23 / 175
第1章 歓迎! 戦慄の高天原
023
しおりを挟む
具現化の授業中。
俺は例により修験場の教会にいた。
今日は昨日の続き、祝福の訓練。
また真っ暗な倉庫に監禁されるところだ。
「難しく考えなくて良い。自分で自分とレゾナンスするイメージ」
「は?」
毎度、無表情ながらよく分からないアドバイスをくれる聖女様。
そんなので理解できるならとうにできている。
「じゃ、頑張って」
「ちょっ・・・」
ばたん。がちゃり。
おい、今、鍵を閉めただろ!
俺が閉所恐怖症だったら発狂もんだぞ!?
ええと。
自分で自分と共鳴?
集魔法の要領で共振させるところは良いとして。
そのエネルギーをどうするか、なんだよ。
丹撃は腕から出す。
祝福は自分に向けろって?
外に出さずに我慢すりゃ良いのか?
最初の何かが来る前にさっさとやってみよう。
呼吸と鼓動、魔力の揺れ。
すう、くら、とん。
随分と早くなった。静止の共振も慣れたな。
で・・・このお腹の魔力を・・・どうすんだ?
力を入れると腕から出すんだから力を抜く?
勢いは必要だから・・・。
俺はいちど力を入れて魔力の流れを作った後、力を抜いてみた。
お腹の熱がぐわっと胸まで上がった後に、だらだらだらっと全身に広がった。
ああこれやばい。目眩のやつ?
魔力の流れが頭を通過する。
視界を白く染めてぐらぐらと俺を揺さぶる。
うう、やっぱ目眩だよ!
くっそ、倒れねぇぞ。
何とか踏ん張って耐えるがふらふらする。
バランスを崩して壁まで流されてしまう。
壁に手をつき、何とかなるかと顔を上げた。
目の前にまた髑髏があった。
「ぎゃあああぁぁぁぁ!!!」
び、びっくりした!
動機が激しい。尻もちをついてしまった。
これ、何度見ても驚くのって畏怖の効果なんだよな。
くそ、これじゃ駄目じゃねぇかよ!
目眩がしながらも自分の身体を見た。
暗闇にぼうっと、身体を包む白い膜が輝いていた。
おう、魔力を循環させるのはできてるよ。たぶん。
これ、魔力が出てるだけで魔法的な効果がないんだろ。
要するに具現化させてねぇってことか。
ええと。
そもそも集魔法も丹撃もそうだけど具現化してねぇんだよな。
あくまで白魔力のまま扱ってる。電気を電気として使ってるようなもんか。
具現化って根本的にどうやんだ?
電気を熱や光に変えないと駄目ってことだろ?
つまり魔力を変換、変形させる。
変形・・・ああ、色をつける!
だから色をつけるって感情を含めるって言ってるのか。
たぶん属性持ちはこれを意識しなくても魔力が変換されるってことだな。
でも白魔法って色をつけないって言ってなかったか?
どういうこと?
変換しねえと駄目じゃん。
うーん。
聖女様のヒントは自分とレゾナンス。
それってあの棒と同じ原理じゃね?
・・・。
待て。
レゾナンス、共鳴ってそもそもどうやってんだ?
香と共鳴するときって香のことを想ってるわけだ。
じゃあ自分と共鳴するって自分のことを想う?
え? どうやんの?
妄想? もうひとりの自分と語るの?
意味分からん。
くそ、このままじゃまたびっくりさせられんぞ。
・・・自分の気持ちに寄り添うってやつ?
余計なことを考えずに肯定してやるってやつか。
ええと。
俺は毎日全力でよく頑張ってるぞ。
すごいぞ俺。
・・・ぐっ。
馬鹿っぽいって考えちゃいかん!
もっと真面目に!
