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地下のロボット実験場に放り込まれたけど、どこへ行けばいいのか判らない。学校らしい建物の中に入るとチアガールの女の子がダンスの練習をしてる。
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あらすじ
地下のロボット実験場に放り込まれたけど、どこへ行けばいいのか判らない。学校らしい建物の中に入るとチアガールの女の子がダンスの練習をしてる。近くの家に案内されるとパソコンでビデオチャットができる。やってみたけどインターネットには繋がらない。
295階で表示が止まると、エレベータのドアが開いて変な部屋に通された。
小さな部屋にテーブルと、椅子だけが置いてある。
三人を連れてきた助手が部屋から出て行くと、エレベータのドアがガシャンと閉まってもう動かない。
江実矢君がドアの周りを調べてみたけど、スイッチらしいものは見あたらない。
エレベータのドアは簡単には開かない仕組みらしい。
大きな窓から部屋の外が見えるけど、何だか変な風景だ。
薄暗くて紫色の街灯が所々に見える。
彩香ちゃんが恐る恐る、部屋のドアを開けてみた。
冷たい空気がドアの外から流れ込んできたけど、風でもないみたい。
ドアの外に見える灰色がかった街角には人影が見あたらない。
耳を澄ませてみてもシーンと静まりかえって物音もしない。
彩香ちゃんがまず先に外にでてみたけど、町並みが続いてるだけでどこなのか判らない。
広い通りには横断歩道があるけど車は一台も走っていない。
喫茶店らしいガラス張りの建物が見えたけど客は誰もいない。
大通りのすぐ正面に大きなネオンの看板が見えた。
「歌舞伎町」と大きなピンクのネオンサインが輝いてる。
看板の通りだとするとここは新宿の歌舞伎町なはず。
新宿の歌舞伎町には行ったことはないけど、真夜中でも大変な人が歩いてる繁華街だとお父さんが言ってた。
夜の歌舞伎町に人が誰もいないなんてはずはない。
ともかく駅にまで行けば、電車に乗れるはずだと彩香ちゃんが言い出した。
たしかに電車の駅があればそこからの帰り道は判る。
だけど歌舞伎町なんて行ったことがないから、どっちが駅なんだか判らない。
ともかく歩いて行けるところまで行ってみるしかない。
歌舞伎町の看板の下を通ってしばらく歩いてみたけどやっぱり様子が変だ。
両脇に並んだ建物は、ベニヤ板にペンキで描いたような壁でできてる。
洋服屋らしい店もあるけど、棚は全部空でスカートやブラウスのポスターが壁に貼ってあるだけだ。
しばらく道を歩くと十字路の先は行き止まりで高い壁が左右に広がってる。
左手も行き止まりなので、右手に進んでみると角にコンビニがある。
コンビニで店の人に聞けばここがどこだか判るはずと思って有紀はコンビニのドアを開けた。
店にいるはずの店員の姿はない。
それにこの店どう見たって変だ。
陳列してある商品はみんな、ポスターみたいに絵が描いてあるだけ。
週刊誌の棚も、飲み物の入った冷蔵庫もみな紙に書いた絵だけだ。
これって映画の撮影のセットなのかもしれないと有紀は思った。
コンビニの店を出てもう少し先まで行ってみると、今度はファミレスがあってその先には交番もある。
交番の隣はお寿司屋さん。
だけど誰も人はいない。
すぐ先にいってみるとストリップ劇場の看板が見えた。
男の人らしい姿が、ストリップ劇場の入り口から出てくるのが見えた。
服装は普通のサラリーマン風で、特に変な雰囲気ではないけど歩き方が随分とぎこちない。
きっとお酒でも飲んでるのに違いない。
「あの、すみません」と彩香ちゃんが男に声をかけた。
「はい、こんばんは、今日は良い天気ですね。俺、良一って言うんだ」と男が彩香ちゃんに顔を向けて返事をした。
こんな薄暗いのに良い天気だなんて変だと思って、彩香ちゃんは空の方向を見上げてみた。
夜空をよく見ると夜の町みたいだけど本物の空なんかじゃない。
少し高くなったドームがみたいな天井があって青く塗ってあるだけ。
所々に星らしい電球がついてる。
良一君が急にがしゃんと音をたてると、そのまま動かなくなった。
「どうしたんですか」と彩香ちゃんが心配そうに声を掛けたが返事がない。
下を向いた良一君の顔を見上げようとして、彩香ちゃんがしゃがみ込んだ。
すると今度は急に「あ、こんばんは、今日は良い天気ですね。俺、良一って言うんだ」とまたさっきと同じ台詞。
「これから一緒にお茶でも飲みませんか、いや、近くにケーキの美味しい店があるんだけど」
そう言うとまた良一君の身体がぴたりと止まって、今度は顔を上げて彩香ちゃんの顔を眺めてる様子。
