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本編
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その後美術部で有意義な時間を過ごした後、結局選んだ部活は写真部だった。
神崎悠という人の作品を観たいのも山々だが、部に入ってしまうと私も作品を作らなければならない。自分は器用な方だとは思っているが、人を感動させるような物を創り出す技術は持ち合わせていない。
そういうわけで、美術部を見学しに来やすい写真部にしたのだ。もちろん、写真に興味がない訳ではない!
教室で取り巻きの皆様と合流した後、それぞれ決めた部活を教えあうと、やはり手芸部や製菓部、または体育会系部活動のマネージャーが多いようだ。
写真部にしたと伝えると「よくあちらに入る勇気がありますわね!?」とわりとガチな様子で褒められた(多分)。
翌日の最後のコマは委員会決め。
この時間で委員を決め、放課後仕事を教わったり、説明会に行ったり、という流れだ。
まず学級委員長は取り巻きの1人が任命された。(実は前日委員長にならないかと担任に言われたが、祖父のこともあり色々噂されたくないのでお断りした)
意外となかなか候補がいないのが図書委員。昼休みと放課後が潰れると考えたら当たり前かもしれないが。
「では、私が図書委員に立候補しても宜しいでしょうか?」
枠は1人だし、昼休みと放課後は取り巻きから解放される……!と下心付きで手をあげた。
他になりたい人がいないようで、図書委員は私に即決した。
担任が私のもとに来て、1枚のプリントを渡した。
「図書委員会担当の先生が今日はいらっしゃらないので、このプリントに従って早速今日から仕事にあたって欲しいとのことだよ。分からないことは古株の先輩に聞けとのお達しだ」
小太りの彼はよいせよいせと席の合間を縫って戻っていった。
ーーーーーーーーーー
図書委員(普通科1組)の仕事
月曜日:中央図書館
火曜日:中央図書館
水曜日:普通科分館
木曜日:普通科分館
金曜日:離館(放課後のみ)
・本の整理、簡単な清掃、貸出・返却業務
・離館の割り当ては2人ずつ(利用者少ないため)
・昼休みは12:35~13:05
・放課後は16:30~17:30
分からないことがあったら図書館司書または図書委員会担当・小渕まで!
ーーーーーーーーーー
今日は金曜日か。校内MAPを見ると……芸術科棟の奥を左に曲がってまっすぐ……んん??
離館遠いな。でも行くしかないか…
というわけで放課後。
16:30スタートだが道に迷いまくって到着したのは16:35なので5分の遅刻だ。
先輩って怖い人かな……?とりあえず入ったらすぐあやまろう。
離館はくすんだ灰色のコンクリート製のような感じで、どこかの交番みたいな形だ。
重い扉を引くと、いい匂いがフワッと舞った。
何の匂いかな、と目の前のカウンターに座った人を見た瞬間
ドクン、
身体に電気のような衝撃が走った。
ドクドクドクと心臓がうるさい。
呼吸が乱れる。
下腹部に熱が溜まってくる。
青年から目を離せない。
青年も目を見開いてこちらを凝視している。
サラサラの黒髪は前髪が少し長めで、切れ長の目は涼しげで青みがかっている。
ーーーーーまさかーーーーー
「運命の、つが「違う」
私の発言に被せて青年が口を開いた。
「俺は、つがいなんて要らない」
キッとこちらを睨み付けた彼の目には、憎悪と、少しの熱が見え隠れしていた。
「……ということは、お前はαか。誰が好き好んでαと仲良く図書委員なんてするかよ」
そう言って彼はカウンターの席から立ち上がり、他に出口がないのでこちらへ向かってくる。
「あのっ」
手を伸ばすが
「触るな!」パシッ
きゃ、と私はよろめいて尻もちをついてしまった。
その瞬間青年は「しまった」という顔をしたが、また睨み付ける表情に変わり、
「悪いが、俺は帰る」
と言い残して去ろうとした。
「あのっ」
そもそも
「図書委員の仕事がまだ分かりません!あと、遅れてすみませんでした!!迷いました!!!」
神崎悠という人の作品を観たいのも山々だが、部に入ってしまうと私も作品を作らなければならない。自分は器用な方だとは思っているが、人を感動させるような物を創り出す技術は持ち合わせていない。
そういうわけで、美術部を見学しに来やすい写真部にしたのだ。もちろん、写真に興味がない訳ではない!
