誰得☆ラリクエ! 俺を攻略するんじゃねぇ!? ~攻略!高天原学園編~

たねありけ

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第1章 歓迎! 戦慄の高天原

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 翌日木曜日、さらに翌日金曜日。
 この2日間は歓迎会前の最後の課題をこなす時間となった。
 それぞれダイジェストで。


 ◇


 聖堂での白の具現化リアライズ訓練。
 最後は他人への祝福ブレスの練習。
 課題内容は順当だけど練習方法が・・・。

 だって聖女様を実験台にすんだよ。
 しかも祝福した後に俺が罵倒するという方法。
 俺、人の悪口が嫌いなんだよ!
 言うと嫌な気分になるし相手の反応も心が痛むの!
 桜坂中でわざと嫌われようとしたときも心痛すぎだったのに。

 聖女様のご指導で紙を渡される。
 「これ上から順に読んで」と。
 内容を見て仰天!
 「このチビのスベタが!」とか「おままごとか!ママのおっぱい吸ってろ!」とか。
 「この雌豚が!」とか「童顔のくせして淫乱なのか!」とか。
 「芋虫みたいに転がしてやろうか?」「良いのか? 妹がどうなっても?」とか。
 何このヤバいセリフ集!?
 聖女様の性癖!?

 祝福ブレスをした(つもり)の後に聖女様への罵倒。
 このセリフじゃないと感じないって・・・。
 何を感じるんですかね!?
 そもそもなんつー訓練方法なんだよ!
 これ、どっかで盗撮や録音されてないよね!?
 いつも無表情なのに罵倒されて笑みが溢れてるし!
 やっぱこの聖女様、おかしいよ!?

 彼女の情動に変化がないことがクリア条件。
 だというのに一度も成功しなかった。
 魔力を具現化しながら腕から出すって、丹撃になりそうで怖い。
 まだ人に向けて放てないから!
 ただ聖女様が悦んで終わったよ・・・。
 くそっ、これじゃ歓迎会に間に合わねぇ。

 最終的に無理だったので聖女様に頼み込むことにした。
 日曜日に皆で練習するので付き合ってくれ、と。
 「付き合うだなんてそんな・・・」
 どっかで聞いたような勘違いセリフと仕草でボケられて。
 何とか承諾をもらうことができた。
 この延長戦でどうにかしねぇと。


 ◇


 闘技部の課題は硬化の部分付与。
 特定箇所に魔力を流すイメージができない。
 全身防御ばかりになってしまう。
 これ、凛花先輩が都度、全身を殴打するせいだと思うんだよね!
 「人間サンドバックだ。丁度いい」って何!?
 全身硬いからって好きに殴らないで!

 何度も魔力切れを起こしてしまう。
 倒れる前に集魔法で誤魔化す。
 空まで魔力消費すると集魔法で回復するのに30分近くかかる。
 自然回復が24時間近いから比べればだいぶマシ。
 もっと時間があるなら良いんだけど今回は困った。
 1日に訓練できる回数が限られてしまうから。

 こちらも課題クリアならず。
 「どうするのか考えろ」
 と凄まれて
 「日曜日、練習に付き合ってください」
 って頼むしかなかった。
 休みを潰して申し訳ないと頼んだのになんか嬉しそうな顔をしてたのはどして?
 ともかくこちらも日曜日へ持ち越しとなった。


 ◇


 連日の疲れから土曜日は先週と同じく爆睡した俺。
 気付いたら昼前で、またさくらに起こされた。


「おはようございます。ゆっくりお休みでしたね」

「まだ眠ぃよ・・・。いつもごめんな、さくら」

「ふふ、良いのです。武さんのためですから」


 何やら頬を朱に染めながらのさくらのセリフ。
 うん? なんか艶のあることってあった?
 俺を起こすのが特権って思ってんのかな?
 よくわからん。
 つかそんな雰囲気だとこっちが照れる。やめて。

