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天使は甘いキスが好き
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世の中には皆が皆、両親が揃っている子供ばかりでは無い。離婚したり、もしくは死んだりした片親の子供も居るのだと、祖母から云われ、もしその子に出逢ったら、『お母さんを恋しがらない子供などいない』と、父親にそう云われ、ハグして貰った事がある。
ーーーどうしよう、どうしよう…えっと、そうだっ。
伊吹は手に持っていた絵を床の上に置くと、英治の身体を抱き締めた。
「!」
英治は突然の事に驚く。伊吹の柔らかな唇が、英治の頬に触れのだ。英治の心臓がドクンと跳ねた。甘い柑橘系の優しい香り。英治は硬直したまま、ようやっと両手を伊吹の背に回した。小さな頼りな下げな華奢な身体。英治の心臓は壊れたかの様にドクンドクンと高鳴る。
「げんきがでるおまじないだよ?」
ーーーキスした、いや、された!
「えいじくん? どうしたの?」
「まじないなんて、信じるかよ」
ーーーそんなことよりっキスされた、こいつすきなのか? おれのことがっ。
英治はカッとなって伊吹を突き放した。伊吹がよろめく。
「えいじくん…?」
うるっと瞳を潤ませて、伊吹は英治を見詰めた。英治は困惑したままある、意地悪心が頭を過ぎった。
「おまじないなんかより、べつのものがいい」
ーーーそうだ、べつのもの。こまらせてやれ。こいつなんか。
「べつのもの? って?」
伊吹は眉根を寄せて訊き返す。
「キスしたんだから、あいてにたいしてせきにんをとるもんだぞ?」
「せきにん?」
ーーーこいついみわかってんのかな? ちょっとだけいらっとする。
初めて聞く単語に、伊吹は頭の中でクレッションマークをいくつも描く。英治はゴクンと息を呑んだ。
「かんたんさ。おまえがおれのよめになればいいんだから」
「よ…」
伊吹は益々困惑気味だ。聞いた事のないたまに女の子が、おまま事にママ役が居て、伊吹はいつもパパ役をやらされる。伊吹は首を傾げた。
「じゃあやくそくだ。おとなになったらよめになれ」
「うんっぼくよめになる」
英治は【ぼく】というの言葉に引っ掛かりを覚えたが、まあいいかと聞き流す。
「じゃ、これはやくそくのしるしだ」
そう云って、英治は伊吹の顔に自分の顔を寄せる。伊吹は双眸を見開く。顔面に英治の薄く開いた双眸は、まさしく恋を知った眼だ。だが初心な伊吹はカチコチに固まっている。英治の唇を受け止めていた。自分の唇に触れるだけの、可愛いキスだが、伊吹は唇でのキスは初めてだった。
「な、な、な、」
ーーーいま、おくちにチュウした、チュウしたっ。
「おまえおとなになったら、びじんになるぞ。こんなにかわいいんだからな」
英治はして遣ったりと、ほくそ笑む。
「…伊吹?」
迎えに来た兄の恵が、目前の光景に絶句した。英治は英治で、伊吹がそのまま大きくなった様な少年を、ジロジロと見詰める。良く似た兄弟だ。茶髪に薄茶色の瞳。
「あぁ? お前今なにしやがった? どこの馬の骨だっ」
只、言葉の使い方が違う。伊吹はハッとして、恵に駆け寄り抱き付く。
「にいちゃんっおそいぞっ」
「悪かったな、伊吹お前は帰る支度をしろ」
伊吹は頷いて、自分のロッカーに入れてある、鞄と上着を持って恵に駆け寄る。恵は英治の不躾な視線に、米神をピクリとさせて睨み返した。学校から帰って、着替える間も惜しんで迎えに来たのだ。伊吹の笑顔を見たくて急いで来たら、キスシーンを目撃だ。伊吹はバチバチと火花を散らす二人にキョトンとして、恵の腕を引っ張った。
「伊吹、良い子にしてたか?」
「うん!」
「よし。ところで……」
恵は微笑んだかと思ったら、英治を再び睨む。
「このガキはどこのどなたかな?」
英治は澄ました様子でお辞儀をする。
「たまきえいじ五さい、いしゃのむすこでふしかていにとつにゅうしました。ところで、ひとになをきくときはまずじぶんから。そうじゃありませんか? おにいさん」
呆気に取られて恵は微苦笑。【おにいさん】の言葉に、こいつ伊吹を女の子と勘違いしていると悟る。自分も経験した身だ。兄弟共に母親に似て、やたら整い過ぎた顔をしているのだ。未だに男女両方からラブレターを頂いている。「それは失敬した。俺は細川恵、伊吹の兄で早生まれの中学三年だ。それと、大事な事を教えてやろう。今回だけは見逃してやるが二度と伊吹に近付くな」
「なぜに?」
「ふふん。じゃ、そのついでに教えてやろう。聞いて驚け見て笑うな! 伊吹は女の子じゃないっ、お・と・こ・の・こ! 男だ!」
ーーーどうしよう、どうしよう…えっと、そうだっ。
伊吹は手に持っていた絵を床の上に置くと、英治の身体を抱き締めた。
「!」
英治は突然の事に驚く。伊吹の柔らかな唇が、英治の頬に触れのだ。英治の心臓がドクンと跳ねた。甘い柑橘系の優しい香り。英治は硬直したまま、ようやっと両手を伊吹の背に回した。小さな頼りな下げな華奢な身体。英治の心臓は壊れたかの様にドクンドクンと高鳴る。
「げんきがでるおまじないだよ?」
ーーーキスした、いや、された!