教室で取り巻きの皆様と合流した後、それぞれ決めた部活を教えあうと、やはり手芸部や製菓部、または体育会系部活動のマネージャーが多いようだ。
写真部にしたと伝えると「よくあちらに入る勇気がありますわね!?」とわりとガチな様子で褒められた(多分)。
翌日の最後のコマは委員会決め。
この時間で委員を決め、放課後仕事を教わったり、説明会に行ったり、という流れだ。
まず学級委員長は取り巻きの1人が任命された。(実は前日委員長にならないかと担任に言われたが、祖父のこともあり色々噂されたくないのでお断りした)
意外となかなか候補がいないのが図書委員。昼休みと放課後が潰れると考えたら当たり前かもしれないが。
「では、私が図書委員に立候補しても宜しいでしょうか?」
枠は1人だし、昼休みと放課後は取り巻きから解放される……!と下心付きで手をあげた。
他になりたい人がいないようで、図書委員は私に即決した。
担任が私のもとに来て、1枚のプリントを渡した。
「図書委員会担当の先生が今日はいらっしゃらないので、このプリントに従って早速今日から仕事にあたって欲しいとのことだよ。分からないことは古株の先輩に聞けとのお達しだ」
小太りの彼はよいせよいせと席の合間を縫って戻っていった。
ーーーーーーーーーー
図書委員(普通科1組)の仕事
月曜日:中央図書館
火曜日:中央図書館
水曜日:普通科分館
木曜日:普通科分館
金曜日:離館(放課後のみ)
・本の整理、簡単な清掃、貸出・返却業務
・離館の割り当ては2人ずつ(利用者少ないため)
・昼休みは12:35~13:05
・放課後は16:30~17:30
分からないことがあったら図書館司書または図書委員会担当・小渕まで!
ーーーーーーーーーー
今日は金曜日か。校内MAPを見ると……芸術科棟の奥を左に曲がってまっすぐ……んん??
離館遠いな。でも行くしかないか…
というわけで放課後。
16:30スタートだが道に迷いまくって到着したのは16:35なので5分の遅刻だ。
先輩って怖い人かな……?とりあえず入ったらすぐあやまろう。
離館はくすんだ灰色のコンクリート製のような感じで、どこかの交番みたいな形だ。
重い扉を引くと、いい匂いがフワッと舞った。
何の匂いかな、と目の前のカウンターに座った人を見た瞬間
ドクン、
身体に電気のような衝撃が走った。
ドクドクドクと心臓がうるさい。
呼吸が乱れる。
下腹部に熱が溜まってくる。
青年から目を離せない。
青年も目を見開いてこちらを凝視している。
サラサラの黒髪は前髪が少し長めで、切れ長の目は涼しげで青みがかっている。
ーーーーーまさかーーーーー
「運命の、つが「違う」
私の発言に被せて青年が口を開いた。
「俺は、つがいなんて要らない」
キッとこちらを睨み付けた彼の目には、憎悪と、少しの熱が見え隠れしていた。
「……ということは、お前はαか。誰が好き好んでαと仲良く図書委員なんてするかよ」
そう言って彼はカウンターの席から立ち上がり、他に出口がないのでこちらへ向かってくる。
「あのっ」
手を伸ばすが
「触るな!」パシッ
きゃ、と私はよろめいて尻もちをついてしまった。
その瞬間青年は「しまった」という顔をしたが、また睨み付ける表情に変わり、
「悪いが、俺は帰る」
と言い残して去ろうとした。
「あのっ」
そもそも
「図書委員の仕事がまだ分かりません!あと、遅れてすみませんでした!!迷いました!!!」
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