 ともかく食事だ。
 魔力消費もさることながら身体もかなり使っている。
 腹の虫が煩い。
 食欲旺盛になってしまうのはエネルギーが不足している証拠だ。

 食堂で皆と会する。
 既に12時半近いので食べ終わる人もちらほら。
 食事を終えたのであろうレオンと結弦とジャンヌ。
 3人であれこれ午後の訓練法を検討していた。
 リアム君はソフィア嬢とお茶。珍しい光景だ。


「ところで皆。改めて確認なんだが、明日、一緒に訓練に付き合ってくれるか?」

「うん! 武くんを撃てば良いんだよね!」

「それだけ聞くと物騒だよな!?」

「ええ!? 折角、明日のためにスタンドも用意したのに!」


 う、つい突っ込んでしまった。
 スタンドって本気でスナイパーじゃん。
 泣きそうな顔になるリアム君。


「すまん、リアムがそんなに張り切ってると思わなくて」

「むー! でも武くんだから許しちゃう!」

「はは、ありがとな」


 取ってつけたような誤魔化しで、一転、彼は破顔した。
 いや「俺だから」って何。
 それ付き合ってる男女のセリフ。


「武さん、オレも予定どおり大丈夫です。虎徹を用意しておきましたから」

「なんでそんなに気合い入ってんの!」


 結弦の任せてくださいと言わんばかりの表情にまたも突っ込んでしまった。
 銘入りの刀なんて、そんなもんまで持ってこなくても良いのに。
 張り切り過ぎだろ。


「あたしは部活の斧槍ハルベルトだから安心して。全力でやってあげる」

「それのどこに安心要素あんだよ!」


 ジャンヌのボコる宣言でもう寝起き気分がぶっ飛んだよ!
 ニヤついてるのは俺を打ちのめす想像でもしてるのか。
 こいつの手合わせ願望忘れてた。


「実戦で鍛えたいんでしょ?」

「全力でやってくれとは言ってない」

「そんなので先輩たちに勝てるの?」

「ぐっ・・・」


 痛いところを。
 正直、思い通りになってたまるかって俺の天邪鬼が発端だ。
 完全敗北せずに一矢報いられればって意識。勝利までは目指していなかった。
 うーん、歓迎会でのゴールをどこに置くか考えてねぇんだよな。


「ま、そんな甘い考えごと、吹き飛ばしてあげるわ」

「お手柔らかにな」


 うん。
 俺自身の認識が中途半端なところもある。
 皆の力を借りるのに半端は良くないと気付かせてくれた。
 心の中でジャンヌに感謝。


「俺とさくらも予定通り付き合う」

「ああ、ありがと。頼りにしてる」

「頑張りましょう!」


 レオンとさくらの安定感にホッとする。
 いつも俺を応援してくれるこのふたりは手放しに歓迎できる。
 足元を掬ったりしない信頼できる味方だな。


「わたくしも勿論、ご一緒いたしますわ」


 紅茶で優雅に過ごしていたソフィア嬢。
 皆の動向を確認した後にそう宣言する。


「ああ、ソフィアも頼むよ」

「ですが武様、皆様。歓迎会についてお話したいことがありますの」

「話したいこと?」


 先日頼んでおいた昨年の件かな?
 こっそり頼んだつもりだったんだけどな、全員に話すべきことなのか。


「この場ではなく、武様のお部屋でお話させていただきたいですわ」

「ああ、いいよ。全員が入ると狭いだろうけど」


 起きてから換気とかしてねぇ。
 さっさと食べて先に戻ろう。


 ◇


 何とか先に戻って人を迎えられる状態にした俺。
 防音が効いたプライベート空間って個人の部屋くらいだから仕方ねぇんだけど、別の部屋ってないのかなぁ。

 とにかく皆が俺の部屋に集まった。
 ベッドに腰掛ける人が4人。
 ソフィア嬢、リアム君、ジャンヌ、レオン。
 机の椅子に俺。
 床に座布団で2人。
 結弦とさくら、日本人だから正座で我慢して。
 狭いしモノも無く、皆似たような部屋なのにキョロキョロと見られるとなんか恥ずかしい。


