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ハチャメチャの中学2年生
024
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梅雨の時期になる。
気候はリアルの日本と変わらないので雨がよく降る。
少し蒸し暑く、鬱陶しさを感じながらの毎日だ。
俺の鬱疑惑事件は、橘先輩と九条さんの協力で何とか落ち着いた。
原因となった勉強の遅れは、なんと橘先輩と九条さんが交互に教えてくれることで解決を図ることに。
具体的には、日曜日に特別講座と称して俺の部屋で勉強する。
九条さんには歴史を、橘先輩には科学をフォローしてもらうことになった。
パスタの会とは別に、それぞれ隔週で半日。
1か月ほど一緒にやって、夏くらいには追いつけそうだと見込みが立った。
ホント、2人には感謝しかねぇ・・・。
「少しは頼らせなさい」
「ひとりで抱え込まないでください」
そんな温かい言葉とともに。
ふたりの女神に支えてもらってようやく何とかなるのだ。
やはり俺はモブ以下の一般人だと痛感した出来事だった。
◇
6月のある日。
いつも通り登校してテクスタントを開いて。
授業前に教科書とノートを確認しようとした時に気付いた違和感。
「九条と別れろ 根暗野郎」
画面の端にそう表示されていた。
ん? ナニコレ?
ハッキング?
内容からすると俺に対する嫌がらせだ。
九条さんに近しい俺への妬みか?
周りを見てもいつも通り。俺の反応を伺う奴はいない。
自分で操作をしてみたら消せた。
うん、気にしないことにしよう。
翌日。
次は授業中に異常があった。
端末画面の中央にいきなり大きく表示されたのだ。
「九条と別れろ 変態根暗 さっさと退学しろ」
いきなりなので少し動揺してしまった。
隣の九条さんが俺の様子に気付き、ちらりとこちらを見て、内容を見てしまった。
俺は慌ててそのメッセージウィンドウを消した。
要らん心配をかけてしまっては困る。
大人しく出来なかった俺が悪いのだろう。
次の授業との合間の休み時間。
「京極さん、先程の・・・」
「ん? 何かあった?」
華麗にスルー・・・させてくれ。
このところやらかしが多いから九条さんに心配をかけたくねぇ。
また怒られるかもしれんけど、気のせいで通しておきたい。
俺がどこかで解決すれば良い。
そう考えて何食わぬ顔をしていたら、九条さんもそのまま追求はしなかった。
◇
次の異変は体育の時間だった。
女子が更衣室へ移動していくのだが、九条さんがきょろきょろと捜し物をしている。
俺は気付いて声をかけた。
「どうしたの?」
「あの・・・運動着を持ってきたはずなのですが・・・」
どこかに置き忘れるようなものでもない。
誰かが意図的に移動したのだろう。
・・・いじめで典型的なのって、ゴミ箱に捨てたりするよなーって見てみたら。
ありました、こちらに。
俺が拾ってホコリを叩いていると九条さんもやってきた。
「これは・・・」
「誰かが入れたんだろな」
良かった、ただ突っ込んだだけで切られたり汚されたりしていない。
九条さんに手渡すとほっとした表情で着替えに向かっていった。
・・・俺に危害が加わる分には良いが、九条さんに手を出すのは許せねぇな。
誰がやったんだ。
◇
また別の日。
俺の登校時間は比較的早い。
開始30分前には自席についている。
九条さんは一緒に登校することもあるが、少し後に来ることが多い。
何でも出る前に勉強をしたりしているのだそうな。朝なんて時間ないだろにすげぇ。
で、今日は俺だけ先に来た日だった。
まだ人もまばらな教室。
自席に着こうとしたところで目に入った。
九条さんの机にされている落書きが。
「色白 京極と別れろ」「クニヘカエレ」
・・・古典的な方法だ。
問題は古典的すぎて、このハイテク時代にどっから油性ペンなんて持ってきたのやら。
筆箱なんてものは持っている人のほうが珍しいのだから。
こんなの九条さんが見たら傷つくに決まっている。
俺はすぐに教室を抜け出して用務員室に侵入。
雑巾や清掃用のシンナーを借りて教室に戻り、素早く落書きを落とした。
・・・机のコーティング、取れてねぇよな?
