飛竜誤誕顛末記

タクマ タク

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第一章 将軍様を街までお届け!

第14話 将軍様ご立腹

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朝から風呂に入れて、気分爽快だ。

やっぱり湯に浸かると疲れが取れるな。
体が少し軽くなった気がする。
バルギーにはちょっと怒られたけど、またいい場所を見つけたら風呂にしてもらおう。

今日も道は悪く相変わらず進みはゆっくりだが、風呂のおかげでもう少し頑張れそうだ。

『ケイタ、無理はダメだ』
バルギーに釘を刺されるが、俺としては余裕があるうちに少しでも進んでおきたい。
バルギーが言うには、まだあと3~4日は歩かないといけない様だから、先は長そうだ。

バルギーもだいぶ慣れてきたのか、適当に渡しておけばリヤカーの上で飯の準備をしてくれるようになった。
まぁ、缶詰開けたり水で戻しておいたりとか、そんなもんだけど。
休憩に入ってすぐ食べれるから、時間の節約にはなる。
バルギーは、歩いている最中もまめに水を渡してくれた。
厳つい見た目に反して、意外と甲斐甲斐しい。

風呂でサッパリした体は、歩いているうちにあっという間に汗だくで。
拭っても拭っても、汗が吹き出す。
バルギーに言われるまま水を飲んでいなかったら、脱水症状になってそうだな。

そうやってしばらく歩き続けたところで、俺はやらかした。
下り坂で足を滑らせたのだ。
『うあっ!』
俺がこけたらリヤカーが横転してしまうかもしれないと、咄嗟に足を踏ん張るが。
重さのあるリヤカーは止まらず、背中に激突してきて一瞬息が詰まった。
それでも、そのまま背中でリヤカーを支える様にして、坂道を滑り降りる。
下り坂自体はなだらかで短い距離だったので、リヤカーは直ぐに止まったが。
勢いのついた俺の体は、そのまま仰向けの状態でベシャリと倒れた。
無様だ。

『ケイタっ!大丈夫か!?』
珍しくバルギーが焦っている。
「いってぇ・・・『バルギー、大丈夫』」
腰をさすりながら、ヨタヨタと起き上がる。
結構リヤカーに衝撃を与えてしまったが、バルギーの傷に響かなかっただろうか。
『バルギー、ごめん、痛い?大丈夫?』
『痛いのはお前だろうっ。怪我をしていないか?』
バルギーは自力でリヤカーから降り、杖をつきながら急いで俺の側にやってきた。

バルギーが確認するように、俺の体をペタペタ触ってくる。
「いっ!」
大きな手が背中に触れたとき、びきりと痛みが走った。
『痛いのかっ?!見せなさい』
服を脱げという仕草をされたので、俺は上だけ脱いでバルギーに背中の状態を確認してもらった。
『・・折れたりはしていないな』
怪我の具合を確認するように、背骨・肋骨あたりをそっと押される。
痛いけど多分打撲くらいだな、この感じは。
腰から背中にかけてズキズキと痛むが、骨折程ヤバいものじゃない。
『内出血がひどい。しばらく腫れてしまうな』
俺よりも、バルギーのほうが痛そうな表情だ。
分かる。人の怪我ってめっちゃ痛そうに見えるよな。
とりあえず、救急ボックスに湿布が入ってたから、バルギーにそれを貼ってもらおう。

他にも怪我がないか、自分でも確認をする。
実は、さっきから手の平もめっちゃジンジンと痛いんだ。
足を滑らした時に咄嗟にリヤカーを強く握ったから、血豆が潰れたんだと思う。
そっと軍手から手を抜くと。
「・・・・わぉ」
思った以上の惨事だった。
血豆はことごとく潰れてるし、いつの間にか大きくなっていた水疱が潰れて皮がめくれてしまっている。
こりゃ、いてぇわけだわ。
両手とも、皮がずる剥けで血まみれだ。
どうしたもんかと手の平を見下ろしていたら、横から攫うように手首を掴み取られた。
『・・何だこれは』
バルギーが地を這うような低い声で唸った。
『これは、今転んだだけでできたものではないだろう。いつから、この状態だった?』
あれ、これまた俺怒られてる?
『何故早く言わなかった。何故、こんなになるまで放っておいた。無理はダメだと言っただろう』
『バルギー?私、大丈夫。痛い、少し』
『お前の大丈夫は聞き飽きた』
わー、怒ってる、怒ってる。

バルギーに、有無を言わさずリヤカーに座らされる。
荷台で大人しくて待っていたエリーが、心配そうに俺の側に駆け寄り、労るように擦り寄って来た。
エリー、いい子だなぁ。
俺がエリーに癒されている横で、バルギーが不機嫌な顔のまま救急ボックスを掴み取った。
バルギーの手当ての時にも使ったから、覚えてたみたいだな。
蓋を開け、俺に中身を見せてくる。
『どれが必要だ』
『バルギー、コレ』
消毒液とガーゼをさすと、バルギーにも使ったものだから直ぐに分かったようだ。

バルギーはガーゼに消毒液を染み込ませ、それを吊っている方の手で持つ。
俺の手首を掴み上げると、手の平の血を拭き取るようにそっとガーゼを押し付けた。
「ぎゃーーっっ!!沁みるーー!!」
『我慢しなさい。ここまで放っておいたお前が悪い』
消毒液が沁みて痛みに足をバタつかせるが、手首をがっちりと掴んだバルギーは容赦なく血を拭き取り、消毒していく。
痛いよー、痛いよー。
身悶える俺の横で、エリーも何故か一緒に身悶えていた。
多分、心配してくれているんだろう。
バルギーは消毒のすんだ手の平に新しいガーゼを当てると、包帯を取り出して綺麗に巻いてくれた。
包帯を巻く手つきは手慣れていて、俺が巻くよりもずっと綺麗で緩みもない。
もう片方の手も同じように消毒され、鮮やかな手つきであっという間に包帯が巻かれる。
ギュッと固定されると、ちょっと痛みがマシになったような気がした。

『バルギー、ありがとう』
バルギーはまだ少し怒った顔をしていたが、俺が礼を言うと酷く辛そうに表情を歪めた。
『・・お前には本当に感謝している。私の都合でケイタに大きな負担を強いている自覚もある。だが・・・だからと言って、ここまでは求めていない』
手を持ち上げられ、痛ましそうに包帯を撫でられる。
『頼むから、こんな傷を負うほどの我慢はしないでくれ』
そして、何を考えたのかバルギーは俺の手にそっと口付けを落とした。

『っひぇ!?』
余りに自然な動作で行われたそれに、思わず声がひっくり返った。
直ぐに離してくれたけど、包帯越しに感じたバルギーの唇と髭の感触はばっちり残っている。
手にキスとか、海外の映画とかでしか見た事ないわ。
しかも男が男にするとか!
え、この世界では普通なの?
あれか。痛いの痛いの飛んでけ~的な?
確かに、手の痛みも背中の痛みも一瞬ぶっ飛んだが。

渋いイケオジなバルギーだから、そんな気障な仕草も様になるが。
いかんせん、相手は俺だ。
キツい。絵面がキツい。
流石に無いわとドン引きする俺を見て、バルギーは少し項垂れた。
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