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第二章 将軍様のお家に居候!
第1話 焦燥
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**ヴァルグィ視点**
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
まただ。
また、ケイタに無理をさせた。
なぜ、私はいつもケイタの無理に気付けないのだろうか。
ケイタの身体から突然力が抜けて、地面に崩れ落ちる。
その姿を見た時、心臓を掴み上げられたような心地だった。
いつ命を落としてもおかしくない戦場を駆けている時でも、こんな恐怖は味わったことがない。
「ケイタっ!!」
「危ないっ」
「君!大丈夫か!」
ケイタの身体が地面にぶつかる前に、周りにいたイヴァンや兵達が身体を支えたが、ケイタが自分で起きあがろうとする気配はない。
「イヴァンっ!ケイタをこちらにっ」
身動き出来ない自分がもどかしい。
直ぐにイヴァンがケイタを抱き抱えてやってくる。
他の兵達が外套を外して地面に敷き、その上にケイタはそっと降ろされた。
「マルクっ!彼を」
イヴァンと共に砦からやって来ていた魔法医のマルクに、急いで命じる。
意識を失っているケイタは、今までに見せた事のない険しい表情をしていた。
息が荒く、眉間に深い皺を刻んでいる。
いつも笑っている彼は、こんな苦しそうな表情を見せたことはない。
マルクがケイタの様子を確認していく。
「恐らく疲労ですな。かなり熱が上がってますが、ゆっくり休ませれば大丈夫でしょう。怪我は治せますが、この熱は私ではどうしようも・・・」
「・・・そうか、本当に休ませれば大丈夫なのだな?」
思わず念を押すように聞くと、横でイヴァンが苦笑する気配がした。
「こちらの包帯は?」
マルクがケイタの手を取る。
「荷車を引きすぎて、皮膚が破れてしまったのだ」
「なるほど、ではこちらは治しましょう。・・・・あぁ、これはちょっと酷いですね」
包帯を外されたケイタの手は、相変わらず痛々しい状態だ。
あれからまた荷車を引かせてしまったせいだろう、包帯の下に挟んでいた布に血や体液が染み込んでいる。
すぐにマルクによって、医療魔法が施される。
傷ついた肉体が再生される際はそれなりの苦痛を伴うが、意識の無いケイタからは何の反応もなかった。
その姿に心が痛むが、必要以上に痛みを感じさせたくは無いので、意識の無い今はかえって治療するのには都合が良かったかもしれない。
「背中も怪我をしている。彼が起きる前に治してくれ」
「畏まりました。お前達、手伝ってくれ」
治療の為、兵達の手でケイタの服が脱がされる。
大人数の前で、ケイタの肌が晒される光景は非常にイラつくが、今は仕方がないと自分を抑えた。
「・・・将軍。この子供、証明印が・・・・」
何も着けていないケイタの首や手首を見て、マルクが困惑したように此方を伺う。
周りの兵やイヴァンからも、困惑した空気を感じた。
「あぁ・・・・彼は印を持っていない」
「持っていない?まさかそんな・・・他の場所に着けているのでは?」
イヴァンが信じられないと言ったように、ケイタの足首なども確認している。
「何処にも着けていない。私が既に確認済みだ」
「そんな・・・では、彼はいったいどうやって今まで・・・」
「・・その事だが・・・どうも彼は今まで外に出たことが無いようでな。信じられないが、神島も大竜も知らなかった」
「・・・・嘘でしょう?」
イヴァンや兵達の顔が驚愕に染まる。
「本当だ。・・・・予想だが、恐らく愛玩用の稚児として何処かに幽閉されていたのでは無いかと」
「・・・そう言うことですか。確かにそれなら印が無いことも、神島を知らないことも納得はできますが・・なんて残酷なことを」
イヴァンが傷ましそうにケイタに視線を向ける。
他の者達も、イヴァンと同じような同情的な目でケイタを見ていた。
「マルク、とにかく背中の治療を」
