飛竜誤誕顛末記

タクマ タク

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第二章 将軍様のお家に居候!

第2話 戻しはしない

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**ヴァルグィ視点**
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「それで、ヴァルグィ将軍はどうやって彼に出会ったのですか?」
ケイタが治療を受けている間、イヴァンや周りの兵士達に今までの経緯を掻い摘んで説明する。
「頭の良い子だ。自力で逃げ出してきたのだろう。だが、彼が何処から来たのかが分からない」
「確かに、服装も顔つきも見慣れないですね」
「不思議なものも沢山持っている。逃げる時に一緒に持ち出してきたのか・・・」

横に置いてある箱から、例の不思議な瓶を取り出してイヴァンに渡してやる。
「これは何ですか?とても・・・美しいですが、不思議な素材ですね。硝子では無いですよね・・」
私が初めてそれを見た時と同じ様に、イヴァンや兵達が物珍しげに瓶を眺め回す。
「飲水が入っている」
「飲水!?こんなに綺麗な入れ物に、わざわざ飲水を入れるのですか?中の水も妙に透き通っていますよ」
「あぁ、信じられないだろう。だがケイタには当たり前のものらしい。こんな物、今まで見た事あるか?」
「私は初めて見ますが、このように珍しいものは遠い異国のものでしょう」
「恐らくな」
イヴァンが返してきた瓶を受け取り、そっと箱に戻す。
入手方法は分からないが、これらはケイタの大切な財産だ。

「このような物は今までシラーブに入ってきたことは無いですが、もしや辺境の国が初めて交易を始めたのでは」
「あぁ、その可能性はある。ケイタの飼い主は異国の商人か・・・、行商中の慰みに彼も連れて来ていたのかもしれないな」
自分で言った言葉に反吐がでる。
ケイタを玩具にしていたヤツが、この国に来ていると思うと殺意が芽生える。
イヴァンも眉を顰めている。
「その途中で逃げて来たのですかね。そうでなければ、何も知らない彼が森の中を彷徨っているのはおかしいですからね」
「・・・こんなに珍しい商品だ。市に流れれば直ぐに話題になるだろう。イヴァン、市場の流通を監視しておけ。これを持ち込んだ商人がいたら直ぐに報告を」
「畏まりました。しかし、見つけた後はどうするので?・・・彼を返すのですか」
「まさか。そのつもりは無い」
イヴァンの言葉を、あり得ないと鼻で笑い飛ばす。
「そうですか、安心しました」
イヴァンは倫理観の強い男だし、子供好きだ。
ケイタの受けていた仕打ちは、この男には受け入れ難い嫌悪すべきことだろう。
「しかし、そうなると万一向こうがケイタを見つけた時、厄介では?彼の所有権を主張されたら、此方としても容易には拒否できませんよ」
「所有権?そんなものは無いだろう・・・どこにその証拠がある。彼にはなんの印も無いんだぞ」
見たことも無い忌々しい存在だが、ケイタへの仕打ちが仇になっている事に思わずほくそ笑む。
なんの印も無いと言うことは所有印も無いと言うことだ。
所有印が無ければ、誰も彼の所有権を主張する事は出来ない。
「あぁ、確かにそうですね」
私の言葉に、イヴァンも満足そうに髭を撫でている。
「ケイタは私が保護する。屋敷に戻り次第、我が家の食客として印を与える予定だ」
「それが良いでしょう。将軍の保護でしたら、彼の安全は約束されたようなものですから」

「将軍、治療が終わりました。後は熱が下がるのを待つだけです」
マルクが治療を終え、ケイタは元通り服を着せられている。
「ご苦労。ケイタは此方に」
「いえ、それでは将軍の傷に響きます。兵に運ばせましょう」
マルクが私の足の怪我を示し、兵達もそのように動き出す。
「かまわない。いいから、こちらに」
つい苛立って強く言うと、兵達が困ったようにイヴァンを見た。
私に意見できない兵士達の代わりに、イヴァンが仕方なさそうに口を開く。
「ヴァルグィ将軍、荷台の上は狭いですから。ケイタを乗せる場所は無いですよ」
「私が抱えれば問題無いだろう」
「珍しいですね。貴方がそんな大人気ないことを言うなんて」
困ったように苦笑を溢される。
「だけど、ダメですよ。部下達を困らせないでください。彼は私が運びましょう」
イヴァンはさっさとケイタを抱き上げて、歩き出してしまった。
「ふん・・・」
面白くないが年若い兵に触らせるよりはマシなので、私は仕方なく引き下がる事にした。
己の怪我が本当に忌々しい。
さっさと治療を終えなくては。

「将軍、荷台に走り茸が紛れてますよ」
砦に向かう途中、周りを囲んでいた兵士が荷物の隙間に隠れていた茸に気付いたようで、ソレを摘み上げる。
私も、それの存在をすっかり忘れていた。
大勢の人間に囲まれ、隠れていたようだ。

震えるキノコを投げ捨てようとした兵士を、咄嗟に止める。
「待てっ。ソレを乱暴に扱うな」
私の言葉に、周りの者達が不可解そうにしている。
「家畜の餌か何かに使う予定でしたか?」
「・・・いや・・・ケイタが可愛がってるんだ」
「・・・・走り茸をですか?」
兵士が理解できないと言った感じに、やや困惑気味に聞き返してくる。
当たり前だ。走り茸を可愛がる者など聞いた事が無い。
自分で言ってても意味が分からないが、実際ケイタはこの茸をえらく可愛がっている。
コレが居なくなったら、ケイタが悲しむだろう。
「ソレも、ケイタに懐いている」
「懐くとは?」
イヴァンが横で不思議そうな表情をした。
見せるのが早いだろうと、兵士から茸を取り戻しイヴァンの腕の中にいるケイタの上に下ろす。
茸はイヴァンに怯えながらも、心配そうにケイタの顔に駆け寄り身体を揺らしながら張り付いた。
その様子に、イヴァンが目を丸くしている。
周りの兵士達も同じだ。
「茸が人間に懐くなど知りませんでしたな・・・。そもそも茸に感情なぞあるのですか?」
「そんなこと、私が知るわけ無かろう。とにかく、ケイタが大切にしているからソレには手を出すな」
ケイタの為に、周りの兵士達へ釘を刺しておく。
走り茸なぞ普通は無視するか、邪魔であれば蹴飛ばすくらいの存在だ。
砦の中を彷徨いていたら、あっという間に踏み潰されてしまう。
ケイタが泣くところは幸いまだ見てないが、茸が潰されて死んだら涙を流すかもしれない。
どんなくだらない理由であろうと、ケイタの悲しむ姿は見たくない。

「茸を可愛がるとは、面白い子供ですね」
「一緒にいると飽きないぞ。恐ろしく振り回される」
私の言葉にイヴァンが面白そうに笑い声をあげた。
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