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今世の自分
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(この方……とてもエスコートがお上手だわ)
目の前の美男子……もとい、隣国ランブールの第4王子である、レオナルド・リア・ランブール殿下は、微笑みを絶やさない。彼はケオンブルク学園に留学するので、今日の夜会に招待されたのだそうだ。
ふわりと柑橘系の香水の匂いがして、予想以上の近距離にドキドキする。家で練習をする時は、ほとんどジョセフと(時々お父様やお兄様と)踊っていたのだが、彼よりも背の高いレオナルド殿下と踊ると、まるですっぽり胸の中に収まったような感覚だ。
「エリザベス嬢は、ダンスがお上手なのですね」
「いいえ、きっと殿下のエスコートがお上手ですからその様に見えるのですわ。実は私、ダンスは苦手ですので」
殿下はクスッと笑うと、続けた。
「随分謙虚でいらっしゃるようだ。ーーーところで、私はそろそろテラスで休憩でもしようかと思うのですが、貴方もどうですか?」
「ええ、もちろん」
別室に連れて行かれるのは流石に警戒するのだが、会場の外にあるひらけたテラスならば、中から様子が見えるし大丈夫だろう、と判断して頷いた。
ダンスを中断した殿下は、壁際にいた執事に声をかけて、飲み物と軽食を2人分用意してくださった。
テラスに出ると、意外に人はいなかった。立食用の丸くて背の高いテーブルに皿を置き、片方のグラスを私に手渡したレオナルド殿下は、「今日の良き出会いに」と小さく乾杯をした。
装飾のついたガラスのゴブレットを傾け、喉を潤す。ダンスで少し汗ばんでいたので、スッキリした味わいの果実水がとても有難い。
「ところで、貴方はどのクラスになりましたか?」
「えっと……全属性です」
「おや、同じクラスなのですね」
ニコニコと柔らかく微笑む殿下は、聞き上手かつ話し上手なので、会話が途切れる事無く、しかも楽しい時間を過ごすことができた。
(そのうち私にも縁談が来るのでしょうけど……こんな方が良いな……)
シュラット伯爵家は、古くからケオンブルク王国にある、由緒ある家系なので、身分的には問題はない。だがしかし、王妃となると話は別だ。しかも他国の。
無いな、と勝手に結論付けていると、テーブルの上に置いていた右手を、レオナルド殿下の左手が包んだ。
驚いて殿下を見ると、彼は少し頬を染めて私の目を見つめていた。
「よかったら今度、お茶でも如何ですか?……もちろん2人で、ですよ。恥ずかしながら、私は貴方に一目惚れしてしまったようなのです」
レオナルド殿下の顔が近づいてきたーーー
ーーーと思ったところで、「また女漁りか、レオ」と声が掛かった。
思わずパッと離れる私と、ゆっくり振り返るレオナルド殿下。声の主は我が国の王太子殿下ーーーレオン殿下だった。
軽く私とレオナルド殿下に礼をしたレオン殿下は、さりげなく私とレオナルド殿下の間に入って、持っていたクラスをテーブルに置いた。
ホッとした私は、再び果実水に口を付けようとすると、レオン殿下に制された。
「何か飲みたいなら、新しいものを。薬が入っているから、それ以上飲むと危険だ」
ぎょっとしてすぐに自分のグラスをテーブルに置いた。
「おやおや……ひどいな、レオン?薬なんて入れる訳ないじゃないか」
「こっの腹黒王子が………ネタは上がってるんだよ」
残念、とレオナルド殿下は私のグラスを取り、テラスの柵より向こう、植え込みに向かって中身を捨てた。
「でも、一目惚れというのは本当だよ?今日の君は妖精だね。とっても綺麗だよ」
パチン、と音のするようなウインクを決めたレオナルド殿下は、ヒラヒラと手を振りながら会場のホールへ去っていった。
しばらく呆然と見送っていると、レオン殿下はひとつ咳払いをした。
「あいつには気をつけろ。あいつは、君の属性を知っている。あいつだけじゃない。きっとこれから、君の属性目的で近づいてくる輩は沢山出てくる。だから、できるだけ1人で出歩くな。本当に信頼できる者だけを周りに置くんだ。新採用の使用人は特に気をつけろ。」
真剣な殿下の眼差しに、「はい」以外の答えは出なかった。
「まあ、今は僕がいるから遠慮するな。夜会を楽しんで」
笑った殿下を見て、ハッと思い出した。
「ビアンカ様とのご婚約、おめでとうございます」
「え、ああ、ありがとう。……めでたくは無さそうだけどな」
え?と首を傾げると、殿下は続けた。
「ビアンカとは幼馴染で、たまに一緒に遊んだりしてたんだけど……ここだけの話、彼女は癇癪持ちだから、ケンカがしょっちゅうでな……この様子だと、結婚した後も冷え切った夫婦になりそうで…………僕は、そんなの望んでないんだけどね」
グイッとグラスを煽った殿下。
(これは…………悪役令嬢フラグを折るチャンスなのでは……??)