「窮屈だから早目に終わらせよう。ソフィア、俺が頼んだ去年と一昨年の話だよな?」

「ええ、そのとおりです」

「昨年と一昨年の?」

「ああ、頼んで歓迎会の内容を調べてもらったんだ」


 俺は改めて、あの狐顔の副会長との邂逅を皆に話した。
 歓迎会の中で開催される舞闘会。そして宣誓内容を考えるよう言われていること。
 怪しさ満点な会話からも歓迎会が単なる仲良し集会ではないことを皆に予感させる。


「それは嫌な雰囲気の人ですね。初日の壇上ではそんな感じではなかったと思いますが」

「うん。一生懸命な感じの人だったと思う」


 直感が鋭いと自称する結弦とリアム君の言。
 確かに壇上の熱弁は怪しさなど感じはしなかった。
 あれも演技なのかな。


「では改めまして。皆様、わたくしが調べたことについてお話しますわ」

「うん、頼むよ」

「先ずその前置きとして。高天原学園には誓約の宝珠と呼ばれるアーティファクトがありますの」

「あーてぃふぁくと?」


 おいリアム君、この間エリア博士んところでアーティファクト触りまくってただろ。


「アーティファクトは今の科学ではわからない古代の遺物のことです。もっとも大惨事以降は魔法の込められた産物一般を指します。魔道具と言ってもいいかもしれません」

「へー。不思議な力のある道具ってことだね」

「アーティファクトを現在の人類が製造することはできていません。アトランティスに代表される魔窟のような場所からたまに発見されるだけです」

「なるほど。貴重なんだね!」


 結弦の解説に納得のリアム君。
 うん、俺の認識と一致している。良かった。
 今日は解説役が何人もいそうだから余計なことは言わないようにしておこう。


「その誓約の宝珠ってアーティファクトはどんな効果なの?」

「目の前で誓ったことを叶える力を持つものですわ」

「へぇ? お金持ちになりたい、なんて言えばなれるの?」


 ジャンヌが素直な疑問を呈する。
 そりゃ願いが叶うなんて言われれば誰でも想像するだろう。
 ソフィア嬢は首を振りながら答える。


「もちろん只では叶いませんわ。誓った代償と等価の願いが叶うとされています」

「代償って?」

「願いを叶え続ける限り、制約を受けるようになるものですわ」

「?」


 首をかしげるジャンヌとリアム君。
 それを横目にレオンが身を乗り出して発言した。


「例えば金を手に入れたいと願うと、その金額に相当するものが束縛されるということだろう。高額な金銭であれば宝石や人の命と言った具合に」

「ええ、レオン様。そのとおりですわ」

「ええ!?」


 リアム君がびっくりしている。
 そりゃそうだ。いきなり命が、なんて話をされれば驚く。
 俺も内心びっくりなんだがな! そんなヤバいものが身近にあるなんて!


「舞闘会で宣誓の儀と呼ばれるものが行われます。その宣誓に誓約の宝珠を使っているようですの」

「具体的にはどういったことが願われているのですか?」

「下級生は上級生に逆らわず服従すべし、と」

「ええ!?」

「代表者の自由意志を代償に、上級生は下級生に対する命令権を得ているようですの」

「なんだと!?」


 レオンが怒りを顕にする。理不尽さに対する彼の正義だ。
 その表情に俺はぴんときた。
 あ、これだ! これが理由でレオンは舞闘会で暴れたんだ。
 ようやく合点がいったよ。
 どうしてストーリー上、こんな重要そうな話が伏せられていたんだ。


「代表者って・・・今年は武くん!? そんなの許せない!!」

「それで上級生が下級生に理不尽な命令をしていたりするのね」

「オレも何度か見かけました」


 皆が憤っているのも無理はない。
 この2週間、皆、何度か3年生が2年生に対して理不尽な言動や行為をしているのを見かけた。
 食事中のテーブルから移動させるという些細なものから部活中の謂われなき暴力まで。
 単に厳しいだけかと思っていたけれどそうではなかったわけだ。
 それが実は一部の人間の横暴からくるものではなく生徒会に仕組まれたものだというのだから。