俺はよく頑張ってる。
そう、好きなゲームを生き抜くために3年もやった。
誰にでもできることじゃない。俺は大したもんだ。
辛くても続けて主席にもなった。すげえよ。
・・・。
・・・。
ああ、なんか心地良いな。
そっか、寄り添うって肯定してやるってことか。
ん、何となくいけそうな気がする。
また集魔法で魔力を練る。
全身に行き渡らせる前に・・・俺、頑張ってるぞ、と。
自分を肯定して心地よい感覚を作る。
・・・よし。
これで全身に流す。
・・・。
ん、なんか俺、全肯定された気分!
酒が入ってハイになった時のような。
良い気になって横を見たら、毎度の髑髏がこんにちは。
「よう」
驚かなかった。
これが祝福? 成功してる?
すげえじゃん、俺! 具現化できてるよ!
守られている安心感のせいか髑髏が可愛く見えてくる不思議。
なるほど、自分を肯定する感情。
そうだよな、祝福ってそいつの気力を上向けるんだから当たり前だ。
つーことは畏怖って逆に怖がらせるような、責めるような感情を乗せるのか。
うん、ちょっと分かった気がする。
集魔法の共振って正確には共鳴じゃなくて魔力の準備ってことだな。
前にレゾナンストレーナーが中途半端に光った理由はレゾナンスしてなかったからか。
なるほど。勝手に納得。
◇
今日は時間前に倉庫から出してもらえた。
畏怖の効果が無くなったことで聖女様が感づいたらしい。
「すごい。2日でマスターするなんて」
無表情ながら感心している様子。
言葉と雰囲気から驚いてるのだろうとわかる。
「聖女様のアドバイスが的確だからですよ」
脳内で文句ばっかり言ってたけどね!
でもアドバイスが生きたのも事実。
短期間で具現化を身につけられると思ってなかったし。
白魔法の汎用能力でも嬉しい。
「うん優秀。私も貴方も」
「謙遜しないところも素敵ですね」
「もちろん。自己肯定も大事」
日本人なのに前向きな発言だ。
いや、俺が卑屈すぎるのか?
白魔法にはこの受け入れる感情が必要なのかもしれん。
祝福には必須なのだから。
俺の意識改革も進めねぇと。
「明日は外に具現化させる練習。お楽しみに」
「はい、ありがとうございました」
珍しく精神を削らず授業が終わった。
よし今日は昼休みが使えるぞ!
◇
いつもバタバタしているので、俺は学校探索をしたいと思っていた。
今日の付き添いであるジャンヌとリアム君にお願いして早目に昼食を終える。
ふたりとも協力的なのは有り難い限りだ。
「何か使える施設とかあるかもしれねぇだろ?」
「確かに学校の中って用事がないと歩き回らないわね」
「うん! 探検だ!」
乗り気のふたりと一緒に廊下を歩き始めた。
職員室から始まり、図書室、美術室、技術室、視聴覚室、音楽室、科学室。
定番の部屋は横目スルー。未来仕様の設備には興味あるんだけど時間がねぇ。
「あ、ここ! 何だろう!」
リアム君が惹かれた部屋。
それは「防護室」。
え? 何を防護すんの?
「あたし知ってる。これ具現化の出力を試す部屋よ」
「試す?」
「授業で具現化をさせるときに危険なケースも多いから、何が起きても大丈夫にしてある部屋」
「なるほど」
「へ~! ジャンヌって物知りだね! すごい!」
「あ、当たり前じゃない! こんなの常識よ!」
ん、ツンデレなお返事。
このふたり、相性良いのかも?
ゲームじゃここまで日常的なやり取りはねぇから。
この部屋、覚醒イベントで来るのかもしれねぇな。
チラ見しようと思ったけど鍵がかかっていたので入るのは断念。
さらに奥へ進む。
「何だこりゃ? 調教室?」
「調教って・・・あらぬ想像をしてしまうわね」
「ねぇ調教って何?」
リアム君の素直な疑問に俺もジャンヌも口をつぐむ。
互いに答えてやれよ、と目配せするが言葉になることはなかった。
「これ、まさか人間に対してじゃないわよね?」
「そう思いたいところだ」
疑問を解消するため扉に手をかけてみるも開いていない。
くそ、名前だけで妄想が進んでしまう。
「わかんないね! 次行こう!」
リアム君はどんどん進む。
遅れないよう、俺とジャンヌは小走りに追いかけた。
「ねぇ、今度は解析室だって!」
「解析? 何を解析するのかしら」
解析。
その単語で思い出す。
アトランティスから持ち帰ったアーティファクトは学校で鑑定・解析するのだ。
だからこの解析室はそういう物が持ち込まれる。たぶん。
中に入ったらお宝があるんじゃね?
