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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー
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ロバートがルイーズの居室の開いたドアをノックする。見るとルイーズの首には美しいバラのネックレスが在った。
「まぁロバート」
鏡台の前でおめかしをするルイーズのドレスは、ピンク色の愛らしいデザインが施されている。
「綺麗なネックレスだね。三つのバラにダイヤか。とても似合っている」
「ふふ。これはお母様の形見なの」
「ところで…式の事なんだが」
ルイーズの笑顔が刹那消えた。それを見たメイドが怯えて一歩下がる。ロバートは気付かなかったようで、メイドはお辞儀をして部屋を出た。
「お父様が盛大にしようとご機嫌なの。これでお母様が生きていらしたら。ロバートは子供は何人欲しいかしら? 私は賑やかな方が良いわ」
「……そのことなんだが」
「わたしね?」
ルイーズが微笑んでロバートを振り返る。
「夫が浮気しても寛容でいようと思いますの。でもね? あの子だけはだめよ?」
ロバートはゾッとして双眸を見開いた。
「…ルイーズ?」
「あの子だけはだめ」
ーーーだってあの子は。
来ている筈のルイーズの姿は無かった。リオラは仕方なくひとりでネックレスを探し始める。上空は東から雨雲がやって来ていた。
「急がないと」
結婚式に間に合わない。
ーーーロバートが結婚する。
胸の奥がおかしい。自分は誰が好きなのか。優柔不断な自分が嫌い。
ーーージン。
二人を想うと苦しくなる。どうしたいのか。
「っ!?」
ヒュンと音が鳴った。激痛は一瞬で、胸に矢が突き刺さったのが解った。
遠くから、何者かが馬で近づいて来る。見知らぬ男だ。
「殺せとの云い付けだ。俺はお前に恨みは無いが、恨むならあんたの姉を恨むのだな」
ーーーこの男は何を云っているのだろう?
「魔女が私の恋人を苦しめるなどと、あの世で嘆くがいい。ルイーズは私の妻になると約束してくれた。その条件にお前を亡き者にしろとの事だ。お情けでこれ以上苦しまずにあの世へ送ってやろう。有り難く思えよ」
男は馬から降りながら告げ、リオラに向けて剣を振り下ろした。
「っ!?」
ジンは草原をオオカミの姿で掛けていた。森がざわめき、鳥達が騒いでいる。
ーーー血の匂い?
クンっと鼻を蠢かせ、カッと双眸を見開いた。
ーーーリオラ!?
リオラの匂いが風に載って血の匂いと混ざり合った。
ジンは匂いのする方へ急いだ。
外でどさりと音がした。乳母やは鍋を掻き混ぜる手を止めて、胸騒ぎのするままドアを開けた。眼にしたものがなんなのか、直ぐに理解できなかった。
血に染まったリオラの身体が、馬から降りた男の足許に転がっている。
「…リ、オラ様?」
「魔女はこの手で成敗してやった。それとルイーズはこの家に火を放てとも云った」
ーーー今、なんと云った?
乳母はふらりとリオラの傍まで行き、まだ温かい身体を抱き起した。胸から溢れる血をどうにか止めようと、溢れる涙を零したまま手で傷口を抑える。
「リオラ様、お目覚め下さい、おねむの時間ではないですよ?」
震える声がして、乳母は男を睨み上げた。男の背後で、数人の男達が松明を手に近付いて来る。
「何が起きた!? 何故リオラ様を!?」
「あぁ? それはお前の主のルイーズに訊くといい」
男は馬から降りて剣を鞘から抜き取り、ほくそ笑む。
「おのれ、呪われるがいいっ! 一族もろ共、奥さまだけではなくリオラ様まで!!」
ザシュッと音がして、ごろりと乳母の頭が転がった。後方へ倒れ、松明を持つ男達が息を呑む。
「何をしている、さっさと火を放て!」
男は声も高らかに云い放った。
「まぁロバート」
鏡台の前でおめかしをするルイーズのドレスは、ピンク色の愛らしいデザインが施されている。
「綺麗なネックレスだね。三つのバラにダイヤか。とても似合っている」
「ふふ。これはお母様の形見なの」
「ところで…式の事なんだが」
ルイーズの笑顔が刹那消えた。それを見たメイドが怯えて一歩下がる。ロバートは気付かなかったようで、メイドはお辞儀をして部屋を出た。
「お父様が盛大にしようとご機嫌なの。これでお母様が生きていらしたら。ロバートは子供は何人欲しいかしら? 私は賑やかな方が良いわ」
「……そのことなんだが」
「わたしね?」
ルイーズが微笑んでロバートを振り返る。
「夫が浮気しても寛容でいようと思いますの。でもね? あの子だけはだめよ?」
ロバートはゾッとして双眸を見開いた。
「…ルイーズ?」
「あの子だけはだめ」
ーーーだってあの子は。
来ている筈のルイーズの姿は無かった。リオラは仕方なくひとりでネックレスを探し始める。上空は東から雨雲がやって来ていた。
「急がないと」
結婚式に間に合わない。
ーーーロバートが結婚する。
胸の奥がおかしい。自分は誰が好きなのか。優柔不断な自分が嫌い。
ーーージン。
二人を想うと苦しくなる。どうしたいのか。
「っ!?」
ヒュンと音が鳴った。激痛は一瞬で、胸に矢が突き刺さったのが解った。
遠くから、何者かが馬で近づいて来る。見知らぬ男だ。
「殺せとの云い付けだ。俺はお前に恨みは無いが、恨むならあんたの姉を恨むのだな」
ーーーこの男は何を云っているのだろう?
「魔女が私の恋人を苦しめるなどと、あの世で嘆くがいい。ルイーズは私の妻になると約束してくれた。その条件にお前を亡き者にしろとの事だ。お情けでこれ以上苦しまずにあの世へ送ってやろう。有り難く思えよ」
男は馬から降りながら告げ、リオラに向けて剣を振り下ろした。
「っ!?」
ジンは草原をオオカミの姿で掛けていた。森がざわめき、鳥達が騒いでいる。
ーーー血の匂い?
クンっと鼻を蠢かせ、カッと双眸を見開いた。
ーーーリオラ!?
リオラの匂いが風に載って血の匂いと混ざり合った。
ジンは匂いのする方へ急いだ。
外でどさりと音がした。乳母やは鍋を掻き混ぜる手を止めて、胸騒ぎのするままドアを開けた。眼にしたものがなんなのか、直ぐに理解できなかった。
血に染まったリオラの身体が、馬から降りた男の足許に転がっている。
「…リ、オラ様?」
「魔女はこの手で成敗してやった。それとルイーズはこの家に火を放てとも云った」
ーーー今、なんと云った?
乳母はふらりとリオラの傍まで行き、まだ温かい身体を抱き起した。胸から溢れる血をどうにか止めようと、溢れる涙を零したまま手で傷口を抑える。
「リオラ様、お目覚め下さい、おねむの時間ではないですよ?」
震える声がして、乳母は男を睨み上げた。男の背後で、数人の男達が松明を手に近付いて来る。
「何が起きた!? 何故リオラ様を!?」
「あぁ? それはお前の主のルイーズに訊くといい」
男は馬から降りて剣を鞘から抜き取り、ほくそ笑む。
「おのれ、呪われるがいいっ! 一族もろ共、奥さまだけではなくリオラ様まで!!」
ザシュッと音がして、ごろりと乳母の頭が転がった。後方へ倒れ、松明を持つ男達が息を呑む。
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男は声も高らかに云い放った。
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