「えいじくん? どうしたの?」
「まじないなんて、信じるかよ」
ーーーそんなことよりっキスされた、こいつすきなのか? おれのことがっ。
英治はカッとなって伊吹を突き放した。伊吹がよろめく。
「えいじくん…?」
うるっと瞳を潤ませて、伊吹は英治を見詰めた。英治は困惑したままある、意地悪心が頭を過ぎった。
「おまじないなんかより、べつのものがいい」
ーーーそうだ、べつのもの。こまらせてやれ。こいつなんか。
「べつのもの? って?」
伊吹は眉根を寄せて訊き返す。
「キスしたんだから、あいてにたいしてせきにんをとるもんだぞ?」
「せきにん?」
ーーーこいついみわかってんのかな? ちょっとだけいらっとする。
初めて聞く単語に、伊吹は頭の中でクレッションマークをいくつも描く。英治はゴクンと息を呑んだ。
「かんたんさ。おまえがおれのよめになればいいんだから」
「よ…」
伊吹は益々困惑気味だ。聞いた事のないたまに女の子が、おまま事にママ役が居て、伊吹はいつもパパ役をやらされる。伊吹は首を傾げた。
「じゃあやくそくだ。おとなになったらよめになれ」
「うんっぼくよめになる」
英治は【ぼく】というの言葉に引っ掛かりを覚えたが、まあいいかと聞き流す。
「じゃ、これはやくそくのしるしだ」
そう云って、英治は伊吹の顔に自分の顔を寄せる。伊吹は双眸を見開く。顔面に英治の薄く開いた双眸は、まさしく恋を知った眼だ。だが初心な伊吹はカチコチに固まっている。英治の唇を受け止めていた。自分の唇に触れるだけの、可愛いキスだが、伊吹は唇でのキスは初めてだった。
「な、な、な、」
ーーーいま、おくちにチュウした、チュウしたっ。
「おまえおとなになったら、びじんになるぞ。こんなにかわいいんだからな」
英治はして遣ったりと、ほくそ笑む。
「…伊吹?」
迎えに来た兄の恵が、目前の光景に絶句した。英治は英治で、伊吹がそのまま大きくなった様な少年を、ジロジロと見詰める。良く似た兄弟だ。茶髪に薄茶色の瞳。
「あぁ? お前今なにしやがった? どこの馬の骨だっ」
只、言葉の使い方が違う。伊吹はハッとして、恵に駆け寄り抱き付く。
「にいちゃんっおそいぞっ」
「悪かったな、伊吹お前は帰る支度をしろ」
伊吹は頷いて、自分のロッカーに入れてある、鞄と上着を持って恵に駆け寄る。恵は英治の不躾な視線に、米神をピクリとさせて睨み返した。学校から帰って、着替える間も惜しんで迎えに来たのだ。伊吹の笑顔を見たくて急いで来たら、キスシーンを目撃だ。伊吹はバチバチと火花を散らす二人にキョトンとして、恵の腕を引っ張った。
「伊吹、良い子にしてたか?」
「うん!」
「よし。ところで……」
恵は微笑んだかと思ったら、英治を再び睨む。
「このガキはどこのどなたかな?」
英治は澄ました様子でお辞儀をする。
「たまきえいじ五さい、いしゃのむすこでふしかていにとつにゅうしました。ところで、ひとになをきくときはまずじぶんから。そうじゃありませんか? おにいさん」
呆気に取られて恵は微苦笑。【おにいさん】の言葉に、こいつ伊吹を女の子と勘違いしていると悟る。自分も経験した身だ。兄弟共に母親に似て、やたら整い過ぎた顔をしているのだ。未だに男女両方からラブレターを頂いている。「それは失敬した。俺は細川恵、伊吹の兄で早生まれの中学三年だ。それと、大事な事を教えてやろう。今回だけは見逃してやるが二度と伊吹に近付くな」
「なぜに?」
「ふふん。じゃ、そのついでに教えてやろう。聞いて驚け見て笑うな! 伊吹は女の子じゃないっ、お・と・こ・の・こ! 男だ!」
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