「解析するようなもんがあるってことだろ」
例によって扉に手を掛ける。
開いてないな、と思いながらノブを回すと・・・開いた。
「あれ? 開いてる」
「ほんとだ! こんにちは~!」
怖いもの知らずのリアム君がさっと入室する。
おいおい、ちょっとは躊躇しろよ。
突撃させるわけにもいかないので俺とジャンヌも一緒に入る。
「誰もいない?」
「お邪魔しま~す!」
中は薄暗い研究室のようだ。
コンピュータ、ケーブル、測定器。
顕微鏡や電圧をかける装置、化学薬品の入った瓶。
部屋の名に恥じず解析していますと言わんばかりの設備が並ぶ。
「なんだよ、昼休みに」
果たして期待通りに白衣の人物が奥から出てきた。
茶髪ぼさぼさ頭の顔色の悪い男。
大学の研究室で寝泊まりしていてだらしなく研究に没頭していそうな人だ。
「ごめんなさい、起こしちゃいましたか?」
「ああ? ごめんで済んだら世話ないね。預かってる物も今はないと思ったが」
「すみません。こいつが勢い余って入ったんです」
とにかく謝るに限る。
不機嫌そうな雰囲気だし。
そりゃそうだ、ノックも無しにいきなり入ってきたから。
こういう人って自分の領域を荒らされると怒るんだよな。
「あ! 見てみて! これ、面白そう!」
そしてマイペースのKYリアム君。
棚に置いてあった角?の生えた四角いオブジェを手に取っていた。
「おい、勝手に・・・」
「おお! 君! それの素晴らしさがわかるのか!!」
咎めようとした俺の声を遮って、白衣のおっちゃんが声をあげた。
「うん。どうやって使うの?」
「これはな、具現化を閉じ込めておける装置だ」
「閉じ込めてどうなるの?」
「では実演してみせよう。その装置を手に持ってこちらへ向けなさい」
「こう?」
リアム君が両手で装置を持ち、おっちゃんの方へ角を向ける。
おっちゃんは右手を前に突き出し人差し指を上に向けた。
「私がここから魔法を出したら、その装置の上にあるボタンを押すんだ」
「これだね」
「よしいくぞ。火炎放射」
「うわ!?」
「きゃっ!?」
いきなり火炎が室内に広がる!
ぼわっと大きな音がした。
突然の光と熱に俺とジャンヌは声をあげてしまう。
「ぽちっ」
そんなものもお構いなしにリアム君はスイッチを押した。
すると出現した炎が角の中に吸い込まれていった。
「すごーい!」
「ははは、どうだ驚いたか。今、その箱の中に火炎放射が入っている」
いきなり繰り広げられる大道芸に唖然とする俺。
ジャンヌも言葉が出ない様子だった。
「これ、もう一回押すと出てくるの?」
「ああ、そうだ。減衰もしないから好きなタイミングで出せるぞ」
「へぇ~、すごい! やってみるね」
「ちょっ・・・!!」
「ぽちっ」
そして広がる炎。
「ぎゃあぁぁぁ!」
「きゃああぁぁ!」
「うおおぉぉ!」
◇
そりゃね、狭い室内で炎を出せば燃えますよ。
人的被害が無かったことが不幸中の幸い。
火災対策の水が天井から噴射されて事なきを得た頃にはびしょ濡れ。
水を雑巾で拭き取って後始末をしたら昼休みも終わる時間になってしまった。
「結局片付けだけで終わっちまったよ」
「ほんと・・・」
げんなりする俺とジャンヌ。
どうして俺たちふたりだけが片付けていたんだ。
納得いかん。
「ね! これどうやって使うの!?」
「おお、これはだな・・・」
片付けもそこそこに棚の品々に目移りしているリアム君。
おっちゃんも際限なく付き合っている。
