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神同人作家と陸くんは嫉妬する
先生の正体
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いよいよ即売会の日。会場の最寄駅で待ち合わせしていると、永田くんが手を振りながらこちらに走ってきて、ハイタッチ。早速会場に向かう。
「BLオンリーイベントじゃなくても壁サークルかあ、フクミチ先生」
さすが商業の先生だね、など他愛のない話をしているうちに、開場のアナウンスが流れた。会場はたくさんの人がすでにいて、いつもと違うのは男性参加者の数だ。Jパークは八割くらい女性だからなんだか新鮮。今回の即売会はBLサークルが結構多くて、たくさん回るぞーと気合を入れ、フクミチ先生列のスペースを目指した。
割と早めに着いたというのに、すでに十人くらい並んでいて、さすがだなあと思いつつ列に並んだ。スペース内には男女二人がいた。ブルーのワンピースの女性と、パーカーの男性。男性は少し色の濃いメガネをしている。売り子が男性なのかなと思いながら見ていると、お客さんと握手しているのは男性のほう。
それを見て、永田くんが声を上げた。
「フクミチ先生、男性なんだ」
先生の代表作である【灰色の堕天使は微笑まない】はダークながら溺愛で切ない話。砂糖を吐きそうなほど甘いセリフもたくさん出てくるけれど、その反面戦闘シーンがBLにしては多く、アクション系BLだなんて永田くんと話したことがあった。
「だから格闘シーンが多いのかあ」
永田くんの呟きになるほど、と相槌をうちながら前に進む。
僕は高西先生を初めて会った時のことを思い出す。初めてスペースに行き、高西先生に本を渡されたとき声をかけられた。
『男の子だ。なんだか嬉しいな』
あとで由宇さんに聞くと、あのとき僕はかなり緊張していた顔だったから気分をほぐしてやろうと声をかけてくれたらしい。
今にして思えば、あの時声をかけてくれた時の笑顔に僕はすっかり恋していたのだと思う。
「陸くん、すすむよ」
慌てて前に進むと、もう最前列だ。机の上にある新刊を手に取り、フクミチ先生と思われる男性をちらとみた。オールバックの髪に濃いブルーのメガネ。目元はよく見えない。そんなに背は高くなくて、中肉中背って感じ。そして特徴的なのは頬にある三つの黒子。珍しいけど僕の身近にもいるのでへぇ、と思うくらい。
先生は僕の方に顔を向け声を発した。
「新刊ですね、ありがとう」
その声にギョッとした。特徴的な甲高い声に、微妙に関東のイントネーションと異なる『ありがとう』の言葉。それはいつも僕を心配してくれているあの声にそっくりだ。いやでもまさか、そんなわけない。でも彼もほおに黒子があるし……
僕は先生に返事をすることも忘れ、顔を見つめる。オールバックの髪を下ろし、パーカーをスーツ姿に変えてみる。メガネの奥の、瞳をのぞく。どう考えても……そんな馬鹿な!
するとフクミチ先生は、固まってしまった僕を見つめようやく気がついたのか、自分の口に手を当てる。そして僕の名前を呼んだんだ。
「……榎波?」
そこにいたフクミチ先生は紛れもなく同僚の藤田だった。
「BLオンリーイベントじゃなくても壁サークルかあ、フクミチ先生」
さすが商業の先生だね、など他愛のない話をしているうちに、開場のアナウンスが流れた。会場はたくさんの人がすでにいて、いつもと違うのは男性参加者の数だ。Jパークは八割くらい女性だからなんだか新鮮。今回の即売会はBLサークルが結構多くて、たくさん回るぞーと気合を入れ、フクミチ先生列のスペースを目指した。
割と早めに着いたというのに、すでに十人くらい並んでいて、さすがだなあと思いつつ列に並んだ。スペース内には男女二人がいた。ブルーのワンピースの女性と、パーカーの男性。男性は少し色の濃いメガネをしている。売り子が男性なのかなと思いながら見ていると、お客さんと握手しているのは男性のほう。
それを見て、永田くんが声を上げた。
「フクミチ先生、男性なんだ」
先生の代表作である【灰色の堕天使は微笑まない】はダークながら溺愛で切ない話。砂糖を吐きそうなほど甘いセリフもたくさん出てくるけれど、その反面戦闘シーンがBLにしては多く、アクション系BLだなんて永田くんと話したことがあった。
「だから格闘シーンが多いのかあ」
永田くんの呟きになるほど、と相槌をうちながら前に進む。
僕は高西先生を初めて会った時のことを思い出す。初めてスペースに行き、高西先生に本を渡されたとき声をかけられた。
『男の子だ。なんだか嬉しいな』
あとで由宇さんに聞くと、あのとき僕はかなり緊張していた顔だったから気分をほぐしてやろうと声をかけてくれたらしい。
今にして思えば、あの時声をかけてくれた時の笑顔に僕はすっかり恋していたのだと思う。
「陸くん、すすむよ」
慌てて前に進むと、もう最前列だ。机の上にある新刊を手に取り、フクミチ先生と思われる男性をちらとみた。オールバックの髪に濃いブルーのメガネ。目元はよく見えない。そんなに背は高くなくて、中肉中背って感じ。そして特徴的なのは頬にある三つの黒子。珍しいけど僕の身近にもいるのでへぇ、と思うくらい。
先生は僕の方に顔を向け声を発した。
「新刊ですね、ありがとう」
その声にギョッとした。特徴的な甲高い声に、微妙に関東のイントネーションと異なる『ありがとう』の言葉。それはいつも僕を心配してくれているあの声にそっくりだ。いやでもまさか、そんなわけない。でも彼もほおに黒子があるし……
僕は先生に返事をすることも忘れ、顔を見つめる。オールバックの髪を下ろし、パーカーをスーツ姿に変えてみる。メガネの奥の、瞳をのぞく。どう考えても……そんな馬鹿な!
するとフクミチ先生は、固まってしまった僕を見つめようやく気がついたのか、自分の口に手を当てる。そして僕の名前を呼んだんだ。
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