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天使は甘いキスが好き
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「いぶき、おれはうまをつくったぞ」
成田と伊吹は英治の作った【馬】に驚く。余りのリアルな粘土作品に、沼田も驚愕した。
「…ちょうこくかさんみたいだね」
伊吹が呟く。
ーーーこの子天才かも。
沼田はマジマジと英治の作品を見て唸った。【馬】は昼寝をする様に、四肢を緩やかに曲げている。伊吹は感心して英治の【馬】を見詰めた。
「すごいっ! ほんものみたい。えいじくんじょうずだね」
伊吹の微笑みに英治は釣られて笑った。
「やっとわらったな」
伊吹は一瞬硬直し、頬を染めた。成田は益々気に入らないとそっぽを向ける。
「このあいだテレビでみたわ、ホモのあつまるばしょとかってあるんだって」「なにそれ?」
「そのばかぎりのこいびとをつくるんだって…」
「まった! はいそこまで!」
エスカレートしそうな子供達の会話に、沼田はげんなりとしながら待ったを掛ける。
「君達、それ子供の会話じゃないからね? 今は作業続けてね?」
「は~い」
ーーーまったく。今時の子供は…。
と、沼田は英治を見る。
ーーーこの顔が、あの顔になって、背も高くなるのかぁ。
よく似た顔立ちの玉木親子。玉木はどうなのだろう? 恋人は居るのだろうか? 奥さんは居ないと云っていたが。と、沼田はハタと意識を現実に戻し、プルプルと顔を振った。
ーーーいかんいかん。何を感化されてんだ? 俺はノーマルだ、うん。ノーマル。
休み時間を入れて次はクリスマスカードを作る作業をした。
「お家の人にあげるカードです。心を込めて、絵を描いてね」
沼田はそれだけ云うと、教室を後にする。
「かつゆきはおばさんにあげるの? ぼくはおかあさんにあげる」
伊吹はクレヨンを選びながら、クリスマスツリーを描く。飾りの部分は赤や青のライトだ。
「かあちゃんととうちゃんにかく。いぶきはおじさんにもあげるのか?」
伊吹は太一と恵の異変に気付いていた。恵は伊吹にとって大事な存在だ。子供は素直な分、心は正直に出来ている。一番世話になっている恵を思い出す。「ぼくはけいにいちゃんにあげる」
伊吹はふと、隣の英治を見た。成田もつられて英治を見る。
「たまきはなにもかかないのか?」
成田が英治の手元を見る。真っ白なB六サイズが二枚。英治は成田を一瞥する。頬が強張って足許が凍りつきそうだ。
ーーー去年のクリスマスはどうだった?
母親は他の男とディナーだった。英治はひとり、用意されたケーキを前にクリスマスを過ごした。その母親は今は離婚して、その男と一緒だ。今年もきっとひとりだろう。
「どうしたの? おとうさんにかいてあげたら?」
伊吹の言葉に英治が双眸を見開いた。
「おしごとたいへんなんでしょう? きっとよろこぶとおもうよ?」
英治は強張った頬を漸く緩めた。伊吹の大きな瞳が英治の寂しげな顔を映す。
「そうか?」
「そうだよ」
伊吹は頷いて、英治の手元に置いていたクレヨンから、一本だけ緑色を取り英治に渡した。
「ぼくのみながらかくといいよ?」
「サンキュ」
英治の笑顔に伊吹はポッと顔を紅くする。
ーーーけいにいちゃんからちかづくなっていわれたけど。
伊吹は困って俯いた。
ーーーほっとけないよ~どうしよう。
伊吹はそっと溜息を吐いた。 問題はお昼寝の時間にも訪れた。
「なんでふとんまでおまえがいぶきのとなりなんだよっ」
成田は沼田の云い付けで、皆とお昼寝の準備に自分達の布団を、各々自由に敷いている。そこで、英治が伊吹の布団の隣に、自分の布団を敷いたのだ。「どこでもじゆうなんだろう? おまえにもんくをいわれたくないな」「…っ」
ごもっともな話なので、成田はム~と唸る。
「か、かつゆきもとなりくる?」
伊吹が宥め、パジャマに着替えると急いで布団に潜り込む。
「当たり前だ」