「だけどよ、その誓約の宝珠ってのは一方的に願いを叶えるわけじゃねえだろ?」

「はい。代償が他人を束縛する場合、その対象の人の是非を示す必要がありますの」

「合意は勝敗を以て示す、と。それが舞闘会の正体か」

「そのとおりですわ」


 そのために優秀と見做される主席を呼び出し、皆の前で具現化により一方的に屈服させる。
 その理不尽さに戦慄さえ覚える。
 皆、黙り込んでしまった。これが、この高天原の洗礼だということか。


「念のための確認だ。まず舞闘会で上級生と1年主席が誓約の宝珠の前で宣誓を行う」

「はい」

「全1年生を支配下に置くために上級生が願う。代償は1年主席の自由意志」

「はい」

「その後、宝珠に願いを認めさせるために勝負をする」

「はい」

「1年主席が負ければ誓約が発動し1年生は上級生に逆らえなくなる」

「はい、その理解で間違いありませんわ」


 なんてこった。
 そんな大掛かりな芝居装置の役者として俺は選ばれたというのか。


「しかもよ、それで負けた主席は自由に振る舞えなくなるんだろ」

「ええ」

「宝珠に自由意志が奪われるとどうなるんだ?」

「恐らくですが、宝珠の所有者の意のままになるかと」

「所有者は誰なのですか?」

「現生徒会長、アレクサンドラ=メルクーリですわ」

「つまり同級生には負けたことで疎まれ、生徒会長には人権無視で使われる。・・・胸糞悪ぃな」

「うむ、許せん」


 レオンが深く頷く。
 ゲームでも魅せていた彼の正義に大きく反することだろうからな。
 俺もこの主席に対する仕打ちは許せねぇ。
 なにせ同学年からも疎まれる状況になるってんだから。
 被害者だというのに理不尽すぎる。


「なぁソフィア。逆に1年生側が勝てば覆せるってことだろ?」

「はい。ですが上級生は具現化の見本として舞闘会を実施いたしますわ。具現化が使えない1年生には万にひとつも勝ち目はないかと」

「はっ! ようやく意味がわかった!」

「え?」


 つい俺は声をあげた。
 そうだよ、凛花先輩が最初に言っていたじゃないか!
 生徒会の鼻をあかせる、と。
 それはこういうことだったんだ。
 俺に生徒会に勝てと、そういう意味だったんだ。


「俺、凛花先輩から生徒会に勝つよう指導を受けてるんだ」

「あの訓練だな。確かに新入生のレベルではない」


 俺の頭の中で様々なパズルのピースが繋がった。
 そして打開策を探そうと模索が始まった。


「先生に渡された定型文のスピーチの意味も理解した。良かったよ、先に聞けておいて」

「武様。もうひとつ、お願いされていたことがありますわ」

「ああ、昨年と一昨年の結果だよな。言うまでもなく上級生が勝ったんだろ」

「はい、両年とも。去年、一昨年の主席のお名前も確認いたしました」


 去年、一昨年と生贄となった人。
 1年生の代表になり、理不尽を押し付けられた人。
 そうして誓約を成就する小道具となり、おそらく同級生にも白い目で見られるようになった人。
 この理不尽と戦うからにはその人たちもどうにかしてあげたい。


「昨年の主席の方は・・・残念ながらご退学されたそうです」

「どんだけ理不尽なんだよってことだな」

「ですが一昨年の主席はまだ在学されていらっしゃいます」

「その人の名前は?」

「・・・その・・・」

「うん?」


 ソフィアが言い澱む。
 え? 言い難いって?
 俺の知ってる人?


「誰なんだ?」

「・・・楊 凛花様ですの」

「ええ!?」

「何だって!?」




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