入室時の暗い印象が吹き飛ぶほどに生き生きしてんな。
典型的な研究者だよ。
「リアム、時間よ。戻るわよ」
「ええ!? もう?」
「来たいなら放課後に行けば良いだろ」
「今日は付き添いだからなぁ。ね、おじさん。明日も来ていい?」
「エリアと呼びたまえ。私の名はエリア=パンゼーリだ」
おっちゃんは無精髭が気になる口角を上げて名乗る。
リアム君も笑顔で答えていた。
「うん、エリアのおじさん! また来るね!」
「おじさんは余計なのだよ。私はまだ20代だ」
こうして俺達は解析室を後にした。
急ぎ足で廊下を戻りながら俺は思い出していた。
そう、ゲーム中でアーティファクト等の未解明アイテムを鑑定する人。
エリア博士というキャラがいた。恐らく彼がそうだ。
なるほどね、この学校内で解析を担当しているのか。
彼には今後、色々とお世話になるだろう。
知り合う時期が早すぎる気がしないでもないけど!
少し濡れてしまった制服が乾いた頃に俺達は教室へ戻った。
午後の授業を受けながら、俺はふと思った。
あの部屋には掘り出し物があるのかもしれない。
色々置いてあったし、何となくゲームで見たアイテムっぽいものもあった。
通行手形リアム君を連れてまた行ってみようかな。
俺は例により修験場の教会にいた。
今日は昨日の続き、祝福の訓練。
また真っ暗な倉庫に監禁されるところだ。
「難しく考えなくて良い。自分で自分とレゾナンスするイメージ」
「は?」
毎度、無表情ながらよく分からないアドバイスをくれる聖女様。
そんなので理解できるならとうにできている。
「じゃ、頑張って」
「ちょっ・・・」
ばたん。がちゃり。
おい、今、鍵を閉めただろ!
俺が閉所恐怖症だったら発狂もんだぞ!?
ええと。
自分で自分と共鳴?
集魔法の要領で共振させるところは良いとして。
そのエネルギーをどうするか、なんだよ。
丹撃は腕から出す。
祝福は自分に向けろって?
外に出さずに我慢すりゃ良いのか?
最初の何かが来る前にさっさとやってみよう。
呼吸と鼓動、魔力の揺れ。
すう、くら、とん。
随分と早くなった。静止の共振も慣れたな。
で・・・このお腹の魔力を・・・どうすんだ?
力を入れると腕から出すんだから力を抜く?
勢いは必要だから・・・。
俺はいちど力を入れて魔力の流れを作った後、力を抜いてみた。
お腹の熱がぐわっと胸まで上がった後に、だらだらだらっと全身に広がった。
ああこれやばい。目眩のやつ?
魔力の流れが頭を通過する。
視界を白く染めてぐらぐらと俺を揺さぶる。
うう、やっぱ目眩だよ!
くっそ、倒れねぇぞ。
何とか踏ん張って耐えるがふらふらする。
バランスを崩して壁まで流されてしまう。
壁に手をつき、何とかなるかと顔を上げた。
目の前にまた髑髏があった。
「ぎゃあああぁぁぁぁ!!!」
び、びっくりした!
動機が激しい。尻もちをついてしまった。
これ、何度見ても驚くのって畏怖の効果なんだよな。
くそ、これじゃ駄目じゃねぇかよ!
目眩がしながらも自分の身体を見た。
暗闇にぼうっと、身体を包む白い膜が輝いていた。
おう、魔力を循環させるのはできてるよ。たぶん。
これ、魔力が出てるだけで魔法的な効果がないんだろ。
要するに具現化させてねぇってことか。
ええと。
そもそも集魔法も丹撃もそうだけど具現化してねぇんだよな。
あくまで白魔力のまま扱ってる。電気を電気として使ってるようなもんか。
具現化って根本的にどうやんだ?
