初恋 1985/2022

2022

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出会い

笑顔

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 彼女の名前を書いては消し、また書いてーー気がつくとノートの後ろ数頁が三好真智子という文字で埋め尽くされていた。

「なぁ、大さん。もしかして勉強に目覚めたん?」

隣の席の香西カンナがじっとこっちを見て話掛けてきた。

慌ててノートを机の中にしまい、また視線を窓の外の空へと向けた。

「何か変やなぁ。なぁ、大さん変やんな、最近」

今度は後ろの席の髙木誠人まで巻き込んで茶々を入れてくる。

「五月蝿いって、ホンマに!」

授業中だったことをすっかり忘れて声を上げてしまった僕にクラスの皆が視線を向ける。

「小野くん、何かあった?」
数学の大林先生が怪訝そうな顔でこちらを見る。
「あ、いえ……すいません」

授業が再開され、再び窓の外の空を見上げていた。理由は分からない。ただ、ここから空を見ているとそこに三好真智子の顔が浮かぶのだった。


生徒会での顔合わせの後、昼休みや放課後に彼女の姿を見掛けることがあった。
時折目が合うと、ペコリと頭を下げてくれ、それに返すように僕も頭を下げながら何事も無い素振りを装っていたが、その度に胸の鼓動の高鳴りを感じていた。

そして最も楽しみだったのは毎週月曜日に運動場で行われる全校朝礼だった。生徒会役員は三人一組で校旗を掲揚するのだが、彼女と一緒になる機会があり、いつしかその日を待ち遠しく思うようになっていた。もちろん、何か話ができるわけではない。ただ、彼女の間近でその声を聞けること、他の役員との会話の中で笑ったりふざけたりする姿が見れることが嬉しかった。

ある週のこと。
彼女と同じ学年の子と僕が校旗掲揚になった時、ロープが引っ掛かってしまい上手く上がらなかった。

「あれ? あれ?? なんか、引っ掛かってます」

彼女ともう一人が慌てているのを見て、僕は咄嗟にロープを掴み、目一杯それを引いた。すると、引っ掛かっていたロープが外れて校旗が一気に上りきってしまい、運動場にいた全国生徒が笑っていた。それならと僕は、今度は旗を一度下に下ろし、終わりかけの校歌に合わせて再び上げスルスルっと上げ直した。すると今度は生徒のみならず、先生たちも声を上げて笑っていた。

「ほら、ウケた(笑)」

見ると彼女も顔を少し赤らめて笑っていた。


初めて見た彼女の笑顔はとても眩しく輝いて見えた。
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