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第一章

6 やはり家族は変わらない

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 それから少し話をして「ではまた明日」と別れた。公爵様が帰ったあとお父様たちには質問攻めにされたけど、契約結婚とは言っていない。お父様は借金を返してくれるならと喜んで了承した。お継母様は公爵様の結婚相手はソフィアにこそふさわしいのになんで貴女なんかが!とかなんとか言ってたかな。

 なので、「そんなこと言われましてもわたしには分かりかねますわ。何でしたらお継母様が直接聞いてみてはいかがでしょう?」と伝えてみた。わたしとしても話せないことがあるので、知りたいことがあるなら本人に直接聞けと、公爵様に丸投げした形だね。これくらいの意趣返しは許されると思いますよ。

 お姉様はというとお継母様のように騒ぐか罵倒されるかと思ったけど意外に落ち着いており、「そう」とだけ言っていた。公爵様はお姉様の判断基準にのだろう。お継母様のことも何とかしてくれるようだったのでその場は彼女に任せてわたしは退室した。お姉様は意外と謎なところが多い。お父様やお継母様より全然マシだけどね。それに腹違いでも姉だからお継母様はともかく実の父親であるお父様よりも大切に思ってる。

 それにわたしは、大好きなお母様を平気で裏切ったお父様のことが嫌いだしね。



「それで、私はお供してもよろしいのでしょうか?」
「ついてきてくれないの?」

 わたしとしては着いてきてもらわないと困る。リジーはリーシャがロードだと知る、数少ないうちの一人でもあるのだから。

 それにリジーは無理にでも着いてこようとするでしょ。最悪、公爵家で雇われでもして。

「いえ、リーシャ様がだめと言われましても着いていくつもりでしたよ。私よりリーシャ様のお役に立てる者はいないと自負しておりますからね」

 やっぱりそうだった。思った通りのことを言っていると、少し笑ってしまった。たしかにリジーがいたらなんでも出来そうなくらいリジーは万能だしね。ほんと自慢の侍女だよ。

 そうと決まれば後は早かった。わたしが最後の仕事として書類の引き継ぎなどをしている間にリジーは必要なものをさっさと纏めてしまう。リーシャのように仕事が早く正確な主人の従者は、同じく優秀な人物なのだろう。優秀な人間は仕える相手を選べると言うがその通りだ。

「三年後にはここに戻ってくるし、それまでにお父様たちをどうするかも考えないといけないわ。借金の件は解決したし、陛下がご協力くださるかな?」
「リーシャ様のお願いでしたら喜んで聞いてくださるのではありませんか?元々正統な後継者はリーシャ様ですし、ここ数年領地運営をしてきたのは誰か、口にこそ出しませんけどみんな知っていますからね」

 陛下たち皇族に限らず貴族たちのことを言っているんだろうね。わたしの有り余っていた私財やここ数年の分まで使い切るとはどれほど領地を放置すれば気が済むのか。おかげ様で今のわたしは一文無しですよ。人のお金を勝手に使っているようなものなんですよね、これは。

 出所を聞かれたところで答えられないから黙っていたけど、あの人たちほんとに好き勝手しすぎ。

「まあしばらくはゆっくり出来そうだし、だらだらしようかな」
「お疲れなのは分かりますし、休んでいただきたくもありますが……リーシャ様にだらだらなんてことできますか?」
「ロードの仕事はちゃんとするよ?」

 そういうことではなくてですね…と額に手を当てて苦い顔をするリジーだが、リーシャにはハッキリ言った方がいい。リジーが言いたいことが分からなかったから、どういうこと?と聞くと、

「その時になってみれば分かるんじゃないですか?」

 とのことだ。質問にぐらいしっかり答えてほしいよね。「侍女のあなたは主人であるわたしの言うことにだけ答えなさい!使用人のあなたに拒否権なんてないのよ!」みたいな悪役っぽいことでも言ってみようか?悪役みたいって言ってもほんとのことなんだけども。
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