成田も急いで伊吹の隣に、自分の布団を英治の反対側。伊吹を挟む様に敷いた。
ーーーこいつじゃま。
成田と伊吹は英治の作った【馬】に驚く。余りのリアルな粘土作品に、沼田も驚愕した。
「…ちょうこくかさんみたいだね」
伊吹が呟く。
ーーーこの子天才かも。
沼田はマジマジと英治の作品を見て唸った。【馬】は昼寝をする様に、四肢を緩やかに曲げている。伊吹は感心して英治の【馬】を見詰めた。
「すごいっ! ほんものみたい。えいじくんじょうずだね」
伊吹の微笑みに英治は釣られて笑った。
「やっとわらったな」
伊吹は一瞬硬直し、頬を染めた。成田は益々気に入らないとそっぽを向ける。
「このあいだテレビでみたわ、ホモのあつまるばしょとかってあるんだって」「なにそれ?」
「そのばかぎりのこいびとをつくるんだって…」
「まった! はいそこまで!」
エスカレートしそうな子供達の会話に、沼田はげんなりとしながら待ったを掛ける。
「君達、それ子供の会話じゃないからね? 今は作業続けてね?」
「は~い」
ーーーまったく。今時の子供は…。
と、沼田は英治を見る。
ーーーこの顔が、あの顔になって、背も高くなるのかぁ。
よく似た顔立ちの玉木親子。玉木はどうなのだろう? 恋人は居るのだろうか? 奥さんは居ないと云っていたが。と、沼田はハタと意識を現実に戻し、プルプルと顔を振った。
ーーーいかんいかん。何を感化されてんだ? 俺はノーマルだ、うん。ノーマル。
休み時間を入れて次はクリスマスカードを作る作業をした。
「お家の人にあげるカードです。心を込めて、絵を描いてね」
沼田はそれだけ云うと、教室を後にする。
「かつゆきはおばさんにあげるの? ぼくはおかあさんにあげる」
伊吹はクレヨンを選びながら、クリスマスツリーを描く。飾りの部分は赤や青のライトだ。
「かあちゃんととうちゃんにかく。いぶきはおじさんにもあげるのか?」
伊吹は太一と恵の異変に気付いていた。恵は伊吹にとって大事な存在だ。子供は素直な分、心は正直に出来ている。一番世話になっている恵を思い出す。「ぼくはけいにいちゃんにあげる」
伊吹はふと、隣の英治を見た。成田もつられて英治を見る。
「たまきはなにもかかないのか?」
成田が英治の手元を見る。真っ白なB六サイズが二枚。英治は成田を一瞥する。頬が強張って足許が凍りつきそうだ。
ーーー去年のクリスマスはどうだった?
母親は他の男とディナーだった。英治はひとり、用意されたケーキを前にクリスマスを過ごした。その母親は今は離婚して、その男と一緒だ。今年もきっとひとりだろう。
「どうしたの? おとうさんにかいてあげたら?」
伊吹の言葉に英治が双眸を見開いた。
「おしごとたいへんなんでしょう? きっとよろこぶとおもうよ?」
英治は強張った頬を漸く緩めた。伊吹の大きな瞳が英治の寂しげな顔を映す。
「そうか?」
「そうだよ」
伊吹は頷いて、英治の手元に置いていたクレヨンから、一本だけ緑色を取り英治に渡した。
「ぼくのみながらかくといいよ?」
「サンキュ」
英治の笑顔に伊吹はポッと顔を紅くする。
ーーーけいにいちゃんからちかづくなっていわれたけど。
伊吹は困って俯いた。
ーーーほっとけないよ~どうしよう。
伊吹はそっと溜息を吐いた。 問題はお昼寝の時間にも訪れた。
「なんでふとんまでおまえがいぶきのとなりなんだよっ」
成田は沼田の云い付けで、皆とお昼寝の準備に自分達の布団を、各々自由に敷いている。そこで、英治が伊吹の布団の隣に、自分の布団を敷いたのだ。「どこでもじゆうなんだろう? おまえにもんくをいわれたくないな」「…っ」
ごもっともな話なので、成田はム~と唸る。
「か、かつゆきもとなりくる?」
伊吹が宥め、パジャマに着替えると急いで布団に潜り込む。
「当たり前だ」
成田も急いで伊吹の隣に、自分の布団を英治の反対側。伊吹を挟む様に敷いた。
ーーーこいつじゃま。
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