九条さんが何も気付きませんように。
完全犯罪(消す方)を完遂したところで九条さんが登校してきた。
あっぶね、見つかるところだった。
何事もなかったふうに俺は教室を出て道具を返した。
特に何も言われなかったので気付いていないだろう。
運動着に続き、さすがにこれは見過ごせん。
俺と九条さんに恨みのあるやつ?
誰だ、心当たりがねぇ。
そもそも俺、絡みがある奴が少ねぇからな。
むしろ九条さんの方を中心に探ったほうが良いかも。
最悪、現場の取り押さえだな。
さて、どうしたものか。
◇
さらに別の日。
リア研の活動を終えて帰宅しようとしたタイミング。
下駄箱を開けて靴を取り出すと違和感。
あ・・・画鋲!
靴底にテープで固定されてるよ。
古い・・・古すぎる・・・。
電子ペーパーが主流で、壁に固定した電子ペーパーをデータで書き換える掲示が標準。
物理的な紙を貼る機会は無い。画鋲の入手経路の方が知りたいくらいだ。
刑事ドラマなら購入先で特定出来ちまいそうな案件だろ。
俺みたいな一介の学生には無理だけどさ。
そんな下らないことを思慮して立ち尽くしていたせいで。
後から来た九条さんに現場を発見されてしまった。
「京極さん、それ・・・」
「あ、これ? 昭和のギャグを懐かしんでね!」
通じんのか、こんなん!!
俺、どうして口走ったし!!
理解できない九条さんが固まったじゃねぇか!!
「画鋲探すの、苦労したんだぜ」
「・・・」
そもそも画鋲って言って通じるのかも怪しい。
なんだこの恐ろしいジェネレーションギャップ!
昭和と令和どころの話じゃねぇぞ!
俺は誤魔化して笑いながら画鋲を剥がす。
ああ、九条さん。くすりとも笑ってくれねぇよ・・・。
誤魔化しきれなかったか、ギャグが理解できず止まっているのか。
やべぇ、俺が状況を理解できなくなってきてんじゃねえか!
「・・・帰りましょう」
「うん」
よし、何事も無かったことになった!
帰り道も特にこの件には言及されなかった。
◇
6月中旬。
九条さんへの嫌がらせは、その後、机へのマジック落書きが2回あった。
全部、俺が先に消したので九条さんは気付いていない・・・はず。
ちなみに俺へのハッキングもどきも2回あった。
今度は動揺せず消せたので、こっちも九条さんは気付いてないはず。
しっかしなぁ、いじめってレベルじゃないんだよな。
いじめなら他の人も動員して陰口を叩いたりってのが定番のはず。
でもそこまでの動きは無い。
個人的に思惑があってやっているとしか思えない。
俺と九条さんを別れさせたいのか?
出来るならやってほしいんだけど・・・(何
まぁ捨て置くわけにもいかず。
探偵京極の犯人探しが始まった。
俺の出来ることは・・・現場を押さえるだけ!
だってね、ハッキングなんて対応できないじゃん!
だから落書きしてるのを探すしかない。
まず、落書きがされるタイミングを特定することにした。
朝、俺が登校するまでに落書きされているのだ。
皆が下校した後から、朝、登校するまでの間の犯行となる。
では夕方から夜なのか、早朝なのか、という点だ。
しばらくの間、リア研が終了してから生徒の帰宅が終わる18時前まで学校に残った。
教室を覗いてから帰る。
そして九条さんより早めに登校して机をチェックする。
すると4回目の落書きがされていた。
夕方、俺が確認していたのはかなり遅い時間で、あれ以上残っていると先生にどやされる。
だから落書きは早朝だろう。
朝練の関係でかなり早い時間帯から空いているからだ。
朝と特定できればやることはひとつ。
早朝に学校へ行って犯人を確保する。
幸い、朝のジョグで結構な距離を走っている。
コースを学校方面に変更してしまえば済む話だ。
俺は何日か学校へ走り、こっそり教室を確認し、また寮へ戻るという生活をした。
その甲斐があって、1週間後のある日。
とうとう早朝の教室に誰かがいるのを発見した。
確認する時は、いつも忍び足で覗いているので向こうに気付かれてはいない。
様子を見ていると、九条さんの机で何かをしている。
ああ、やはり貴重なマジックを!
お前、どこから手に入れたんだよ! 高級品だろ!
シンナーで消すなんて知らねえだろ、絶対!