「あっ、失礼いたしました。直ぐに」
話に気を取られ、手が止まっていたマルクが慌てたように治療を開始した。
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まただ。
また、ケイタに無理をさせた。
なぜ、私はいつもケイタの無理に気付けないのだろうか。
ケイタの身体から突然力が抜けて、地面に崩れ落ちる。
その姿を見た時、心臓を掴み上げられたような心地だった。
いつ命を落としてもおかしくない戦場を駆けている時でも、こんな恐怖は味わったことがない。
「ケイタっ!!」
「危ないっ」
「君!大丈夫か!」
ケイタの身体が地面にぶつかる前に、周りにいたイヴァンや兵達が身体を支えたが、ケイタが自分で起きあがろうとする気配はない。
「イヴァンっ!ケイタをこちらにっ」
身動き出来ない自分がもどかしい。
直ぐにイヴァンがケイタを抱き抱えてやってくる。
他の兵達が外套を外して地面に敷き、その上にケイタはそっと降ろされた。
「マルクっ!彼を」
イヴァンと共に砦からやって来ていた魔法医のマルクに、急いで命じる。
意識を失っているケイタは、今までに見せた事のない険しい表情をしていた。
息が荒く、眉間に深い皺を刻んでいる。
いつも笑っている彼は、こんな苦しそうな表情を見せたことはない。
マルクがケイタの様子を確認していく。
「恐らく疲労ですな。かなり熱が上がってますが、ゆっくり休ませれば大丈夫でしょう。怪我は治せますが、この熱は私ではどうしようも・・・」
「・・・そうか、本当に休ませれば大丈夫なのだな?」
思わず念を押すように聞くと、横でイヴァンが苦笑する気配がした。
「こちらの包帯は?」
マルクがケイタの手を取る。
「荷車を引きすぎて、皮膚が破れてしまったのだ」
「なるほど、ではこちらは治しましょう。・・・・あぁ、これはちょっと酷いですね」
包帯を外されたケイタの手は、相変わらず痛々しい状態だ。
あれからまた荷車を引かせてしまったせいだろう、包帯の下に挟んでいた布に血や体液が染み込んでいる。
すぐにマルクによって、医療魔法が施される。
傷ついた肉体が再生される際はそれなりの苦痛を伴うが、意識の無いケイタからは何の反応もなかった。
その姿に心が痛むが、必要以上に痛みを感じさせたくは無いので、意識の無い今はかえって治療するのには都合が良かったかもしれない。
「背中も怪我をしている。彼が起きる前に治してくれ」
「畏まりました。お前達、手伝ってくれ」
治療の為、兵達の手でケイタの服が脱がされる。
大人数の前で、ケイタの肌が晒される光景は非常にイラつくが、今は仕方がないと自分を抑えた。
「・・・将軍。この子供、証明印が・・・・」
何も着けていないケイタの首や手首を見て、マルクが困惑したように此方を伺う。
周りの兵やイヴァンからも、困惑した空気を感じた。
「あぁ・・・・彼は印を持っていない」
「持っていない?まさかそんな・・・他の場所に着けているのでは?」
イヴァンが信じられないと言ったように、ケイタの足首なども確認している。
「何処にも着けていない。私が既に確認済みだ」
「そんな・・・では、彼はいったいどうやって今まで・・・」
「・・その事だが・・・どうも彼は今まで外に出たことが無いようでな。信じられないが、神島も大竜も知らなかった」
「・・・・嘘でしょう?」
イヴァンや兵達の顔が驚愕に染まる。
「本当だ。・・・・予想だが、恐らく愛玩用の稚児として何処かに幽閉されていたのでは無いかと」
「・・・そう言うことですか。確かにそれなら印が無いことも、神島を知らないことも納得はできますが・・なんて残酷なことを」
イヴァンが傷ましそうにケイタに視線を向ける。
他の者達も、イヴァンと同じような同情的な目でケイタを見ていた。
「マルク、とにかく背中の治療を」
「あっ、失礼いたしました。直ぐに」
話に気を取られ、手が止まっていたマルクが慌てたように治療を開始した。
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