「君可愛いね、長い髪がとてもチャーミングだし、それにスタイルも抜群だね、モデルさんみたい」と良一君が彩香ちゃんに話しかけてきた。
「彼氏いるのかな、よかったら僕と付き合わないか、お小遣い欲しいだろう」とまるでナンパみたいだ。
だけどまたぴたりと動きが止まると、今度は横を向いて有紀の方を向き直った。
「君も可愛いね、長い髪がとてもチャーミングだし、それにスタイルも抜群だね、モデルさんみたい」と同じ台詞を繰り返してる。
「あの、この町には、他に誰か居ないんですか」と彩香ちゃんが恐る恐る良一君に聞いてみた。
「他に誰か居る、他に誰かいない、他に誰か居る、他に誰か」と良一君が言い続けて止まらなくなった。
これはしょうがないと有紀が彩香ちゃんの手を引くと、江実矢君も彩香ちゃんの手を取った。
良一君からゆっくりと後ずさりしながら、離れると良一君はその場に立ち止まったまま動かない。
「ロボットだよ、きっと故障してるんだ」と江実矢君が彩香ちゃんに言うと彩香ちゃんも頷いて納得した顔。
「ロボットにナンパされるなんて、私初めてだわ」と彩香ちゃんがぽつりと言った。
確かにさっきの良一君はナンパするつもりで話しかけてきたのだと有紀も思った。
ナンパロボットなんてあるわけ無いけどこの怪しげなタコイーカ財団だったら作ってるかもしれない。
ロボットが上手く動くかどうか、ここでテストしてるんだと有紀はなんとなく思った。
所長が言っていたロボット実験場というのは此処のことだったんだ。
コンビニの棚に絵の書いた紙が貼ってあるのはそのせいらしい。
エレベータで随分下まで降りたからよっぽど深い地下にあるはず。
簡単には逃げ出せそうにない。
此処でこれからどうすればいいのか見当もつかない。
改めて町並みをよく見てみると電信柱には電線がないし、公園の木はお芝居の書き割りみたいにベニヤ板を切り抜いて絵を描いてあるだけ。
どうみても手抜きだ。
予算が足りなくて仕方なく手抜きをしたのかもしれないと思うと有紀はなんだかおかしくなって微笑みを浮かべた。
江実矢君も有紀に釣られて微笑んだけど、彩香ちゃんはまだ心配そうな顔付きのままだった。
もう少し先まで行ってみようと歩きだすと大きな壁にぶつかった。
この歌舞伎町は四方が壁で囲まれていて、それほど広い街ではないらしい。
壁一面にビルの絵が描いてあるけど門の絵もある、門の扉には取っ手がついてる。
試しに取っ手を廻して扉を押してみると、扉が動いた。
扉を押し開けてくぐり抜けると、こんどは目の前が急に明るくなった。
土色のグランドの先には時計台のあるレンガ造りの校舎らしい建物が見える。
右手には小さな教会みたいな建物があって、左手は体育館みたいな建物もある。
ともかく校舎に行ってみようと思って、グランドを横切って中庭に出てみるとすぐ近くから音楽が聞こえてきた。
軽快なリズムの演奏はまるでディスコかなんかのユーロビート風に聞こえる。
体育館の中から聞こえてくるみたいなので、三人で体育館の方に行ってみた。
入り口を入るとバスケットボールのコートが一面あって左手にちょっとだけ床が高くなった舞台が見える。
舞台の中央では真っ赤なチアリーディングの衣装を付けた女の子が、チアのダンスを繰り返してる。
音楽に合わせて、手と足を動かしてるだけでまるでロボットみたいな動き。
さっき歌舞伎町で出会った男はロボットみたいだったけど、この女の子もロボットに違いない。
不意に女の子が踊りを止めて、じっとしたまま三人を見つめた。
やや小柄で小さな顔は見た感じは江実矢君の幼友達の希美ちゃんによく似てる。
だけど希美ちゃんがこんな所にいる訳がない。
「あなたたち、新入生ね」と女の子が口を開いた。
なんて答えていいのか判らずに、三人は黙ったまま仕方なく軽く頷いた。
「入学式は明日よ」と女の子がまた話しかけてきた。
「そうなんですか」と彩香ちゃんが仕方なく答えると「間違えたのね、そうそう、あなた達はいるクラブはもう決めたの」と女の子が聞いてきた。
「まだですけど」と今度は有紀が答えると「じゃあ、チアリーディング部にしなさい、部員が足りなくて困ってたの」と女の子がまた言った。
もしかして他にもこの学校には女の子が居るのかもしれない。
「今部員は何人いるんですか」と有紀が聞いてみると「私一人なの」と女の子がちょっと寂しそうな顔をした。
江実矢君は話しの合間にも、女の子の横のラジカセが気になってるらしい。
さっきから音がうるさくて、近くで話しをしていてもとても聞こえないくらい。
江実矢君がラジカセを止めようとして指でスイッチを押そうとしたが動かない。
スイッチは絵が描いてあるだけで、どのボタンを押してもなにも起こらない。
