誰得☆ラリクエ! 俺を攻略するんじゃねぇ!? ~麗しの桜坂中学校編~

たねありけ

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ハチャメチャの中学2年生

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 すっかり秋になった10月。
 後期授業が始まった。
 日常生活は元通り。
 無事にクラス替えの試練を乗り越えた御子柴君と花栗さんは毎日がご機嫌だ。
 仲良くなった4人でお昼を食べるのが毎日の楽しみになっている。
 ちなみに名前呼び、3人の希望で継続することに。
 俺だけ苗字を呼ぶという、傍目には変な関係になってしまった。
 ・・・だって、少しでも離しておかないと、さ。


 ◇


 大惨事。
 2158年に宇宙から飛来した魔物が隕石に乗って太平洋に落下した。
 世界を大津波が襲い、隕石に巻き上げられた灰塵による冬が世界を閉ざした。
 1か月にも及ぶその闇は一時的な氷河期を作り出し動植物の1割を絶滅させたと言われている。
 その冬が晴れたとき、ムー大陸が太平洋に現れ、世界中に魔物をまき散らした。
 人類各国は防衛線を敷いたが、アフリカ大陸、南アメリカ大陸、中近東は魔物により壊滅。
 核兵器も吸収してしまう不可思議な魔物は、人類へ遣わされた死神と恐れられた。

 人類側も黙ってはいなかった。
 新人類フューリーと呼ばれる者たちが生まれるようになり、魔物との戦いを始めた。
 戦線を維持、押し返すことのできた人類は、新人類を教育し戦力の増強を図った--

 これ、後期の歴史の授業の内容概略。
 とうとう近代史から現代史になった。
 全く知らない約130年の近代史を終え、ようやくラリクエの歴史に追いついたのだ。
 少しは知っている知識があるので覚えが早い。
 そういう意味では安心していたのだが・・・。
 気になることがある。
 宇宙から飛来したのは「魔王」だったはずだが「魔物」になっていた。
 つまり人類は「魔王」の存在を認知していないのか?
 ラリクエでは当初から「魔王」だった。
 もしかしたら、2210年までの間に「魔王」の存在を突き止めるのかもしれないが。

 ともかく人類の立ち位置を復習を兼ねて勉強する。
 世界政府樹立の話や、各国政府機関、国際機関、軍事的な協力。
 そういった話は社会の勉強として覚えることになっている。
 今後のことを考えれば、このあたりは深く理解しておいて損はなさそうだ。

 懸案といえば科学の授業もそうだ。
 宇宙力学の中でも前期に引き続き重力場は鬼門だ。
 相対論とか量子力学の原理を理解していないと答えが導き出せないのだ。
 数式が無いとはいえ、概要は理解しなければいけないと義務教育内の話になっている。
 これ、リアルだと大学の教養レベルなんじゃなかろうかと思ってしまう。
 ほんと、この世界の教育レベルって高い・・・。


 ◇


『それじゃあね、京極君』

「うん、また」


 リア研の部室で先輩との学習を終える。
 唯一、俺のやることが変わっていない部分だ。
 ルーチンを終えた俺は、久々にAR値の問題に取り掛かることにした。
 今日、気付いた違和感を考えてみたいと思っていた。
 つまり「魔王」と「魔物」の関係だ。
 まぁ・・・考えるまでもなく「魔王」は「魔物」の王だろう。
 だから人類がその王の存在に気付いていないだけかもしれない。
 意思疎通はできないし、ムー大陸には侵入できた実績がほとんどないはず。
 この理屈はおかしくはない。

 でも・・・俺の知ってるラリクエ歴史では、確か「魔王」の元までたどり着いた人類がいるはずだ。
 じゃないと「魔王」なんて存在を倒しに行くという話にならない。
 そこが学習する歴史上、反映されていないということだ。
 つまり・・・機密ということ。
 一般人に魔王の存在を教えては都合が悪いことがある、ということだ。

 ・・・そういえば。
 人類は核を使っても魔物を堰き止めることができなかった。
 だから旧人類の戦力では一方的に負け続ける。
 戦線を維持できたのは新人類フューリーが居たからだ。
 一般的に新人類フューリーは2158年以降の生まれとされている。
 だが、どんなに力があったとしても。
 0歳児や乳幼児が戦えるわけがない。
 つまり、戦線を維持した旧人類側に戦える者が居た、ということだ。

 前に飯塚先輩が調べていた「旧人類と新人類に細胞レベルの差異はない」という事実。
 人類が大惨事でDNA的に進化したわけではないという裏付けだ。
 とすると、何かしらの方法で旧人類が戦えるようになったと推測できる。
 もう少し、大惨事の順を追って考えてみよう。

① 2158年に魔王が飛来する。
② 世界が1か月、闇に閉ざされ生物が1割絶滅した。
③ 魔物が侵攻を開始した。
④ 人類は南アフリカ、南アメリカ、中近東を失った。
⑤ 戦線維持する体制が整った。

 こう整理できるはずだ。
 問題は、①から⑤の期間で、新人類の力を持つ者が存在しうるようになったこと。
 今日の授業の感じでは、この期間はおおよそ2~3年だった。
 だから2158年に新人類が生まれたとしても、⑤戦線維持の時点で3歳。
 戦える歳ではない。
 だから、②から④の間で、旧人類の中に新人類と同等の力を持つ者が出てきたはずだ。
 うん、きっと隠蔽されているような事項なんだろう。

 俺は調べ方を変えた。
 大惨事から、戦線維持までの人類の歴史。
 授業でやらないような話を集める必要がある。
 それが・・・AR値の問題を解決するための鍵になると予感したからだ。


