悪役令嬢専門お悩み相談係

米粉パン

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今世の自分

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“鏡の儀式”でまた会いましょう、とビアンカ様とアリア様にパウンドケーキのお土産を渡し、馬車までお見送りをした。

メイド達の厚意に甘えて、四阿の片付けを頼んだ私は、屋敷の中へ入ろうとしていた。


「ふぅ……調子に乗ってお菓子を食べ過ぎてしまったわ……」

「夕食まで少し時間がありますし、お庭を散策されてみては?」

「そうね、そうしようかしら」


1歩後ろに付いているジョセフに提案され、花壇のある方へ向かった。



「あら、もう蕾ができているわ」


つい先日じいやに無理を言って手ずから植えた花の苗は、あっという間に成長している。

しゃがみ込んで、蕾を人差し指で撫でた。

「どうか、元気に花を咲かせてね」


立ち上がり、奥にあるバラ園の方へ足を向けた。














私の提案を受けて花壇に向かうお嬢様に付き従い、彼女の1歩後ろを歩く。


花壇の前に来たとき、お嬢様はしゃがんで、花の蕾を撫でながら「どうか、元気に花を咲かせてね」とをお使いになった。

ーーーどうやら本人は気付いていないようだが、お嬢様が立ち上がって花から目を離した後、蕾がキラキラと輝き始めた。


まだ魔法の訓練をしていないので、蕾にかかった魔法の効力は弱いと考えられるのだが、この様子だと夕食の時にはもう満開だろう。

成長促進は立派な光魔法だ。光魔法が使えるという情報が他人に漏れると、身を守る魔法を習得していないお嬢様の身が危ないだろう。

だから、、私は彼女を全力で守る。







ーーーあれは確かお嬢様が7歳の頃。

亡命中に追手が放った矢が腕を掠った。掠っただけなら軽傷だったのだが、どうやら矢に毒が塗られていたようで、命からがら追手を撒いて逃げ切ったとき、私の体力は底を突いた。

水を得ようと、ある湖畔に着いたとき、とうとう倒れてしまったのだが…………



そこで出会ったのがお嬢様だった。

偶然兄上様とピクニックに来ていたところで、倒れている私を看病し、涙を流しーーー私を癒してくださった。


光魔法は、いつも使う医療器具、または自身の体液など、なにか媒介するものがあると、より使いやすくなるのだ。

この場合はお嬢様の涙が媒体となり、光魔法の凝縮された粒が私の体に染み渡ったのだ。



その後シュラット伯爵家に運ばれ、熱は出たものの順調に回復し、起き上がれるようになった。

出自を問われたが、記憶喪失を装った。

ご当主様のご厚意により使用人として雇って頂けることになり、今に至る。



ただ、1つだけ起こった変化があるーーーーーーーーーお嬢様に恋心を抱くようになったことだ。

最初は『命の恩人』という認識だったが、お嬢様のおねだりワガママによって専属執事として接する間に、可愛らしい笑顔に惚れ込んでしまったのだ。


しかし母国は近頃きな臭い。連れ戻される日は近づいてきていると感じている。

何しろ…………父も、兄も、腐っているのだ。相当な英雄が現れない限り、私以外に相応の人材はいないだろう。



ーーーもう、このに浸かってはいられない。

お嬢様もそろそろ結婚相手を探し始める年齢なのだ。うかうかしていられない。

それに加え、お嬢様は超がつくほど鈍感だ。あのヴォルフガングとかいうやつの目は半分本気だった。

まぁ、残り半分が冗談だというヤツに私のお嬢様を渡すつもりなんて更々ないのだが。




バラに囲まれて優しく微笑むお嬢様を見つめながら、私の心の中は混沌としていた。

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