女の子が江実矢君に気がついたのか、不意に江実矢君に駆け寄ってラジカセのボタンを押した。
江実矢君の手の上に、女の子の手がかさなると江実矢君が驚いて振り返ろうとした。
不意に江実矢君のほっぺたが、女の子の唇に触れて江実矢君は身体が震えちゃってる。
ラジカセのボタンは紙で出来ていて押しても動かない。
だけど女の子が軽く触っただけで不思議と音楽が止まると、急に体育館の中が静かになった。
女の子は江実矢君を後から抱きかかえたような格好で身体が凍りついたように動きが止まった。
彩香ちゃんが江実矢君に駆け寄ろうとしたとき、また不意に女の子の身体が動いた。
江実矢君はちょっと恥ずかしそうな顔で女の子から身体を離した。
女の子は何事も無かったみたいにがラジカセを掴んで持ち上げたけど、まるで紙で出来てるみたいに軽そう。
「そうだ、学校案内してあげるね、見たいでしょう」と女の子がまた口を開いた。
「私ね、沢田百合っていうの、みんな百合ちゃんて呼んでるのよ」と女の子が自己紹介をした。
百合ちゃんがラジカセをもって体育館のから校舎に三人を案内してくれたけどやっぱり変だ。
校舎の正面の時計台は絵に描いてあるだけで、針は動かないみたいだし、校庭の前の花壇もまるでお芝居の舞台みたいに花の絵を描いてある板を置いてあるだけ。
百合ちゃんに案内されて、教室に入ると正面に大きな黒板があって花文字で絵が描いてある。
「これ私が書いたのよ」と百合ちゃんが嬉しそうな顔で指さしたけど丸い花は見事に円形で手でなんかとても書けないほど正確な丸の形だ。
教室を見た後は、階段を上がって図書館に案内された。
図書館の入り口には大きな掲示板があってチアリーダー募集のポスターも貼ってある。
「ラブエンジェルズ」というのがチームの名前らしい。
「これも私が書いたのよ」と百合ちゃんがちょっと恥ずかしそうな顔をしてポスターの前を通り過ぎた。
手書きの文字は、わざと曲げて書いてあるらしくて何だか変な格好でloveのオーの文字がハート形になってる。
図書館には書架が左右二列に並んでいて、閲覧用の机も置いてある。
「ここで、何でも好きな本が読めるのよ」と百合ちゃんが嬉しそうな顔で言ったけどやっぱり変だ。
遠くから見ると確かに本が並んでるけど、近くで見ると本の絵が大きな板に貼ってあるだけ。
これじゃあ、読める訳がない。
図書館の隣はパソコンルームになってるけどやっぱりここも段ボールで作ったような箱にパソコンの絵が描いてあるだけ。
階段を降りて今度は隣の建物にいくと、しゃれた感じのカフェテリアになってる。
自動販売機も置いてあるけど、やはり箱に絵が描いてあるだけで飲み物は買えそうにない。
校舎の中を大体一回りして正面の玄関に戻ると「そうだ、みんなこれから私の家に遊びに来ない」と百合ちゃんが誘った。
「ね、いいでしょう、私の家すぐ近くだから」と百合ちゃんが言うので、他にいく場所もないので百合ちゃんの家にみんなで行くことになった。
百合ちゃんに案内されて校舎の裏手にある小さな門を出ると目の前は大きな公園。
大きな木がいっぱいあるけど、どれも芝居の大道具みたいに絵で描いてあるだけ。
中央に噴水があって、その周りにベンチが並んでる。
公園の出口をくぐると目の前に大通りがあって、左右に家が並んでる。
どの家もそっくり同じ作りで、壁の色が違うだけ。
一番手前にある家が百合ちゃんの家らしくて、百合ちゃんがドアを開けた。
家の中は結構広くて、廊下の先にリビングルームがある。
まるで新築の家みたいに家具らしい物はなにもない。
「こっちが私部屋なの」と百合ちゃんに案内されて玄関のすぐ横にあるドアを入った。
中は結構広くて、窓の外から大通りが見える。
百合ちゃんの部屋には大きなベッドが置いてあって、その隣は勉強机があって、横には本棚がある。
見た目は普通の女の子の勉強部屋みたい。
本棚はさっき図書館で見たのと同じに本の絵がポスターみたいに貼り付けてあるだけで、実際に本が置いてある訳じゃない。
百合ちゃんが勉強机の引き出しを開けると中からノートパソコンが出てきた。
勉強机に備え付けになってるらしくて、引き出しを開けるとそのまま使えるようになってる。
百合ちゃんがパソコンのスイッチを入れるとパソコンが起動した。
体育館で見たハリボテのラジカセと違って本物のパソコンだ。
「ねえ、友達紹介するね、私ねいつもここのビデオチャットで友達と話ししてるの」と言いながら百合ちゃんがパソコンの画面を見せてくれた。
「ねえ、友達できたんだ、今度の新入生でね、今日学校にきたのを偶然見つけたの」と百合ちゃんがマイクに向かってしゃべり出した。