そう思った私は、「僭越ながらアドバイスというか……させて頂いてもよろしいでしょうか?」と尋ね、許可を貰った。
「殿下……ビアンカ様は、ツンデレなのです」
は?という顔で殿下は続きを促した。
ーーーーーーーーーーーーーーー
すみません、長くなりそうなので一度切ります!話の続きは次回↓↓↓
目の前の美男子……もとい、隣国ランブールの第4王子である、レオナルド・リア・ランブール殿下は、微笑みを絶やさない。彼はケオンブルク学園に留学するので、今日の夜会に招待されたのだそうだ。
ふわりと柑橘系の香水の匂いがして、予想以上の近距離にドキドキする。家で練習をする時は、ほとんどジョセフと(時々お父様やお兄様と)踊っていたのだが、彼よりも背の高いレオナルド殿下と踊ると、まるですっぽり胸の中に収まったような感覚だ。
「エリザベス嬢は、ダンスがお上手なのですね」
「いいえ、きっと殿下のエスコートがお上手ですからその様に見えるのですわ。実は私、ダンスは苦手ですので」
殿下はクスッと笑うと、続けた。
「随分謙虚でいらっしゃるようだ。ーーーところで、私はそろそろテラスで休憩でもしようかと思うのですが、貴方もどうですか?」
「ええ、もちろん」
別室に連れて行かれるのは流石に警戒するのだが、会場の外にあるひらけたテラスならば、中から様子が見えるし大丈夫だろう、と判断して頷いた。
ダンスを中断した殿下は、壁際にいた執事に声をかけて、飲み物と軽食を2人分用意してくださった。
テラスに出ると、意外に人はいなかった。立食用の丸くて背の高いテーブルに皿を置き、片方のグラスを私に手渡したレオナルド殿下は、「今日の良き出会いに」と小さく乾杯をした。
装飾のついたガラスのゴブレットを傾け、喉を潤す。ダンスで少し汗ばんでいたので、スッキリした味わいの果実水がとても有難い。
「ところで、貴方はどのクラスになりましたか?」
「えっと……全属性です」
「おや、同じクラスなのですね」
ニコニコと柔らかく微笑む殿下は、聞き上手かつ話し上手なので、会話が途切れる事無く、しかも楽しい時間を過ごすことができた。
(そのうち私にも縁談が来るのでしょうけど……こんな方が良いな……)
シュラット伯爵家は、古くからケオンブルク王国にある、由緒ある家系なので、身分的には問題はない。だがしかし、王妃となると話は別だ。しかも他国の。
無いな、と勝手に結論付けていると、テーブルの上に置いていた右手を、レオナルド殿下の左手が包んだ。
驚いて殿下を見ると、彼は少し頬を染めて私の目を見つめていた。
「よかったら今度、お茶でも如何ですか?……もちろん2人で、ですよ。恥ずかしながら、私は貴方に一目惚れしてしまったようなのです」
レオナルド殿下の顔が近づいてきたーーー
ーーーと思ったところで、「また女漁りか、レオ」と声が掛かった。
思わずパッと離れる私と、ゆっくり振り返るレオナルド殿下。声の主は我が国の王太子殿下ーーーレオン殿下だった。
軽く私とレオナルド殿下に礼をしたレオン殿下は、さりげなく私とレオナルド殿下の間に入って、持っていたクラスをテーブルに置いた。
ホッとした私は、再び果実水に口を付けようとすると、レオン殿下に制された。
「何か飲みたいなら、新しいものを。薬が入っているから、それ以上飲むと危険だ」
ぎょっとしてすぐに自分のグラスをテーブルに置いた。
「おやおや……ひどいな、レオン?薬なんて入れる訳ないじゃないか」
「こっの腹黒王子が………ネタは上がってるんだよ」
残念、とレオナルド殿下は私のグラスを取り、テラスの柵より向こう、植え込みに向かって中身を捨てた。
「でも、一目惚れというのは本当だよ?今日の君は妖精だね。とっても綺麗だよ」
パチン、と音のするようなウインクを決めたレオナルド殿下は、ヒラヒラと手を振りながら会場のホールへ去っていった。
しばらく呆然と見送っていると、レオン殿下はひとつ咳払いをした。
「あいつには気をつけろ。あいつは、君の属性を知っている。あいつだけじゃない。きっとこれから、君の属性目的で近づいてくる輩は沢山出てくる。だから、できるだけ1人で出歩くな。本当に信頼できる者だけを周りに置くんだ。新採用の使用人は特に気をつけろ。」
真剣な殿下の眼差しに、「はい」以外の答えは出なかった。
「まあ、今は僕がいるから遠慮するな。夜会を楽しんで」
笑った殿下を見て、ハッと思い出した。
「ビアンカ様とのご婚約、おめでとうございます」
「え、ああ、ありがとう。……めでたくは無さそうだけどな」
え?と首を傾げると、殿下は続けた。
「ビアンカとは幼馴染で、たまに一緒に遊んだりしてたんだけど……ここだけの話、彼女は癇癪持ちだから、ケンカがしょっちゅうでな……この様子だと、結婚した後も冷え切った夫婦になりそうで…………僕は、そんなの望んでないんだけどね」
グイッとグラスを煽った殿下。
(これは…………悪役令嬢フラグを折るチャンスなのでは……??)
そう思った私は、「僭越ながらアドバイスというか……させて頂いてもよろしいでしょうか?」と尋ね、許可を貰った。
「殿下……ビアンカ様は、ツンデレなのです」
は?という顔で殿下は続きを促した。
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