響く。弛緩した彼の裸体をルモンドは持ち上げると、呆然としているカークを一瞥した。
「もう帰りな、落ちぶれアルファ」
踵を返し、ルモンドはそのまま別の部屋へと消えていく。その間もシチャの嗚咽が止まらない。ルモンドの歩みを、カークは止めることなどできなかった。やがて酸っぱいものが食道を逆流してきて、その場で吐いた。
聞きたくもない声が耳に入ってくる。だがルモンドは部屋の前の布をめくり引きずってきたカークの体を押し込め、背中を蹴り上げた。うぁ、と声をあげて思わず目を開く。そして彼の瞳に映ったのは――
華奢な背中に残る赤い傷跡。臀部の辺りから垂れている粘液のような雫。四つん這いになった彼が、目の前の男に奉仕している姿だった。さらに別の男が後ろから覆いかぶさろうとしている。
「やめろッ!」
勢いよく立ち上がり、その男に掴み掛かろうとしたが部屋にいた黒服に殴られ倒れたカークの頭皮を後ろからルモンドに掴まれた。
「なに邪魔しようとしてるの? よく見てみなよ、あの子は物欲しそうにしてるだろう?」
あられもない姿のシチャは力無く振り向くと恍惚とした表情を見せて――すぐ目を見開いた。カークが目の前にいることにいま気がついたのだ。
「逃げろ!」
思わず叫ばずにいられなかったカークに彼は眉をひそめ後ずさりしながら、敵意を剥き出しにしたようにカークを睨みつけてきた。
「見るな」
低く絞り出すような声。その声色は怒りより羞恥と絶望が滲んでいた。カークが手を伸ばそうとすると突然、シチャが声を荒げた。
「分かる? この体の疼きが止まらない屈辱が! こうでもしなきゃ僕は生きていけないんだ!」
それを聞き、カークは息を飲んだ。後天性アルファと同じように、後天性オメガもまた番を作ることができない。通常のオメガであれば番を作ることでヒートは落ち着くのだが、彼はそれが出来ない。半年に一度のヒートはずっと続くのだ。
「シチャ……」
「途中からアルファになった奴にはわからないだろう? こんな惨めな思いしながら暮らすことなんて! なんで僕がオメガなんかにならなきゃいけなかったんだ!」
興奮のあまり、シチャは頭をかきむしり、床を叩きつけ始め体はぶるぶると震え始めた。その異様な光景に、シチャのそばにいた男達は後ずさりして逃げていく。
「あーあ。バッドトリップ入っちゃったかな」
叩きつける拳は血が染み始め、呼吸音がひゅーひゅー、と聞いたこともない音を出す。涙でぐしゃぐしゃになったシチャの顔をルモンドは乱暴に掴んだ。
「もういいだろう、シチャ。おいで」
「ああ、あああ…………!」
言葉にならない雄叫びが部屋に響く。弛緩した彼の裸体をルモンドは持ち上げると、呆然としているカークを一瞥した。
「もう帰りな、落ちぶれアルファ」
踵を返し、ルモンドはそのまま別の部屋へと消えていく。その間もシチャの嗚咽が止まらない。ルモンドの歩みを、カークは止めることなどできなかった。やがて酸っぱいものが食道を逆流してきて、その場で吐いた。
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