「あ、ホント、凄いのね」とスピーカーから声が聞こえてきたけど、なんだか変だ。
パソコンの画面に映ってるのはテレビゲームの主人公みたいな女の子の絵。
しゃべりながら口が動いてるけど、パソコンに表示されてるグラフィックのアニメみたいな絵だ。
「この子ね、久美ちゃんていうの、チャットで知り合ったのよ、この子ね今度転校してくるの」と百合ちゃんが嬉しそうな顔で紹介してくれた。
テレビカメラの前に彩香ちゃんが顔をだして「初めまして、よろしくお願いします」と挨拶するとパソコンの画面の久美ちゃんの顔が微笑んだ。
「明日入学式で会いましょうね」と久美ちゃんに言われたけど、何て答えていいのか判らない。
「久美ちゃんね、お父さんがアメリカに仕事で行っていてね、今年やっと日本に帰ってきたの」と百合ちゃんが話してくれたけどそんな話しが本当の訳がない。
百合ちゃんはここで暮らしてるロボットらしくて、百合ちゃんからはたいした話しは聞けそうにない。
ともかくこっからどうやって出られるか調べるのが先だ。
もしかしてこのパソコンインターネットで繋がってるのかもしれない。
それなら、インターネットのメールで勇二君に知らせる事だってできるはず。
勇二君は時々ビデオチャットをしてるから運が良ければビデオチャットで勇二君と話しが出来るかもしれない。
「私にもビデオチャットやらせて貰えませんか」と彩香ちゃんが恐る恐る百合ちゃんに聞いてみた。
「うん、久美ちゃんも彩香ちゃんと話しがしたいらしいの」と百合ちゃんに言われて彩香ちゃんはびっくりした顔をしてる。
まだ三人の名前は知らせてないはずなのに百合ちゃんは知ってるみたい。
ロボットだからデータが最初からいれてあるらしい。
彩香ちゃんが最初にパソコンに向かうと久美ちゃんといろいろ話しをしながらインターネットのビデオチャットのサイトに繋ごうといろいろやってみた。
やっぱりこのパソコンは外の世界とは繋がっていないらしくて、しばらくやってみたけど結局彩香ちゃんは諦めたみたい。
パソコンの得意な江実矢君が彩香ちゃんと席を替わっていろいろやってみたけどやっぱり上手くいかない。
「ビデオチャットのやり方知らないなら私が教えて上げる」と百合ちゃんが言ってくれたので、江実矢君が百合ちゃんと席を替わった。
「久美ちゃんの他に誰かチャットの相手してくれる人が居ると良いんだけど、誰か男の人と話をしたいな」と彩香ちゃんがそれとなく話しを向けてみた。
すると百合ちゃんが「男の人とビデオチャットで何の話しがしたいのかしら。本当はナンパされたいんでしょう」と言い出したので有紀はびっくりした。
さっき歌舞伎町で男のロボットにナンパされたけど、今度はビデオチャットでナンパされたいとか百合ちゃんが言ってる。
このロボット実験場はロボット同士でナンパする場所なのかしらと有紀は呆れてしまった。
「ねえ久美ちゃんビデオチャットで男の人にナンパされたことある」と百合ちゃんが久美ちゃんとビデオチャットで話しを始めた。
「ううん、まだだけど、百合ちゃんは」と久美ちゃんが返事をしてきた。
「私もまだだけど、誰かいい男の人居たら紹介してね、私背が高くて格好いいひとがいいな。久美ちゃんはどう」と百合ちゃんが嬉しそうに答えてる。
ロボットの女の子同士でも恋バナは大好きらしい。
さっそく話しが盛り上がってるけど話題は男の子の話とナンパの話しばかり
百合ちゃんは久美ちゃんとのビデオチャットに夢中でもう三人の事は気にかけていない様子。
「ねえ、私達そろそろ帰りますね」と彩香ちゃんが百合ちゃんに声を掛けた。
百合ちゃんは彩香ちゃんの声に気が付かないらしくてパソコンの画面に向かったまま動かない。
彩香ちゃんが有紀に目で合図すると有紀は江実矢君の手を引っ張った。
気づかれないように静かに後ずさりすると、足音を立てないように静か百合ちゃんの部屋を出た。
大通りに出てみると、大きな家が何件か建ってるのが見えた。
どの家も無人らしくて、人の気配はない。
しばらく大通りを先に進んでみると、大きな壁にぶち当たった。
街の絵が描いてあるだけで、その先には進めない。
右手に進んでしばらくいくとまた突き当たり。
また右手に曲がってしばらく行くと、今度は学校の正門の前に出た。
「入学式」と書いた大きな立て看板が門の前に出ていて明日が入学式らしい。
通りの先はまた行き止まりになってるけど、壁に大きな門がある。
さっき歌舞伎町からこっちに来るときに通った門らしい。
ためしに門を開けてみると、暗い町並みが見えた。
門をくぐって辺りの様子を確かめてみると、やっぱりさっきの歌舞伎町だ。
この歌舞伎町は空全体がドーム型の天井になってるから、そんなに広いはずはない。
