その声は媚薬

江上蒼羽

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シャワーで1日の汚れを流しながら、私の要求を聞いた時の久世さんの様子を思い返す。



『なっ…………何故そんな……』

『…………駄目ですか?』

『だ、駄目というか………その……』

『お願いします。是非』



顔を真っ赤にしてあわあわする久世さんに有無を言わさないとばかりに圧を掛けると、彼は渋々了承してくれた。



“私とセックスして下さい。1回で良いんで”



久世さんからしたら、私の要求は唐突過ぎたのだろう。

彼は驚きを通り越して引いていたかもしれない。

私自身も自分の大胆さにドン引きだ。



簡単にシャワーを済ませた後は、備え付けのバスローブを羽織ってバスルームを出た。

薄暗い部屋には、久世さんが緊張した面持ちでベッドの端に腰を掛けていた。


「お先にすみません。久世さんもどうぞ」


私の声に大袈裟にビクついた久世さんは「はい……」と、あまり気乗りしていないような返事をしてバスルームへと向かう。

彼の弱味に漬け込んで無理強いしてしまった感が否めない。

申し訳ない気持ちは大いにあるが、自分の欲望の方を優先させて頂いた。

久世さんの声や吐息を聞きながら抱かれてみたいという、痴女みたいな欲求。


「変態か………私は……」


やたら大きくてフカフカしたベッドに横になり、微かに聞こえるシャワーの音に耳を澄ませる。

早く済ませて欲しいと思いながら期待に胸を膨らませた。

 
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