電気を熱や光に変えないと駄目ってことだろ?
つまり魔力を変換、変形させる。
変形・・・ああ、色をつける!
だから色をつけるって感情を含めるって言ってるのか。
たぶん属性持ちはこれを意識しなくても魔力が変換されるってことだな。
でも白魔法って色をつけないって言ってなかったか?
どういうこと?
変換しねえと駄目じゃん。
うーん。
聖女様のヒントは自分とレゾナンス。
それってあの棒と同じ原理じゃね?
・・・。
待て。
レゾナンス、共鳴ってそもそもどうやってんだ?
香と共鳴するときって香のことを想ってるわけだ。
じゃあ自分と共鳴するって自分のことを想う?
え? どうやんの?
妄想? もうひとりの自分と語るの?
意味分からん。
くそ、このままじゃまたびっくりさせられんぞ。
・・・自分の気持ちに寄り添うってやつ?
余計なことを考えずに肯定してやるってやつか。
ええと。
俺は毎日全力でよく頑張ってるぞ。
すごいぞ俺。
・・・ぐっ。
馬鹿っぽいって考えちゃいかん!
もっと真面目に!
俺はよく頑張ってる。
そう、好きなゲームを生き抜くために3年もやった。
誰にでもできることじゃない。俺は大したもんだ。
辛くても続けて主席にもなった。すげえよ。
・・・。
・・・。
ああ、なんか心地良いな。
そっか、寄り添うって肯定してやるってことか。
ん、何となくいけそうな気がする。
また集魔法で魔力を練る。
全身に行き渡らせる前に・・・俺、頑張ってるぞ、と。
自分を肯定して心地よい感覚を作る。
・・・よし。
これで全身に流す。
・・・。
ん、なんか俺、全肯定された気分!
酒が入ってハイになった時のような。
良い気になって横を見たら、毎度の髑髏がこんにちは。
「よう」
驚かなかった。
これが祝福? 成功してる?
すげえじゃん、俺! 具現化できてるよ!
守られている安心感のせいか髑髏が可愛く見えてくる不思議。
なるほど、自分を肯定する感情。
そうだよな、祝福ってそいつの気力を上向けるんだから当たり前だ。
つーことは畏怖って逆に怖がらせるような、責めるような感情を乗せるのか。
うん、ちょっと分かった気がする。
集魔法の共振って正確には共鳴じゃなくて魔力の準備ってことだな。
前にレゾナンストレーナーが中途半端に光った理由はレゾナンスしてなかったからか。
なるほど。勝手に納得。
◇
今日は時間前に倉庫から出してもらえた。
畏怖の効果が無くなったことで聖女様が感づいたらしい。
「すごい。2日でマスターするなんて」
無表情ながら感心している様子。
言葉と雰囲気から驚いてるのだろうとわかる。
「聖女様のアドバイスが的確だからですよ」
脳内で文句ばっかり言ってたけどね!
でもアドバイスが生きたのも事実。
短期間で具現化を身につけられると思ってなかったし。
白魔法の汎用能力でも嬉しい。
「うん優秀。私も貴方も」
「謙遜しないところも素敵ですね」
「もちろん。自己肯定も大事」
日本人なのに前向きな発言だ。
いや、俺が卑屈すぎるのか?
白魔法にはこの受け入れる感情が必要なのかもしれん。
祝福には必須なのだから。
俺の意識改革も進めねぇと。
「明日は外に具現化させる練習。お楽しみに」
「はい、ありがとうございました」
珍しく精神を削らず授業が終わった。
よし今日は昼休みが使えるぞ!
◇
いつもバタバタしているので、俺は学校探索をしたいと思っていた。
今日の付き添いであるジャンヌとリアム君にお願いして早目に昼食を終える。
ふたりとも協力的なのは有り難い限りだ。
「何か使える施設とかあるかもしれねぇだろ?」
「確かに学校の中って用事がないと歩き回らないわね」
「うん! 探検だ!」
乗り気のふたりと一緒に廊下を歩き始めた。
職員室から始まり、図書室、美術室、技術室、視聴覚室、音楽室、科学室。
定番の部屋は横目スルー。未来仕様の設備には興味あるんだけど時間がねぇ。
「あ、ここ! 何だろう!」
リアム君が惹かれた部屋。
それは「防護室」。
え? 何を防護すんの?