周りの壁にそってぐるっと一回りすれば一番最初に居た場所に戻れるはず。
ともかく最初にエレベータから出たときの部屋に戻ろうと三人で話しがまとまった。
地下のロボット実験場に放り込まれたけど、どこへ行けばいいのか判らない。学校らしい建物の中に入るとチアガールの女の子がダンスの練習をしてる。近くの家に案内されるとパソコンでビデオチャットができる。やってみたけどインターネットには繋がらない。
295階で表示が止まると、エレベータのドアが開いて変な部屋に通された。
小さな部屋にテーブルと、椅子だけが置いてある。
三人を連れてきた助手が部屋から出て行くと、エレベータのドアがガシャンと閉まってもう動かない。
江実矢君がドアの周りを調べてみたけど、スイッチらしいものは見あたらない。
エレベータのドアは簡単には開かない仕組みらしい。
大きな窓から部屋の外が見えるけど、何だか変な風景だ。
薄暗くて紫色の街灯が所々に見える。
彩香ちゃんが恐る恐る、部屋のドアを開けてみた。
冷たい空気がドアの外から流れ込んできたけど、風でもないみたい。
ドアの外に見える灰色がかった街角には人影が見あたらない。
耳を澄ませてみてもシーンと静まりかえって物音もしない。
彩香ちゃんがまず先に外にでてみたけど、町並みが続いてるだけでどこなのか判らない。
広い通りには横断歩道があるけど車は一台も走っていない。
喫茶店らしいガラス張りの建物が見えたけど客は誰もいない。
大通りのすぐ正面に大きなネオンの看板が見えた。
「歌舞伎町」と大きなピンクのネオンサインが輝いてる。
看板の通りだとするとここは新宿の歌舞伎町なはず。
新宿の歌舞伎町には行ったことはないけど、真夜中でも大変な人が歩いてる繁華街だとお父さんが言ってた。
夜の歌舞伎町に人が誰もいないなんてはずはない。
ともかく駅にまで行けば、電車に乗れるはずだと彩香ちゃんが言い出した。
たしかに電車の駅があればそこからの帰り道は判る。
だけど歌舞伎町なんて行ったことがないから、どっちが駅なんだか判らない。
ともかく歩いて行けるところまで行ってみるしかない。
歌舞伎町の看板の下を通ってしばらく歩いてみたけどやっぱり様子が変だ。
両脇に並んだ建物は、ベニヤ板にペンキで描いたような壁でできてる。
洋服屋らしい店もあるけど、棚は全部空でスカートやブラウスのポスターが壁に貼ってあるだけだ。
しばらく道を歩くと十字路の先は行き止まりで高い壁が左右に広がってる。
左手も行き止まりなので、右手に進んでみると角にコンビニがある。
コンビニで店の人に聞けばここがどこだか判るはずと思って有紀はコンビニのドアを開けた。
店にいるはずの店員の姿はない。
それにこの店どう見たって変だ。
陳列してある商品はみんな、ポスターみたいに絵が描いてあるだけ。
週刊誌の棚も、飲み物の入った冷蔵庫もみな紙に書いた絵だけだ。
これって映画の撮影のセットなのかもしれないと有紀は思った。
コンビニの店を出てもう少し先まで行ってみると、今度はファミレスがあってその先には交番もある。
交番の隣はお寿司屋さん。
だけど誰も人はいない。
すぐ先にいってみるとストリップ劇場の看板が見えた。
男の人らしい姿が、ストリップ劇場の入り口から出てくるのが見えた。
服装は普通のサラリーマン風で、特に変な雰囲気ではないけど歩き方が随分とぎこちない。
きっとお酒でも飲んでるのに違いない。
「あの、すみません」と彩香ちゃんが男に声をかけた。
「はい、こんばんは、今日は良い天気ですね。俺、良一って言うんだ」と男が彩香ちゃんに顔を向けて返事をした。
こんな薄暗いのに良い天気だなんて変だと思って、彩香ちゃんは空の方向を見上げてみた。
夜空をよく見ると夜の町みたいだけど本物の空なんかじゃない。
少し高くなったドームがみたいな天井があって青く塗ってあるだけ。
所々に星らしい電球がついてる。
良一君が急にがしゃんと音をたてると、そのまま動かなくなった。
「どうしたんですか」と彩香ちゃんが心配そうに声を掛けたが返事がない。
下を向いた良一君の顔を見上げようとして、彩香ちゃんがしゃがみ込んだ。
すると今度は急に「あ、こんばんは、今日は良い天気ですね。俺、良一って言うんだ」とまたさっきと同じ台詞。
「これから一緒にお茶でも飲みませんか、いや、近くにケーキの美味しい店があるんだけど」
そう言うとまた良一君の身体がぴたりと止まって、今度は顔を上げて彩香ちゃんの顔を眺めてる様子。
「君可愛いね、長い髪がとてもチャーミングだし、それにスタイルも抜群だね、モデルさんみたい」と良一君が彩香ちゃんに話しかけてきた。
「彼氏いるのかな、よかったら僕と付き合わないか、お小遣い欲しいだろう」とまるでナンパみたいだ。
