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五(立花視点)
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「あ、そうか口がふさがってたんだったね」
目を覚ますと給食室にいた。 体は縛り付けられ、 まな板の上に置かれていたのだ。 まな板は 何枚か重ねられていた。
「ここはあまり寝心地が良いとは言えないね」
「へーそんなこと言う余裕あるの」
板前は 感心した素振りで言った。
「注文はどれだけ来てる?」
彼女は奥へ声をかけた。
「大分きてるじゃないか」
それはつまり私を食べる 人間の量だろう。
「麻酔をかけてくれないの?」
「それだとまずくなっちまう」
彼女は それが当然だというように呟いた。巨大な刀を振り上げた。 そうして私へ 振り下ろした。 世界は暗転した。
「 停電かい?」
彼女の声が耳に入る。 地獄でも彼女と一緒にいなければならないのだろうか。
「 全く。 シャリが冷めるじゃないか」
彼女は文句を言いながら私の方から遠ざかっていった。 どうやら一流の寿司職人である彼女は私を殺すより、 米の温度の方が重要らしい。 私は今週の力を込めて身をおこし、 口で縄を切った。 幸いにも停電が起きていたため、 彼女には気づかれていないようだ。 私は縄を抜けて、 そろそろと出口に向かって歩いていった。 彼女はまた何やら文句を言いながら 炊飯器の様子を見ている。 廊下へ 出ようとドアを開けたところで、 ドアがあかないことに気づいた。 私は気づくべきだった先ほど彼女は誰かに話しかけていた。 もう一人部屋にいるのだ。
「 おーい、大丈夫ですかぁ?」
廊下から間の抜けた声が響いてきた。 副校長だ。 私は声を上げようとしたが、 もうひとりの何者かに 突き飛ばされた。 2人が慌てて部屋を出て行く物音がした。
「 ここです」
私は突き飛ばされて 床に打ち付けられた 衝撃に耐えながら、 声を出した。
「 ああよかった。 急に停電になったんで、 大丈夫かなと思いまして」
副校長は、懐中電灯で私を照らしてくれた。 彼に手を借りて、私は身を起こした。
「 さっき誰から電話があったんですか?」
「近隣の住民です。 小学校の 地価が浸水しているようだ。 だから様子を見に行ってくれって」
「 本当にこの事件を解決したいと思ってたら、私の言うことを直ちにやってください」
副校長は驚いて目を挙げた。 普段は穏やかな暮らしをしているのだろう。このようなものに慣れていないみたいだった。 しかし私は不愉快だった。 誰かに命を弄ばれ、 今まさに喰道楽たちの口に運ばれようとしていたのだ。
目を覚ますと給食室にいた。 体は縛り付けられ、 まな板の上に置かれていたのだ。 まな板は 何枚か重ねられていた。
「ここはあまり寝心地が良いとは言えないね」
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板前は 感心した素振りで言った。
「注文はどれだけ来てる?」
彼女は奥へ声をかけた。
「大分きてるじゃないか」
それはつまり私を食べる 人間の量だろう。
「麻酔をかけてくれないの?」
「それだとまずくなっちまう」
彼女は それが当然だというように呟いた。巨大な刀を振り上げた。 そうして私へ 振り下ろした。 世界は暗転した。
「 停電かい?」
彼女の声が耳に入る。 地獄でも彼女と一緒にいなければならないのだろうか。
「 全く。 シャリが冷めるじゃないか」
彼女は文句を言いながら私の方から遠ざかっていった。 どうやら一流の寿司職人である彼女は私を殺すより、 米の温度の方が重要らしい。 私は今週の力を込めて身をおこし、 口で縄を切った。 幸いにも停電が起きていたため、 彼女には気づかれていないようだ。 私は縄を抜けて、 そろそろと出口に向かって歩いていった。 彼女はまた何やら文句を言いながら 炊飯器の様子を見ている。 廊下へ 出ようとドアを開けたところで、 ドアがあかないことに気づいた。 私は気づくべきだった先ほど彼女は誰かに話しかけていた。 もう一人部屋にいるのだ。
「 おーい、大丈夫ですかぁ?」
廊下から間の抜けた声が響いてきた。 副校長だ。 私は声を上げようとしたが、 もうひとりの何者かに 突き飛ばされた。 2人が慌てて部屋を出て行く物音がした。
「 ここです」
私は突き飛ばされて 床に打ち付けられた 衝撃に耐えながら、 声を出した。
「 ああよかった。 急に停電になったんで、 大丈夫かなと思いまして」
副校長は、懐中電灯で私を照らしてくれた。 彼に手を借りて、私は身を起こした。
「 さっき誰から電話があったんですか?」
「近隣の住民です。 小学校の 地価が浸水しているようだ。 だから様子を見に行ってくれって」
「 本当にこの事件を解決したいと思ってたら、私の言うことを直ちにやってください」
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