・・・違うそこじゃねぇ。
俺はがらりと教室の扉を開けた。
「・・・!!!」
犯人はこちらを見て狼狽する。
そりゃね、現場を押さえられちゃ言い訳もきかない。
「そうか、お前だったか・・・」
「・・・」
犯人は黙りこくっている。
「この場で糾弾する気はねぇ。納得しなきゃ、また続けるだろうからな」
「・・・?」
「体操着もお前だったんだろ?」
犯人は逡巡した後、頷いた。
「だから。当事者で話し合おうや。俺と九条さんとお前と」
「・・・」
「日程を決めたら声をかけるから、それまで大人しくしといてくれ」
犯人はもう一度、頷いた。
◇
俺はその日の夜、夕食のタイミングで九条さんに切り出した。
「九条さん、話がある」
食べながらだったので九条さんは一呼吸置いてから応じた。
「ん・・・わたしもちょうど、お話があったのです」
「じゃ、俺から。ほら、前に体操着がゴミ箱に入ってたことがあったろ」
「はい、ありました。その時は見つけてくださってありがとうございました」
「うん。その犯人が分かったんだ」
「え! そうなのですね」
「そんで。どうも俺と九条さんに思うところがあるみたいだから、一度、話し合いをと思って」
「・・・なるほど」
九条さんは何度か頷く。
あれ?
何かちょっと笑ってる?
「実は・・・わたしも犯人を捕まえたのです」
「え!?」
「ほら、京極さんのテクスタントに表示されていたでしょう」
「ああ・・・アレ? 見えてたか・・・」
「はい、お隣ですから。嫌でも目に入ります」
隠せてなかったよ!
駄目じゃん、俺。
「ほかにも、靴に画鋲が置いてあったことがありましたよね」
「・・・あれも? やっぱり分かった?」
「はい。京極さんを狙っているのは承知していましたから」
うん? 俺狙い?
九条さん狙いじゃなかったのか?
「それで、その犯人の方とも、京極さんと同じように話し合いをしようとお話しまして」
「え?」
「ですから・・・わたしと京極さんと、その犯人の方と、4人で話し合いをしましょう」
・・・知らないところで話が進んでいたよ!
気候はリアルの日本と変わらないので雨がよく降る。
少し蒸し暑く、鬱陶しさを感じながらの毎日だ。
俺の鬱疑惑事件は、橘先輩と九条さんの協力で何とか落ち着いた。
原因となった勉強の遅れは、なんと橘先輩と九条さんが交互に教えてくれることで解決を図ることに。
具体的には、日曜日に特別講座と称して俺の部屋で勉強する。
九条さんには歴史を、橘先輩には科学をフォローしてもらうことになった。
パスタの会とは別に、それぞれ隔週で半日。
1か月ほど一緒にやって、夏くらいには追いつけそうだと見込みが立った。
ホント、2人には感謝しかねぇ・・・。
「少しは頼らせなさい」
「ひとりで抱え込まないでください」
そんな温かい言葉とともに。
ふたりの女神に支えてもらってようやく何とかなるのだ。
やはり俺はモブ以下の一般人だと痛感した出来事だった。
◇
6月のある日。
いつも通り登校してテクスタントを開いて。
授業前に教科書とノートを確認しようとした時に気付いた違和感。
「九条と別れろ 根暗野郎」
画面の端にそう表示されていた。
ん? ナニコレ?
ハッキング?
内容からすると俺に対する嫌がらせだ。
九条さんに近しい俺への妬みか?