だけどまたぴたりと動きが止まると、今度は横を向いて有紀の方を向き直った。
「君も可愛いね、長い髪がとてもチャーミングだし、それにスタイルも抜群だね、モデルさんみたい」と同じ台詞を繰り返してる。
「あの、この町には、他に誰か居ないんですか」と彩香ちゃんが恐る恐る良一君に聞いてみた。
「他に誰か居る、他に誰かいない、他に誰か居る、他に誰か」と良一君が言い続けて止まらなくなった。
これはしょうがないと有紀が彩香ちゃんの手を引くと、江実矢君も彩香ちゃんの手を取った。
良一君からゆっくりと後ずさりしながら、離れると良一君はその場に立ち止まったまま動かない。
「ロボットだよ、きっと故障してるんだ」と江実矢君が彩香ちゃんに言うと彩香ちゃんも頷いて納得した顔。
「ロボットにナンパされるなんて、私初めてだわ」と彩香ちゃんがぽつりと言った。
確かにさっきの良一君はナンパするつもりで話しかけてきたのだと有紀も思った。
ナンパロボットなんてあるわけ無いけどこの怪しげなタコイーカ財団だったら作ってるかもしれない。
ロボットが上手く動くかどうか、ここでテストしてるんだと有紀はなんとなく思った。
所長が言っていたロボット実験場というのは此処のことだったんだ。
コンビニの棚に絵の書いた紙が貼ってあるのはそのせいらしい。
エレベータで随分下まで降りたからよっぽど深い地下にあるはず。
簡単には逃げ出せそうにない。
此処でこれからどうすればいいのか見当もつかない。
改めて町並みをよく見てみると電信柱には電線がないし、公園の木はお芝居の書き割りみたいにベニヤ板を切り抜いて絵を描いてあるだけ。
どうみても手抜きだ。
予算が足りなくて仕方なく手抜きをしたのかもしれないと思うと有紀はなんだかおかしくなって微笑みを浮かべた。
江実矢君も有紀に釣られて微笑んだけど、彩香ちゃんはまだ心配そうな顔付きのままだった。
もう少し先まで行ってみようと歩きだすと大きな壁にぶつかった。
この歌舞伎町は四方が壁で囲まれていて、それほど広い街ではないらしい。
壁一面にビルの絵が描いてあるけど門の絵もある、門の扉には取っ手がついてる。
試しに取っ手を廻して扉を押してみると、扉が動いた。
扉を押し開けてくぐり抜けると、こんどは目の前が急に明るくなった。
土色のグランドの先には時計台のあるレンガ造りの校舎らしい建物が見える。
右手には小さな教会みたいな建物があって、左手は体育館みたいな建物もある。
ともかく校舎に行ってみようと思って、グランドを横切って中庭に出てみるとすぐ近くから音楽が聞こえてきた。
軽快なリズムの演奏はまるでディスコかなんかのユーロビート風に聞こえる。
体育館の中から聞こえてくるみたいなので、三人で体育館の方に行ってみた。
入り口を入るとバスケットボールのコートが一面あって左手にちょっとだけ床が高くなった舞台が見える。
舞台の中央では真っ赤なチアリーディングの衣装を付けた女の子が、チアのダンスを繰り返してる。
音楽に合わせて、手と足を動かしてるだけでまるでロボットみたいな動き。
さっき歌舞伎町で出会った男はロボットみたいだったけど、この女の子もロボットに違いない。
不意に女の子が踊りを止めて、じっとしたまま三人を見つめた。
やや小柄で小さな顔は見た感じは江実矢君の幼友達の希美ちゃんによく似てる。
だけど希美ちゃんがこんな所にいる訳がない。
「あなたたち、新入生ね」と女の子が口を開いた。
なんて答えていいのか判らずに、三人は黙ったまま仕方なく軽く頷いた。
「入学式は明日よ」と女の子がまた話しかけてきた。
「そうなんですか」と彩香ちゃんが仕方なく答えると「間違えたのね、そうそう、あなた達はいるクラブはもう決めたの」と女の子が聞いてきた。
「まだですけど」と今度は有紀が答えると「じゃあ、チアリーディング部にしなさい、部員が足りなくて困ってたの」と女の子がまた言った。
もしかして他にもこの学校には女の子が居るのかもしれない。
「今部員は何人いるんですか」と有紀が聞いてみると「私一人なの」と女の子がちょっと寂しそうな顔をした。
江実矢君は話しの合間にも、女の子の横のラジカセが気になってるらしい。
さっきから音がうるさくて、近くで話しをしていてもとても聞こえないくらい。
江実矢君がラジカセを止めようとして指でスイッチを押そうとしたが動かない。
スイッチは絵が描いてあるだけで、どのボタンを押してもなにも起こらない。
女の子が江実矢君に気がついたのか、不意に江実矢君に駆け寄ってラジカセのボタンを押した。
江実矢君の手の上に、女の子の手がかさなると江実矢君が驚いて振り返ろうとした。
不意に江実矢君のほっぺたが、女の子の唇に触れて江実矢君は身体が震えちゃってる。