 ◇


 俺はひたすらに検索で調べ続けた。
 リア研の時間はもとより、休日の空き時間や平日の夜の勉強時間の一部まで使って。
 だが、授業で習う以上の詳しい話は掴めなかった。
 そうして思い至った。
 授業で隠すようなことだ、一般人に教えることじゃない。
 軍事的なことなら情報操作されていてもおかしくない。
 通常の検索で閲覧規制が入っていると考えるほうが自然なのではないか。

 では、どうやって閲覧規制を抜けるのか。
 そもそも、閲覧規制をどうやってかけているのか。
 リアルのインターネットでは、パソコン本体の中から、中継のルーティング部分、果ては政府レベルの基幹側での閲覧規制まであった。
 個人で手を出せるレベルでないなら諦めないといけない。
 けれども・・・人類は世界中で魔物と戦っているはずだ。
 であれば、それなりに情報が入手できなければいけない。
 ならば情報は置いてあって、アクセスできる人間が限られるというほうが自然だ。
 だったら俺のIDの閲覧レベルを変えるか、アクセスできる人に頼めば良い。

 今度はそう結論付けて、相談することにした。
 情報端末に詳しい人・・・俺の中で思い浮かぶのは3人。
 順に聞いてみよう。


 ◇


『え? 閲覧規制? 私は知らないなぁ』


 最初に聞いたのは橘先輩。
 色々と手を焼いてくれたし詳しそうだと思ったからだ。


『前にね、さくらに頼まれてハッキング対策ツールを友達から借りたことがあるんだ』

「ああ、あの事件のときの」

『そうそう。そのツールを作った人に聞いてみる』

「ありがとう、頼りにしてる」

『ふふ、武君の頼みだからね。頑張っちゃう』

「そういえば、インターハイはどうだったの?」

『そうだ、アバターカラオケのときに言えなかったんだ! 聞いてよ、日本大会までいったんだよ!』

「お、すげぇ! 橘先輩、さすが!」

『ふっふっふ。私の努力の賜物だからね!』

「もう今年は試合ないの?」

『うん、大きいのはインターハイだからね。他は地域的なものばかり。相手もそんなに手応えないんだ』

「手応えがない、なんて言っちゃうあたりが素敵だよ、橘先輩」

『えへへ、もっと褒めて褒めて!』

「・・・やばい、その姿、ちょっと可愛かった」

『あ~ん! もっと悶えてくれて良いんだよ!』

「そのまま色々言わされそうだから止めとく」

『ええー、なんでぇー?』

「待ってくれるんでしょ? だったらおあずけ」

『うう、ひどいよ武君。私は毎晩、武君のことを想って・・・』

「と、とにかく。ごめんだけど、頼んだよ」

『ん、わかった。吉報を待つがよい!』

「うん。お願いした。お休み、香さん」

『ああ~! 最後に名前呼びなんて!? 今日は良い夢見られるぅ~! おやすみぃ~♪』


 ◇


 次に尋ねたのは飯塚先輩。


『閲覧規制・・・』

「うん、ここでアクセス解除してたくらいだし、知ってるかなって」

『う~ん・・・あることは知ってるよ』

「やっぱり、あるんだ」

『問題の多かった古代インターネットの時代でさえ規制はあったからね。現代に無いわけがないよ』

「問題はそれを俺が乗り越えて調べられるかどうか、なんだけど・・・」

『・・・一応、聞くんだけど』

「うん」

『調べるのはAR値関連の話、なんだよね?』

「・・・うん、そうだよ」

『う~ん。いわゆる軍事機密とか、セキュリティレベルの高い部分だからなぁ。見つかると法律違反になっちゃう』

「違反が見つかるとどうなるの?」

『ええー。セキュリティレベルにもよるけど、懲役刑だよ。5年とか10年とか』

「げっ・・・!!」

『だからお勧めはできないんだよ。リスクをかけても欲しい情報があるとも限らないし』

「・・・もしかして先輩、調べたことある?」

『・・・ひみつ』

「お願いだ! やり方を教えてくれ!」

『ちょ、ちょっと。画面の前で土下座されても見えないよ・・・』

「頼む、この通りだ!」

『おーい、だから見えないって・・・』

「先輩は俺のことが嫌いなんだね?」

『ええー・・・嫌いだったら世界語講座なんてやってないよ・・・』

「ごめん、冗談です」

『もう・・・とにかく、私からはおすすめしないし、教えられない』

「こんなに頼んでも?」

『うん。京極君のことが心配だから』

「・・・うん、わかった。無理言ってごめん」

『ううん。私のほうこそ・・・』

「あ、時間、取らせちゃったな! また明日な、先輩」

『うん、また明日』


 ◇


『俺を牢屋に入れたいのかーって、断られちゃってさぁ』

「ハッキングツールを作るくらいなのに・・・」

『機密情報へのアクセスは刑罰が大きいみたいよ? 懲役刑だし、偽証はばれ易いみたいだし』

「そうなのか」

『うん。そんな危ないなら、私が知ってても武君には教えられないなぁ』

「う~ん・・・」

『大事な調べもの?』

「・・・うん」

『ん・・・もう少し、ほかの人にも当たってみるよ』

「重ねて、お願いします」

『調べることは、大惨事の後の世界戦線、だっけ?』

「うん。そのあたりの情報を詳しく見たいんだ」

『不思議なこと調べるね? うん、でも武君には必要なんだよね。私も頑張るから』

「ん、ありがとう」

『ああー・・・武君成分を補充してくれたら、もっと頑張れるんだけどなー』

「えっと・・・今度、日曜日にでも遊びに行こうか」

『ほんと!? 武君から誘ってくれるなんて! 頑張っちゃうぞ!』

「4人一緒でね」

『ああ~ん、もう! つれない~!!』


 ◇


 以上が知っている人のうち、ふたりに当たった結果。
 芳しい結果を得ることはできなかった。


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