【R18】【本編完結済】ロールキャベツ系彼女とツンデレ(後々)彼氏

米粉パン

文字の大きさ
3 / 43
本編

3

しおりを挟む
芸術科棟に近づくにつれ、雰囲気が変わっていく。


今日は晴天なので、棟の周りに植えられた並木の木陰が心地よい。このままお昼寝できそう。


芸術科棟は赤レンガを基調として蔦に覆われている趣のあるデザインだった。脇にゴロゴロと彫刻やら石像やら油絵(多分乾かしている)やらが転がっている。

この棟の中には吹奏楽部、オーケストラ部、合唱部、美術部、写真部がある。

一定数これらの部活に入りたい人もいるのではと思うかもしれないが、所謂“本職”の人が多いのだ。つまり、芸術科の音楽コースの方々は吹奏楽部、オーケストラ部、合唱部に自然と所属、絵画コース・彫刻コースは美術部に自然と所属…という感じなので、他の科から入部するのは相当自信のある人かな、と見られる。

その対策か、他の科用に器楽部、軽音部などが存在するのだ。




今吹奏楽部、オーケストラ部、合唱部は学園ホールで披露演奏中なので、ここは人がまばらで静かだ。


芸術科棟に入った私は、空調が適温なのに満足してわざとゆっくり回った。


写真部には普通科で見た事のあるような人もいたが、美術部の方は芸術科の生徒のみであった。

……そして、美術部に入った瞬間の視線が痛い。しかし、数が少ないので負けない!








大きな窓の向こうは小さな噴水や四阿があり、陽だまりの中で穏やかな時間を作り出している。

その窓のすぐ横、ちょうど日の当たらない場所にある絵画に目を奪われた。




私の背丈ほど(150cmくらい)の大きなキャンバスいっぱいに向日葵畑が広がっていて、その中に1人女性がこちらをじっと見つめている。

晴れ渡った空の青さと向日葵の黄色による明るい雰囲気とは対照的に、女性は何か思い詰めたような、不安そうな、、、そんな顔をしている。







「その絵が気になりましたか?」

ビクッと肩を震わせ振り向くと、お下げで丸眼鏡の女子生徒がニコニコ(ニヤニヤ?)と私の前に立っていた。


「ええ、不思議な絵ですわね。風景はこんなにも美しいのに、この女性は何だか思い詰めているようだわ。」


感じたままを伝えると、女子生徒はニコニコ(ちゃんと)と満足気な雰囲気だ。


「申し遅れましたが、私は芸術科3年美術部部長の丸山です。あなたは絵を観る目があるようだ。」


「私は普通科1年の永冨雅です。絵を勉強した事なんて無いので、観る目があるなんてことはありませんよ」


ふむ、と部長は首を傾げ、絵画に目を向けた。私もそれに倣う。


「これはあくまで私個人の見解なのですがね。ただ絵を観るのに知識は要らないのですよ。観たときの印象、雰囲気、色合い、様々なものを感じるのです。ーーーーーさて、永冨さんはこの絵が好きですか?嫌いですか?」


「好きです」


じっと絵画の女性と目を合わせたまま、即答した。


「それは良かったです。作者は2年生ですが、1年生の頃から売れっ子でしてね。あ、ウチの部は販売もしているのですよ。よかったら、他の作品も見ていってくださいね。」

「ありがとうございます」

部長はまたニコニコ(ニヤニヤ)として傍から離れていった。




絵画の下のプレートには

『いつか』
2年 神崎悠かんざき ゆう


この日から、頭の隅に神崎悠の名前だけがずっと居座ることになる。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...