周りを見てもいつも通り。俺の反応を伺う奴はいない。
自分で操作をしてみたら消せた。
うん、気にしないことにしよう。
翌日。
次は授業中に異常があった。
端末画面の中央にいきなり大きく表示されたのだ。
「九条と別れろ 変態根暗 さっさと退学しろ」
いきなりなので少し動揺してしまった。
隣の九条さんが俺の様子に気付き、ちらりとこちらを見て、内容を見てしまった。
俺は慌ててそのメッセージウィンドウを消した。
要らん心配をかけてしまっては困る。
大人しく出来なかった俺が悪いのだろう。
次の授業との合間の休み時間。
「京極さん、先程の・・・」
「ん? 何かあった?」
華麗にスルー・・・させてくれ。
このところやらかしが多いから九条さんに心配をかけたくねぇ。
また怒られるかもしれんけど、気のせいで通しておきたい。
俺がどこかで解決すれば良い。
そう考えて何食わぬ顔をしていたら、九条さんもそのまま追求はしなかった。
◇
次の異変は体育の時間だった。
女子が更衣室へ移動していくのだが、九条さんがきょろきょろと捜し物をしている。
俺は気付いて声をかけた。
「どうしたの?」
「あの・・・運動着を持ってきたはずなのですが・・・」
どこかに置き忘れるようなものでもない。
誰かが意図的に移動したのだろう。
・・・いじめで典型的なのって、ゴミ箱に捨てたりするよなーって見てみたら。
ありました、こちらに。
俺が拾ってホコリを叩いていると九条さんもやってきた。
「これは・・・」
「誰かが入れたんだろな」
良かった、ただ突っ込んだだけで切られたり汚されたりしていない。
九条さんに手渡すとほっとした表情で着替えに向かっていった。
・・・俺に危害が加わる分には良いが、九条さんに手を出すのは許せねぇな。
誰がやったんだ。
◇
また別の日。
俺の登校時間は比較的早い。
開始30分前には自席についている。
九条さんは一緒に登校することもあるが、少し後に来ることが多い。
何でも出る前に勉強をしたりしているのだそうな。朝なんて時間ないだろにすげぇ。
で、今日は俺だけ先に来た日だった。
まだ人もまばらな教室。
自席に着こうとしたところで目に入った。
九条さんの机にされている落書きが。
「色白 京極と別れろ」「クニヘカエレ」
・・・古典的な方法だ。
問題は古典的すぎて、このハイテク時代にどっから油性ペンなんて持ってきたのやら。
筆箱なんてものは持っている人のほうが珍しいのだから。
こんなの九条さんが見たら傷つくに決まっている。
俺はすぐに教室を抜け出して用務員室に侵入。
雑巾や清掃用のシンナーを借りて教室に戻り、素早く落書きを落とした。
・・・机のコーティング、取れてねぇよな?
九条さんが何も気付きませんように。
完全犯罪(消す方)を完遂したところで九条さんが登校してきた。
あっぶね、見つかるところだった。
何事もなかったふうに俺は教室を出て道具を返した。
特に何も言われなかったので気付いていないだろう。
運動着に続き、さすがにこれは見過ごせん。
俺と九条さんに恨みのあるやつ?
誰だ、心当たりがねぇ。
そもそも俺、絡みがある奴が少ねぇからな。
むしろ九条さんの方を中心に探ったほうが良いかも。
最悪、現場の取り押さえだな。
さて、どうしたものか。
◇
さらに別の日。
リア研の活動を終えて帰宅しようとしたタイミング。
下駄箱を開けて靴を取り出すと違和感。
あ・・・画鋲!
靴底にテープで固定されてるよ。
古い・・・古すぎる・・・。
電子ペーパーが主流で、壁に固定した電子ペーパーをデータで書き換える掲示が標準。
物理的な紙を貼る機会は無い。画鋲の入手経路の方が知りたいくらいだ。
刑事ドラマなら購入先で特定出来ちまいそうな案件だろ。
俺みたいな一介の学生には無理だけどさ。
そんな下らないことを思慮して立ち尽くしていたせいで。
後から来た九条さんに現場を発見されてしまった。
「京極さん、それ・・・」
「あ、これ? 昭和のギャグを懐かしんでね!」
通じんのか、こんなん!!
俺、どうして口走ったし!!
理解できない九条さんが固まったじゃねぇか!!
「画鋲探すの、苦労したんだぜ」
「・・・」
そもそも画鋲って言って通じるのかも怪しい。
なんだこの恐ろしいジェネレーションギャップ!
昭和と令和どころの話じゃねぇぞ!
俺は誤魔化して笑いながら画鋲を剥がす。
ああ、九条さん。くすりとも笑ってくれねぇよ・・・。
誤魔化しきれなかったか、ギャグが理解できず止まっているのか。
やべぇ、俺が状況を理解できなくなってきてんじゃねえか!
「・・・帰りましょう」
「うん」
よし、何事も無かったことになった!