「あたし知ってる。これ具現化の出力を試す部屋よ」
「試す?」
「授業で具現化をさせるときに危険なケースも多いから、何が起きても大丈夫にしてある部屋」
「なるほど」
「へ~! ジャンヌって物知りだね! すごい!」
「あ、当たり前じゃない! こんなの常識よ!」
ん、ツンデレなお返事。
このふたり、相性良いのかも?
ゲームじゃここまで日常的なやり取りはねぇから。
この部屋、覚醒イベントで来るのかもしれねぇな。
チラ見しようと思ったけど鍵がかかっていたので入るのは断念。
さらに奥へ進む。
「何だこりゃ? 調教室?」
「調教って・・・あらぬ想像をしてしまうわね」
「ねぇ調教って何?」
リアム君の素直な疑問に俺もジャンヌも口をつぐむ。
互いに答えてやれよ、と目配せするが言葉になることはなかった。
「これ、まさか人間に対してじゃないわよね?」
「そう思いたいところだ」
疑問を解消するため扉に手をかけてみるも開いていない。
くそ、名前だけで妄想が進んでしまう。
「わかんないね! 次行こう!」
リアム君はどんどん進む。
遅れないよう、俺とジャンヌは小走りに追いかけた。
「ねぇ、今度は解析室だって!」
「解析? 何を解析するのかしら」
解析。
その単語で思い出す。
アトランティスから持ち帰ったアーティファクトは学校で鑑定・解析するのだ。
だからこの解析室はそういう物が持ち込まれる。たぶん。
中に入ったらお宝があるんじゃね?
「解析するようなもんがあるってことだろ」
例によって扉に手を掛ける。
開いてないな、と思いながらノブを回すと・・・開いた。
「あれ? 開いてる」
「ほんとだ! こんにちは~!」
怖いもの知らずのリアム君がさっと入室する。
おいおい、ちょっとは躊躇しろよ。
突撃させるわけにもいかないので俺とジャンヌも一緒に入る。
「誰もいない?」
「お邪魔しま~す!」
中は薄暗い研究室のようだ。
コンピュータ、ケーブル、測定器。
顕微鏡や電圧をかける装置、化学薬品の入った瓶。
部屋の名に恥じず解析していますと言わんばかりの設備が並ぶ。
「なんだよ、昼休みに」
果たして期待通りに白衣の人物が奥から出てきた。
茶髪ぼさぼさ頭の顔色の悪い男。
大学の研究室で寝泊まりしていてだらしなく研究に没頭していそうな人だ。
「ごめんなさい、起こしちゃいましたか?」
「ああ? ごめんで済んだら世話ないね。預かってる物も今はないと思ったが」
「すみません。こいつが勢い余って入ったんです」
とにかく謝るに限る。
不機嫌そうな雰囲気だし。
そりゃそうだ、ノックも無しにいきなり入ってきたから。
こういう人って自分の領域を荒らされると怒るんだよな。
「あ! 見てみて! これ、面白そう!」
そしてマイペースのKYリアム君。
棚に置いてあった角?の生えた四角いオブジェを手に取っていた。
「おい、勝手に・・・」
「おお! 君! それの素晴らしさがわかるのか!!」
咎めようとした俺の声を遮って、白衣のおっちゃんが声をあげた。
「うん。どうやって使うの?」
「これはな、具現化を閉じ込めておける装置だ」
「閉じ込めてどうなるの?」
「では実演してみせよう。その装置を手に持ってこちらへ向けなさい」
「こう?」
リアム君が両手で装置を持ち、おっちゃんの方へ角を向ける。
おっちゃんは右手を前に突き出し人差し指を上に向けた。
「私がここから魔法を出したら、その装置の上にあるボタンを押すんだ」
「これだね」
「よしいくぞ。火炎放射」
「うわ!?」
「きゃっ!?」
いきなり火炎が室内に広がる!
