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11.へんじがない。ただの「中世ヨーロッパ」のようだ。
しおりを挟む◆前回から引き続き、ミナァート王国・中央通りにある商人の店(兼住居)――
女勇者「どうして、窓ガラスが錬金術の賜物なんですか?」
男商人「うむ。異世界では錬金術による量産化で窓ガラスが普及しているが
――窓ガラスに使われている「無色透明の板状ガラス」ってのは、
実はかなりの高等技術なんだ。地球でも、建築用に量産されて一般
家庭まで普及したのは「近代(20世紀)」に入ってからのことだ」
女勇者「えぇーそんな最近なんですか!? 板ガラスとか「砂」を焼いた後
6ブロック並べて工作すれば簡単に作れるのに……」
男商人「マイ○クラフトじゃないからな?」
男商人「そも、ガラスの歴史はかなり古くて、紀元前数千年の「四大文明」
などでガラス工芸が始まったらしい。しかし、当時のガラスは量産
する技法もなかったので、生活用品ではなく高級装飾品だったそう
だ。ガラス工芸品が普及したのは、ローマ帝国時代(古代)に「吹
きガラス技法」が発明されてからのことだ」
女勇者「あぁー私も体験教室で「吹きガラス」やったことありますよ。鉄パ
イプの先端に溶かしたガラスを水飴っぽく巻き取って、息を吹き
込みながら風船みたいにふくらませるやつだよね?」
男商人「おう、それそれ。この技法は現代でも使用されるガラス製造の基本
技法で、この技術革命によってガラスが安価に量産できるようにな
り、「ローマングラス」と呼ばれるガラス器類が爆発的に普及した
んだ。この頃には、不透明ながら窓ガラスもあったらしい」
女勇者「もう窓ガラスが出てくるんだ、さすがはローマ帝国!」
男商人「ところが女勇者君、残念なことにローマ帝国滅亡(古代末期)と共
にこれらの技法は衰退してしまうんだ」
女勇者「むぐぐ、この女勇者には夢がある~」
男商人「中世になると、ガラス工芸品は贅沢品に逆戻りだな。一方、着色ガ
ラスの小片を結合して絵柄を表現する「ステンドグラス技術」が確
立されると、教会堂などのゴシック建築の装飾窓として大流行する」
女勇者「おぉ~やっぱり「中世ヨーロッパの教会」と言えば、綺麗な装飾窓
ですよね! そう言えば、さっき商人は「無色透明ガラスの製造は
難しい」と言ってたけど、着色ガラスの方が難しいんじゃないの?」
男商人「昔のラムネ瓶を想像してほしいけど、ガラス溶解時に不純物(鉄分)
が混ざると薄緑色になってしまうんだ。不純物を除去した「無色透
明ガラス」が登場するのはもう少し先(中世後期~近世の頃)だな」
女勇者「なるほど、たしかに日本でよく見る窓ガラスも縁部分は薄緑色だね」
男商人「もちろん「ガラスの着色加工」も単純じゃないぞ。ガラス溶解時に
着色剤(金属酸化物)を混ぜて化学反応を起こすが、この時に酸素
があると「酸化」が起きて寒色系に、酸素が少ないと「還元」が起
きて暖色系になる。他にも着色剤の種類や温度設定の組合せで発色
は変わるんだ」
女勇者「それは大変そうだぁー…さっきのラムネ瓶の話から考えると、寒色
系の方が簡単なのかな?」
男商人「お、鋭いな。たしかに暖色系の発色加工は難しくて「青>紫>赤」
の順番に発色安定が良い。ひと昔前のガラス工芸品だと、流通量の
多い青・紫色が安価で、赤色は珍しくて高価だったらしい」
女勇者「ありゃ、ガラスにも階級社会があるとは世知辛い……」
男商人「真っ赤なガラスを作る場合とか、着色剤に「金」を使用するもんだ
から超高級品らしいぞ?」
女勇者「うぇー金ですか!?」($△$)スゴイナ…。
男商人「中世後期~近世になると、ヴェネツィア共和国の興した「ヴェネ
ツィアン・グラス」が一世を風靡し、富裕層の室内装飾品として
高級ガラス工芸品が愛用される」
女勇者「おぉー、ガラス工芸品が「社会的地位の象徴」になるんですね」
男商人「うむ。この頃は食器類・装飾照明・窓ガラスなどの多様なガラス
工芸品が作られたが、その中でも水銀を使用した「ガラス鏡」は
世界中で大流行した。観光名所となっている仏国ベルサイユ宮殿
の「鏡の間」もこの時代に作られたんだ」
女勇者「そっか、言われてみれば「鏡」もガラス製だ……ガラスって万能
ですね!」
男商人「面白い話では、水晶にように輝く高品位の無色透明ガラス技法が