帰り道も特にこの件には言及されなかった。
◇
6月中旬。
九条さんへの嫌がらせは、その後、机へのマジック落書きが2回あった。
全部、俺が先に消したので九条さんは気付いていない・・・はず。
ちなみに俺へのハッキングもどきも2回あった。
今度は動揺せず消せたので、こっちも九条さんは気付いてないはず。
しっかしなぁ、いじめってレベルじゃないんだよな。
いじめなら他の人も動員して陰口を叩いたりってのが定番のはず。
でもそこまでの動きは無い。
個人的に思惑があってやっているとしか思えない。
俺と九条さんを別れさせたいのか?
出来るならやってほしいんだけど・・・(何
まぁ捨て置くわけにもいかず。
探偵京極の犯人探しが始まった。
俺の出来ることは・・・現場を押さえるだけ!
だってね、ハッキングなんて対応できないじゃん!
だから落書きしてるのを探すしかない。
まず、落書きがされるタイミングを特定することにした。
朝、俺が登校するまでに落書きされているのだ。
皆が下校した後から、朝、登校するまでの間の犯行となる。
では夕方から夜なのか、早朝なのか、という点だ。
しばらくの間、リア研が終了してから生徒の帰宅が終わる18時前まで学校に残った。
教室を覗いてから帰る。
そして九条さんより早めに登校して机をチェックする。
すると4回目の落書きがされていた。
夕方、俺が確認していたのはかなり遅い時間で、あれ以上残っていると先生にどやされる。
だから落書きは早朝だろう。
朝練の関係でかなり早い時間帯から空いているからだ。
朝と特定できればやることはひとつ。
早朝に学校へ行って犯人を確保する。
幸い、朝のジョグで結構な距離を走っている。
コースを学校方面に変更してしまえば済む話だ。
俺は何日か学校へ走り、こっそり教室を確認し、また寮へ戻るという生活をした。
その甲斐があって、1週間後のある日。
とうとう早朝の教室に誰かがいるのを発見した。
確認する時は、いつも忍び足で覗いているので向こうに気付かれてはいない。
様子を見ていると、九条さんの机で何かをしている。
ああ、やはり貴重なマジックを!
お前、どこから手に入れたんだよ! 高級品だろ!
シンナーで消すなんて知らねえだろ、絶対!
・・・違うそこじゃねぇ。
俺はがらりと教室の扉を開けた。
「・・・!!!」
犯人はこちらを見て狼狽する。
そりゃね、現場を押さえられちゃ言い訳もきかない。
「そうか、お前だったか・・・」
「・・・」
犯人は黙りこくっている。
「この場で糾弾する気はねぇ。納得しなきゃ、また続けるだろうからな」
「・・・?」
「体操着もお前だったんだろ?」
犯人は逡巡した後、頷いた。
「だから。当事者で話し合おうや。俺と九条さんとお前と」
「・・・」
「日程を決めたら声をかけるから、それまで大人しくしといてくれ」
犯人はもう一度、頷いた。
◇
俺はその日の夜、夕食のタイミングで九条さんに切り出した。
「九条さん、話がある」
食べながらだったので九条さんは一呼吸置いてから応じた。
「ん・・・わたしもちょうど、お話があったのです」
「じゃ、俺から。ほら、前に体操着がゴミ箱に入ってたことがあったろ」
「はい、ありました。その時は見つけてくださってありがとうございました」
「うん。その犯人が分かったんだ」
「え! そうなのですね」
「そんで。どうも俺と九条さんに思うところがあるみたいだから、一度、話し合いをと思って」
「・・・なるほど」
九条さんは何度か頷く。
あれ?
何かちょっと笑ってる?
「実は・・・わたしも犯人を捕まえたのです」
「え!?」
「ほら、京極さんのテクスタントに表示されていたでしょう」
「ああ・・・アレ? 見えてたか・・・」
「はい、お隣ですから。嫌でも目に入ります」
隠せてなかったよ!
駄目じゃん、俺。
「ほかにも、靴に画鋲が置いてあったことがありましたよね」
「・・・あれも? やっぱり分かった?」
「はい。京極さんを狙っているのは承知していましたから」
うん? 俺狙い?
九条さん狙いじゃなかったのか?
「それで、その犯人の方とも、京極さんと同じように話し合いをしようとお話しまして」
「え?」
「ですから・・・わたしと京極さんと、その犯人の方と、4人で話し合いをしましょう」
・・・知らないところで話が進んでいたよ!
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