鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

吉良龍美

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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

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「私見たのよ。あなた達が入るの。しかも男同士で。おかしいじゃないの。もうこれ以上隼人さんに関わらないでくれる? 彼の未来の為にも」
「あ、あずささん」
「薫さんが知ったらどうなるかしら? 出産を控えていて、そこへ信じているあなたが、ご主人の大事な息子さんとそんな関係だなんて知ったら」
 あずさは蔑んだ眼で鈴を睨んだ。鈴は何も云えなくなり、呆然として立ち尽くしていた。

「鈴」
 中庭に出て来た鈴を、ジンが待ち構えて声を掛ける。鈴はジンを見上げて一滴、涙を零した。
「あの女の匂いがする。やはり私もついて行くべきだった」
 ジンが鈴の頭を引き寄せて、自分の胸に抱き締めた。
「なんで?」
 鈴はジンのシャツを掴んで額をジンの胸に押し当てる。
「なんで隼人さんじゃないいだよっ、なんでそんなに優しくするんだよっ」
 只の八つ当たりだと理解していても、鈴は叫びたかった。
「それは、そうだな…昔のお前の魂への償いかも知れないな」
「…」
 鈴は顔を上げて、ジンの碧い瞳を見詰める。
「この碧い眼はその昔、愛した者の瞳を神が移した物だ。『忘れるな』とな。私のこの身体は呪われている。遥か昔、太古の時代から。気が遠くなる時の流れに、何度も気が狂い自らの身体を痛め付けたが死ねなかった。首の傷は、愛した者が最後を遂げた時の痛みだ。神が愛し産み出した『光り』を、私は守れなかったんだ。何度も転生したお前を守れなかった。お前は思い出さないか。私の愛の言葉を。『リオラ』として転生した時は、世界をお前に見せると云ったあの言葉も」
 鈴は双眸を開いてジンの胸に手を当て、後ずさる。簡単にジンが抱擁を解いた。


『北国とはどんな所なの?』
『夏が短く、冬は凍てつく世界に覆われる。夜は闇が無い。白夜と呼ばれている』
 リオラは眼を輝かせた。
『すごーい、僕もそこへ行ってみたい』
 だが、直ぐにその双眸は翳る。
『いつか俺と行こう。きっと行ける』
『行きたい、あぁ…だって…でもやっぱり無理だよ』
 皆がこの身を呪われていると話しているのを知っている。自分はきっと魔女なのだ。
 こうして生きているのが不思議なぐらいだ。何故なら魔女は火炙りにされるから。
『約束しよう、リオラ。いつか外の世界に連れて行ってやる』

 リオラの視線がジンの顔を見詰める。森の景色やなぜかあずさに似たドレスを着た女性の姿。景色が変わる。鈴はふっと気を失って、ジンの腕の中で倒れた。

 鈴がふと眼を開けて、薫がホッとしているのを不思議な気持ちで見た。見慣れた部屋だ。いつ自宅に帰ったのか解らない。
「ジンさんが送ってくれたのよ? 後でお礼を云いなさいね?」
「…うん」
 壁掛け時計は十八時を指している。四時間も寝ていたようだ。鈴はあずさの言葉を思い出して、米神を涙で濡らした。
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