ラジカセのボタンは紙で出来ていて押しても動かない。
だけど女の子が軽く触っただけで不思議と音楽が止まると、急に体育館の中が静かになった。
女の子は江実矢君を後から抱きかかえたような格好で身体が凍りついたように動きが止まった。
彩香ちゃんが江実矢君に駆け寄ろうとしたとき、また不意に女の子の身体が動いた。
江実矢君はちょっと恥ずかしそうな顔で女の子から身体を離した。
女の子は何事も無かったみたいにがラジカセを掴んで持ち上げたけど、まるで紙で出来てるみたいに軽そう。
「そうだ、学校案内してあげるね、見たいでしょう」と女の子がまた口を開いた。
「私ね、沢田百合っていうの、みんな百合ちゃんて呼んでるのよ」と女の子が自己紹介をした。
百合ちゃんがラジカセをもって体育館のから校舎に三人を案内してくれたけどやっぱり変だ。
校舎の正面の時計台は絵に描いてあるだけで、針は動かないみたいだし、校庭の前の花壇もまるでお芝居の舞台みたいに花の絵を描いてある板を置いてあるだけ。
百合ちゃんに案内されて、教室に入ると正面に大きな黒板があって花文字で絵が描いてある。
「これ私が書いたのよ」と百合ちゃんが嬉しそうな顔で指さしたけど丸い花は見事に円形で手でなんかとても書けないほど正確な丸の形だ。
教室を見た後は、階段を上がって図書館に案内された。
図書館の入り口には大きな掲示板があってチアリーダー募集のポスターも貼ってある。
「ラブエンジェルズ」というのがチームの名前らしい。
「これも私が書いたのよ」と百合ちゃんがちょっと恥ずかしそうな顔をしてポスターの前を通り過ぎた。
手書きの文字は、わざと曲げて書いてあるらしくて何だか変な格好でloveのオーの文字がハート形になってる。
図書館には書架が左右二列に並んでいて、閲覧用の机も置いてある。
「ここで、何でも好きな本が読めるのよ」と百合ちゃんが嬉しそうな顔で言ったけどやっぱり変だ。
遠くから見ると確かに本が並んでるけど、近くで見ると本の絵が大きな板に貼ってあるだけ。
これじゃあ、読める訳がない。
図書館の隣はパソコンルームになってるけどやっぱりここも段ボールで作ったような箱にパソコンの絵が描いてあるだけ。
階段を降りて今度は隣の建物にいくと、しゃれた感じのカフェテリアになってる。
自動販売機も置いてあるけど、やはり箱に絵が描いてあるだけで飲み物は買えそうにない。
校舎の中を大体一回りして正面の玄関に戻ると「そうだ、みんなこれから私の家に遊びに来ない」と百合ちゃんが誘った。
「ね、いいでしょう、私の家すぐ近くだから」と百合ちゃんが言うので、他にいく場所もないので百合ちゃんの家にみんなで行くことになった。
百合ちゃんに案内されて校舎の裏手にある小さな門を出ると目の前は大きな公園。
大きな木がいっぱいあるけど、どれも芝居の大道具みたいに絵で描いてあるだけ。
中央に噴水があって、その周りにベンチが並んでる。
公園の出口をくぐると目の前に大通りがあって、左右に家が並んでる。
どの家もそっくり同じ作りで、壁の色が違うだけ。
一番手前にある家が百合ちゃんの家らしくて、百合ちゃんがドアを開けた。
家の中は結構広くて、廊下の先にリビングルームがある。
まるで新築の家みたいに家具らしい物はなにもない。
「こっちが私部屋なの」と百合ちゃんに案内されて玄関のすぐ横にあるドアを入った。
中は結構広くて、窓の外から大通りが見える。
百合ちゃんの部屋には大きなベッドが置いてあって、その隣は勉強机があって、横には本棚がある。
見た目は普通の女の子の勉強部屋みたい。
本棚はさっき図書館で見たのと同じに本の絵がポスターみたいに貼り付けてあるだけで、実際に本が置いてある訳じゃない。
百合ちゃんが勉強机の引き出しを開けると中からノートパソコンが出てきた。
勉強机に備え付けになってるらしくて、引き出しを開けるとそのまま使えるようになってる。
百合ちゃんがパソコンのスイッチを入れるとパソコンが起動した。
体育館で見たハリボテのラジカセと違って本物のパソコンだ。
「ねえ、友達紹介するね、私ねいつもここのビデオチャットで友達と話ししてるの」と言いながら百合ちゃんがパソコンの画面を見せてくれた。
「ねえ、友達できたんだ、今度の新入生でね、今日学校にきたのを偶然見つけたの」と百合ちゃんがマイクに向かってしゃべり出した。
「あ、ホント、凄いのね」とスピーカーから声が聞こえてきたけど、なんだか変だ。
パソコンの画面に映ってるのはテレビゲームの主人公みたいな女の子の絵。
しゃべりながら口が動いてるけど、パソコンに表示されてるグラフィックのアニメみたいな絵だ。
