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【7】
しおりを挟む昼休憩を終え、午後の始業開始前に持ち場に戻る。
その途中、背後から先程まで上條さんと久世さんを取り囲んでいたと思われるおばさま達の話し声が聞こえてきた。
「上條くん29歳だって」
「あら、ウチの息子と同い年ね。結婚しているのかしら?」
「それが彼女募集中らしいのよ」
「あらあら。彼、ニコニコ愛想良くて可愛いじゃない。ウチの婿に欲しいわ。ウチの娘紹介してみようかしら」
聞き耳を立てているつもりはなくても、おばさま達の声が大きくて嫌でも耳に入ってくる。
隣で「…うっし」と小さくガッツポーズしている島津さんに苦笑いしていると、おばさまの一人が「でも……」と声のトーンを下げる。
「久世くんの方は………ちょっと暗いわね」
「あぁ……素っ気ない子よねぇ。笑顔もないし……人見知りってやつかしら」
「受け答えも反応もあまり良くないし、協調性があるようには見えないのよねぇ」
「あぁー……」
おばさま方達の洞察力はかなり鋭い。
お昼休憩の短い時間である程度の人間性を見抜いてしまっているらしい。
「上條くんに比べると華やかさに欠けるのよねぇ」
「そうね、ちょっと地味よね。垢抜けないというかなんというか」
「元は悪くない感じだけど………やっぱり笑顔がないのがマイナスポイントね」
おばさま達は非常に手厳しい。
自分達の居ない所でこんな批評会が繰り広げられているなんて知らない上條さんと久世さんには同情してしまう。
特に久世さんの言われようは酷い。
アウェイの地で初対面のおばさま多数に囲まれれば圧倒されて萎縮してしまう気持ちは分かる。
あの状況下でニコニコ対応出来ていた上條さんを基準にしたら、クールぶっている私もおばさま達からしたら協調性がない奴だと評価されそうだ。
………というか、もうされてるかも。
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