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ミズキ
しおりを挟む「……少し痩せたんじゃない?」
男――ミズキはあの頃と変わらない優しい微笑みを見せた。
彼だけは、薬害の事件の後もカークの元を去らなかった。どころか研究塔から追い出された時にずっと『カークは何もしていない』と訴え続けてくれていたのだ。
そんな彼を置いて出て行った手前、カークはミズキに連絡することを躊躇していた。話しかけてきたミズキにカークは深々と頭を下げる。
「何度も手紙をもらっておきながら、無視してすまない」
「難しいだろうなって思いながら送っていたから気にしないでよ。でもそろそろ諦めようかなって思ってたんだ。……魔法士たちが居場所を見つけ出すのが容易じゃなくなっていたから」
やはりカークの所在を突き止めていたのは魔法士だったようだ。
魔法士たちは個人の居場所を掴もうとすることにいい顔をしなかったのだろう。間に合ってよかったとカークは胸を撫で下ろす。
「それで、カーク。連絡してくれたってことは、研究塔に戻ってきてくれる意志があると思っていいんだよね?」
先ほどの微笑みはなくなり、真剣な眼差しをぶつけてくる。信じたものを疑わない。昔からミズキは信念を曲げないタイプで、十年経過した今でもそれは変わっていないようだ。
「ああ。――国王が、赦してくださるなら」
「赦すも何も、あの事件はお前のせいじゃない」
「……それでも開発者は俺だ。責任はある。それなのに、逃げてしまっていた」
カークは短く息を吐いた。ざあっと強風が吹いて木葉が舞い、彼の青い瞳は決意を新たに輝く。
「だから、ミズキ。【リナッシタ】の事故原因追求と、それに対抗する新薬を開発させてほしい。【リナッシタ】が残した副作用――そして【シロナ】を抑え込む安全な新薬を」
それを聞いてミズキは固唾を呑んだ。【リナッシタ】の事故原因は研究塔でも当然長い間行われた。しかし結局のところ追究できなかったのだ。それを開発した本人が掘り返すとは。しかも昨今【シロナ】は変異型のウイルスが発生し現状の薬では不十分だ。
――新薬ができたなら。それは研究塔の誰もが願い、国王も、国民も願っていることだ。あれだけ国民たちに愚弄されたと言うのにまた茨の道を進もうと言うのか。
「……カーク、ひとつだけいい? どうして拒んでいた復帰を今になって望んでいるんだ?」
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