「この子ね、久美ちゃんていうの、チャットで知り合ったのよ、この子ね今度転校してくるの」と百合ちゃんが嬉しそうな顔で紹介してくれた。
テレビカメラの前に彩香ちゃんが顔をだして「初めまして、よろしくお願いします」と挨拶するとパソコンの画面の久美ちゃんの顔が微笑んだ。
「明日入学式で会いましょうね」と久美ちゃんに言われたけど、何て答えていいのか判らない。
「久美ちゃんね、お父さんがアメリカに仕事で行っていてね、今年やっと日本に帰ってきたの」と百合ちゃんが話してくれたけどそんな話しが本当の訳がない。
百合ちゃんはここで暮らしてるロボットらしくて、百合ちゃんからはたいした話しは聞けそうにない。
ともかくこっからどうやって出られるか調べるのが先だ。
もしかしてこのパソコンインターネットで繋がってるのかもしれない。
それなら、インターネットのメールで勇二君に知らせる事だってできるはず。
勇二君は時々ビデオチャットをしてるから運が良ければビデオチャットで勇二君と話しが出来るかもしれない。
「私にもビデオチャットやらせて貰えませんか」と彩香ちゃんが恐る恐る百合ちゃんに聞いてみた。
「うん、久美ちゃんも彩香ちゃんと話しがしたいらしいの」と百合ちゃんに言われて彩香ちゃんはびっくりした顔をしてる。
まだ三人の名前は知らせてないはずなのに百合ちゃんは知ってるみたい。
ロボットだからデータが最初からいれてあるらしい。
彩香ちゃんが最初にパソコンに向かうと久美ちゃんといろいろ話しをしながらインターネットのビデオチャットのサイトに繋ごうといろいろやってみた。
やっぱりこのパソコンは外の世界とは繋がっていないらしくて、しばらくやってみたけど結局彩香ちゃんは諦めたみたい。
パソコンの得意な江実矢君が彩香ちゃんと席を替わっていろいろやってみたけどやっぱり上手くいかない。
「ビデオチャットのやり方知らないなら私が教えて上げる」と百合ちゃんが言ってくれたので、江実矢君が百合ちゃんと席を替わった。
「久美ちゃんの他に誰かチャットの相手してくれる人が居ると良いんだけど、誰か男の人と話をしたいな」と彩香ちゃんがそれとなく話しを向けてみた。
すると百合ちゃんが「男の人とビデオチャットで何の話しがしたいのかしら。本当はナンパされたいんでしょう」と言い出したので有紀はびっくりした。
さっき歌舞伎町で男のロボットにナンパされたけど、今度はビデオチャットでナンパされたいとか百合ちゃんが言ってる。
このロボット実験場はロボット同士でナンパする場所なのかしらと有紀は呆れてしまった。
「ねえ久美ちゃんビデオチャットで男の人にナンパされたことある」と百合ちゃんが久美ちゃんとビデオチャットで話しを始めた。
「ううん、まだだけど、百合ちゃんは」と久美ちゃんが返事をしてきた。
「私もまだだけど、誰かいい男の人居たら紹介してね、私背が高くて格好いいひとがいいな。久美ちゃんはどう」と百合ちゃんが嬉しそうに答えてる。
ロボットの女の子同士でも恋バナは大好きらしい。
さっそく話しが盛り上がってるけど話題は男の子の話とナンパの話しばかり
百合ちゃんは久美ちゃんとのビデオチャットに夢中でもう三人の事は気にかけていない様子。
「ねえ、私達そろそろ帰りますね」と彩香ちゃんが百合ちゃんに声を掛けた。
百合ちゃんは彩香ちゃんの声に気が付かないらしくてパソコンの画面に向かったまま動かない。
彩香ちゃんが有紀に目で合図すると有紀は江実矢君の手を引っ張った。
気づかれないように静かに後ずさりすると、足音を立てないように静か百合ちゃんの部屋を出た。
大通りに出てみると、大きな家が何件か建ってるのが見えた。
どの家も無人らしくて、人の気配はない。
しばらく大通りを先に進んでみると、大きな壁にぶち当たった。
街の絵が描いてあるだけで、その先には進めない。
右手に進んでしばらくいくとまた突き当たり。
また右手に曲がってしばらく行くと、今度は学校の正門の前に出た。
「入学式」と書いた大きな立て看板が門の前に出ていて明日が入学式らしい。
通りの先はまた行き止まりになってるけど、壁に大きな門がある。
さっき歌舞伎町からこっちに来るときに通った門らしい。
ためしに門を開けてみると、暗い町並みが見えた。
門をくぐって辺りの様子を確かめてみると、やっぱりさっきの歌舞伎町だ。
この歌舞伎町は空全体がドーム型の天井になってるから、そんなに広いはずはない。
周りの壁にそってぐるっと一回りすれば一番最初に居た場所に戻れるはず。
ともかく最初にエレベータから出たときの部屋に戻ろうと三人で話しがまとまった。
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