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思い出の木の下で
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「……聞いたらきみは怒るかもしれないな」
カークが不意に口元を緩める。あの事件以降、見ることのなかったカークの笑顔にミズキは面食らう。
「国民を助けたいとかそんな志じゃない。金が必要なんだ」
絶望の夜に宿で見かけたミズキの手紙。その時カークはふと気がついたのだ。研究塔にいた頃の報酬額を。今の自分ではシチャをミウケさせる金には到底足らない。だがもし研究棟に秘密裏に復帰し、報酬をもらえるようになったら。いやただ復帰するぐらいでは足らない。
『……それにカークは本当はもう一度あの薬と向き合いたいんだろう?』シチャの言葉が胸をよぎった。【リナッシタ】の原因究明を行い、新薬を作れば、ナルが提示した金額を準備できるのではないか。【シロナ】はまだまだ油断できない疫病だ。新薬は皆切望している。それを開発し販売できるようになれば報酬は以前よりも多いはずだ。自国民が苦しんでいるというのに、薬を開発できれば金をもらえるだなんて浅ましいにも程がある。ミズキに嫌われても仕方ない。
カークの言葉にミズキは口元を緩め、立ち上がるとベンチの後ろの大木を見上げる。
「ここでよく二人で本読んでたよね。あの時の木がこんなに大きくなって。……またここで会えるとは思わなかった」
「……ミズキ」
「お金に執着していなかった君が、なぜそんなに必要なのかまでは聞かないよ。ただ、ひとつだけ宣言しよう。君は『お金』だけのために復帰するんじゃない。君のプライドのために復帰するんだ」
ミズキは軽蔑するどころか逃げることは許さない、と背中を押しながら手を伸ばしてきた。その手をカークは強く握った。
「おかえり」
その言葉が冬の朝の光のように胸に染みた。――もう逃げない。彼はそう静かに誓った。
翌日の早朝。朝焼けがまだ広がらない時間にカークの姿は国王の接見の間にあった。ここに来たのは研究塔に所属となった日、【リナッシタ】の完成時、そしてあの事件が起きた日。壁一面が鏡になっているこの部屋では何もかも――体の中でさえ――映し出されているような錯覚に陥る。カークは頭を振り、国王の椅子をじっと見つめていた。そしてしばらくして天井まである扉が開き、彼が現れた。以前よりも少し、小さくなっている。見事な白髪と長い髭がまるで神のような威厳を放っていた。頭を下げたカークに国王は険しい表情を崩さないまま口を開いた。
カークが不意に口元を緩める。あの事件以降、見ることのなかったカークの笑顔にミズキは面食らう。
「国民を助けたいとかそんな志じゃない。金が必要なんだ」
絶望の夜に宿で見かけたミズキの手紙。その時カークはふと気がついたのだ。研究塔にいた頃の報酬額を。今の自分ではシチャをミウケさせる金には到底足らない。だがもし研究棟に秘密裏に復帰し、報酬をもらえるようになったら。いやただ復帰するぐらいでは足らない。
『……それにカークは本当はもう一度あの薬と向き合いたいんだろう?』シチャの言葉が胸をよぎった。【リナッシタ】の原因究明を行い、新薬を作れば、ナルが提示した金額を準備できるのではないか。【シロナ】はまだまだ油断できない疫病だ。新薬は皆切望している。それを開発し販売できるようになれば報酬は以前よりも多いはずだ。自国民が苦しんでいるというのに、薬を開発できれば金をもらえるだなんて浅ましいにも程がある。ミズキに嫌われても仕方ない。
カークの言葉にミズキは口元を緩め、立ち上がるとベンチの後ろの大木を見上げる。
「ここでよく二人で本読んでたよね。あの時の木がこんなに大きくなって。……またここで会えるとは思わなかった」
「……ミズキ」
「お金に執着していなかった君が、なぜそんなに必要なのかまでは聞かないよ。ただ、ひとつだけ宣言しよう。君は『お金』だけのために復帰するんじゃない。君のプライドのために復帰するんだ」
ミズキは軽蔑するどころか逃げることは許さない、と背中を押しながら手を伸ばしてきた。その手をカークは強く握った。
「おかえり」
その言葉が冬の朝の光のように胸に染みた。――もう逃げない。彼はそう静かに誓った。
翌日の早朝。朝焼けがまだ広がらない時間にカークの姿は国王の接見の間にあった。ここに来たのは研究塔に所属となった日、【リナッシタ】の完成時、そしてあの事件が起きた日。壁一面が鏡になっているこの部屋では何もかも――体の中でさえ――映し出されているような錯覚に陥る。カークは頭を振り、国王の椅子をじっと見つめていた。そしてしばらくして天井まである扉が開き、彼が現れた。以前よりも少し、小さくなっている。見事な白髪と長い髭がまるで神のような威厳を放っていた。頭を下げたカークに国王は険しい表情を崩さないまま口を開いた。
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