確立されると、その極薄&透明の装飾美から「毒を入れたら割れ
る」という噂が流れ、王侯貴族の間で人気を集めたらしい」
女勇者「ガラスは噂話まで何かオシャレですね~。それにしても、水の都
のガラス工房街とか素敵だな~行ってみたいな~」
男商人「似たような街なら異世界にもあるぞ。エルフが水先案内人やって
るんだ。今度連れて行ってやるよ」
女勇者「はひーっ、水先案内人の小妖精がいるんですか!? この異世界
は奇跡で出来てるんですねぇー…」
男商人「はいそこ、恥ずかしいセリフ禁止」
女勇者「えぇー」( ̄□ ̄*)
男商人「そして近代(20世紀)半ば……高品質の板ガラスを安価に量産
できる「フロート技法」が発明されたことで、やっと建築利用の
窓ガラスが一般家庭まで普及したわけだ」
女勇者「と言うことは、やっぱりその「フロート技法」がすっごいの?」
男商人「うむ。それまでは融解ガラスをローラーで引き伸ばしてから表面
を研磨する製造法が主流で、生産性・品質ともに良くなかったん
だ。一方、「フロート技法」は別の溶解金属の表面に溶解ガラス
を流し込む。イメージとしては「水の表面に油を浮べる」感じか
な? この技法の発明により、面積自由・研磨不要の板ガラスが
量産可能になったんだ。20世紀最大の発明のひとつだな」
女勇者「たしかに今さら「窓ガラスのない生活」とか想像できませんよね。
そう言えば、さっき商人は「中世後期には室内装飾品として窓ガ
ラスが富裕層で愛用された」と言ってましたけど、一般家庭の窓
はどうしてたの?」
男商人「扉・板戸に菱形などの穴を開け、薄い羊皮紙を貼ったらしいぞ?」
女勇者「わあ、それって日本の「障子」と同じですね!」
男商人「国や文化が違っても、同じ手法に至るのは面白いよな。ちなみに
羊皮紙が買えなかった下流層では板戸などに穴を開け、寒い季節
になると穴を蓋で閉じたらしい」
女勇者「えぇー、それだと冬は昼間でも家の中は真っ暗ですね?」
男商人「そうだな。だから、異世界で窓ガラスが普及していることに感謝
しないとな?」
女勇者「ねぇねぇ商人さん。ところでこの異世界『リーフエンド』の文明
水準は、結局どの程度なのかな? 女勇者は何となく「異世界」
作品の王道「中世ヨーロッパ程度」に考えてたんだけど?」
男商人「ふむ。それではまず世界史の「時代区分」について説明しようか」
◇世界史の時代区分◇ ※諸説あります!
【古代】~西暦5世紀。
無階級社会の【原始】に対して「階級社会(古代奴隷制)」が発展した時代。
(古代ギリシャ~西ローマ帝国の崩壊まで。鉄器があったり、なかったり…)
【中世】西暦5~15世紀。
「封建制社会」が成立した時代。(→王様、領主、騎士などが登場するよ☆)
(後期には、火薬製造の発展による「銃火器」も登場…)
【近世】西暦16~19世紀。
「大航海時代」の到来。中央集権化が進み、大陸間の世界的交流が生まれる。
【近代】西暦19~20世紀。
仏国の市民革命:教皇や皇帝ではなく「市民」が主体の「主権国家」が成立。
英国の産業革命:資本主義の登場。
女勇者「わ、これを見ると西暦の半分(1千年)は「中世」なんですね?」
男商人「中世も後期になると、英国などで火薬製造技術が発達して「銃火
器類」が登場するぞ?」
女勇者「うぅ~ん、日本の読者が想像する「中世」は「銃火器類」が登場
しない「中世の前期~中期頃」と言った感じですかね?」
男商人「そうかもな。よく日本の「異世界」作品の文明水準が「中世ヨー
ロッパ程度」と表現されるのは――王様が統治する国を舞台に、
騎士が登場して、領主と農夫による牧歌的風景があって、貴族や
教会や国家間の争いが頻発する「封建制社会」が、『剣と魔法の
異世界』を描く上で親和性が高いからだろうな」
女勇者「なるほどですね~。まあ、あとは女勇者みたいにゲームや小説を
読むうちに「異世界の文明水準=中世ヨーロッパぐらい」と洗脳
された感もありますけど!」
男商人「たしかに作者側としては楽だよな。「中世ヨーロッパ程度」って
説明するだけで、すぐに読者は世界観を想像してくれる」
女勇者「で、この異世界『リーフエンド』の文明水準は?」
男商人「中世ヨーロッパ程度です」
女勇者「にゃはは、商人さんずっこ~い」
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