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カークの決意
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それからしばらくした雨の明け方。客が帰った頃に【レイヴン】からナルはあくびをしながら扉を開いた。店の入り口にある看板を畳んでいると、前方に人影が落ちる。その姿を見て、彼は呆れたような声を出した。
「出禁だと言っただろう。こんなとこルモンドに見られたら海に沈められんぞ」
脅しの言葉にカークは動じない。いつもつけていたフェイスベールはなく端正な顔を晒け出していた。
「お前に用事がある」
「俺? 勘弁してくれよ、面倒はごめんだ」
「すぐ済む。……ミウケについて教えてくれ」
狐目の上にある眉がピクリ、と動く。そしてカークをまっすぐに見据えた。
「お前まさかシチャを?」
彼はうなずき、ナルを逃すまいと見据える。ダンサーを金で買うミウケというシステムを知っていたことに驚いたがシチャが喋ったのか、と舌打ちをする。そのシチャへの強い熱意と執着に彼は小さなため息をつきしばらくして口を開く。
「ミウケは一年に一度だ。値段交渉は店長とサシで行われ、値段を決めるんだ。まあ大抵の奴は暴利な額にここで逃げ出すんだがな」
「……暴利な額?」
「ダンサーによってピンキリだが最低でも四千万。シチャは『特別』だからな」
ナルは胸ポケットからメモを取り出し、書いたものを無造作に手渡す。そこに並ぶ桁を見つめ、カークは息を止めた。研究塔の報酬など比にならない。
「こんな額……」
「妊娠しないオメガなんだ。希少価値もあるし、何よりルモンドのお気に入りだからな」
だがカークの瞳は静かに燃えていた。
「――ありがとう」
その言葉にナルは返事をすることなく、畳んだ看板を持ち、何も語らずに片手をひらひらと振り店内へと消えた。
それを見届け、カークも何かを決意した様に――メモをポケットに入れて扉に背を向けて足早に歩き出した。
***
それから一週間後。フェイスベールを外し、髪を整えたカークの姿はラスタ国の首都の街にあった。薬害の件から十年近く経っているせいなのか、街中の人はカークに気が付かない。
風を切り颯爽と歩く彼が足を止めたのは城の近くの公園だ。ひときわ大きな木の下にあるベンチにカークは腰を下ろした。彼の視線の向こうには手入れが行き届いた樹木が爽やかな風に吹かれて揺れる。
しばらくすると一人の男がやってきて、カークの隣に座った。銀髪の彼は昔よりも少し筋肉がついている。
「久しぶりだね。カーク」
その声を聞いた途端、十年前のあの頃にタイムスリップしたような感覚を覚える。
「出禁だと言っただろう。こんなとこルモンドに見られたら海に沈められんぞ」
脅しの言葉にカークは動じない。いつもつけていたフェイスベールはなく端正な顔を晒け出していた。
「お前に用事がある」
「俺? 勘弁してくれよ、面倒はごめんだ」
「すぐ済む。……ミウケについて教えてくれ」
狐目の上にある眉がピクリ、と動く。そしてカークをまっすぐに見据えた。
「お前まさかシチャを?」
彼はうなずき、ナルを逃すまいと見据える。ダンサーを金で買うミウケというシステムを知っていたことに驚いたがシチャが喋ったのか、と舌打ちをする。そのシチャへの強い熱意と執着に彼は小さなため息をつきしばらくして口を開く。
「ミウケは一年に一度だ。値段交渉は店長とサシで行われ、値段を決めるんだ。まあ大抵の奴は暴利な額にここで逃げ出すんだがな」
「……暴利な額?」
「ダンサーによってピンキリだが最低でも四千万。シチャは『特別』だからな」
ナルは胸ポケットからメモを取り出し、書いたものを無造作に手渡す。そこに並ぶ桁を見つめ、カークは息を止めた。研究塔の報酬など比にならない。
「こんな額……」
「妊娠しないオメガなんだ。希少価値もあるし、何よりルモンドのお気に入りだからな」
だがカークの瞳は静かに燃えていた。
「――ありがとう」
その言葉にナルは返事をすることなく、畳んだ看板を持ち、何も語らずに片手をひらひらと振り店内へと消えた。
それを見届け、カークも何かを決意した様に――メモをポケットに入れて扉に背を向けて足早に歩き出した。
***
それから一週間後。フェイスベールを外し、髪を整えたカークの姿はラスタ国の首都の街にあった。薬害の件から十年近く経っているせいなのか、街中の人はカークに気が付かない。
風を切り颯爽と歩く彼が足を止めたのは城の近くの公園だ。ひときわ大きな木の下にあるベンチにカークは腰を下ろした。彼の視線の向こうには手入れが行き届いた樹木が爽やかな風に吹かれて揺れる。
しばらくすると一人の男がやってきて、カークの隣に座った。銀髪の彼は昔よりも少し筋肉がついている。
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