ぼわっと大きな音がした。
突然の光と熱に俺とジャンヌは声をあげてしまう。
「ぽちっ」
そんなものもお構いなしにリアム君はスイッチを押した。
すると出現した炎が角の中に吸い込まれていった。
「すごーい!」
「ははは、どうだ驚いたか。今、その箱の中に火炎放射が入っている」
いきなり繰り広げられる大道芸に唖然とする俺。
ジャンヌも言葉が出ない様子だった。
「これ、もう一回押すと出てくるの?」
「ああ、そうだ。減衰もしないから好きなタイミングで出せるぞ」
「へぇ~、すごい! やってみるね」
「ちょっ・・・!!」
「ぽちっ」
そして広がる炎。
「ぎゃあぁぁぁ!」
「きゃああぁぁ!」
「うおおぉぉ!」
◇
そりゃね、狭い室内で炎を出せば燃えますよ。
人的被害が無かったことが不幸中の幸い。
火災対策の水が天井から噴射されて事なきを得た頃にはびしょ濡れ。
水を雑巾で拭き取って後始末をしたら昼休みも終わる時間になってしまった。
「結局片付けだけで終わっちまったよ」
「ほんと・・・」
げんなりする俺とジャンヌ。
どうして俺たちふたりだけが片付けていたんだ。
納得いかん。
「ね! これどうやって使うの!?」
「おお、これはだな・・・」
片付けもそこそこに棚の品々に目移りしているリアム君。
おっちゃんも際限なく付き合っている。
入室時の暗い印象が吹き飛ぶほどに生き生きしてんな。
典型的な研究者だよ。
「リアム、時間よ。戻るわよ」
「ええ!? もう?」
「来たいなら放課後に行けば良いだろ」
「今日は付き添いだからなぁ。ね、おじさん。明日も来ていい?」
「エリアと呼びたまえ。私の名はエリア=パンゼーリだ」
おっちゃんは無精髭が気になる口角を上げて名乗る。
リアム君も笑顔で答えていた。
「うん、エリアのおじさん! また来るね!」
「おじさんは余計なのだよ。私はまだ20代だ」
こうして俺達は解析室を後にした。
急ぎ足で廊下を戻りながら俺は思い出していた。
そう、ゲーム中でアーティファクト等の未解明アイテムを鑑定する人。
エリア博士というキャラがいた。恐らく彼がそうだ。
なるほどね、この学校内で解析を担当しているのか。
彼には今後、色々とお世話になるだろう。
知り合う時期が早すぎる気がしないでもないけど!
少し濡れてしまった制服が乾いた頃に俺達は教室へ戻った。
午後の授業を受けながら、俺はふと思った。
あの部屋には掘り出し物があるのかもしれない。
色々置いてあったし、何となくゲームで見たアイテムっぽいものもあった。
通行手形リアム君を連れてまた行ってみようかな。
0
あなたにおすすめの小説
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~
喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。
音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、
幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。
魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。
そして再び出会う幼馴染。
彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。
もういい。
密かにやってた支援も打ち切る。
俺以外にも魔道具職人はいるさ。
落ちぶれて行く追放したパーティ。
俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
転生したら遊び人だったが遊ばず修行をしていたら何故か最強の遊び人になっていた
ぐうのすけ
ファンタジー
カクヨムで先行投稿中。
遊戯遊太(25)は会社帰りにふらっとゲームセンターに入った。昔遊んだユーフォーキャッチャーを見つめながらつぶやく。
「遊んで暮らしたい」その瞬間に頭に声が響き時間が止まる。
「異世界転生に興味はありますか?」
こうして遊太は異世界転生を選択する。
異世界に転生すると最弱と言われるジョブ、遊び人に転生していた。
「最弱なんだから努力は必要だよな!」
こうして雄太は修行を開始するのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる