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声という宝物①side:竜生
しおりを挟む事が済んで我に返ったら、忽ち恥ずかしさと自己嫌悪に苛まれる。
ちょっと………所か、かなり調子に乗り過ぎた気がする。
興奮し過ぎて、彼女の反応が良い事に普段しない言葉攻めをしてみたり、いつもは我慢している声を我慢出来ずに発してみたり……
穴があったら入りたい………いやいや、今入ったじゃねーか………等としょうもない事を思いながら俺が項垂れている横で彼女は横たわったまま呼吸を整えている。
あられもない姿のままで。
「………伊原さん、いつまでもそうしてると風邪引きますよ」
ぐったりとして動く気0の彼女に行為の前に身に付けていたバスローブをそっと掛けた。
正直目のやり場に困る。
「あの………何かすみません……」
彼女に行為を後悔されていたり、スタンダードなプレイしか出来ない俺にガッカリされたら悲しいとの思いから、先回りして謝罪の言葉を口にしてみた。
「あんまり上手くなくて……満足させられたでしょうか?」
隣から小さな溜め息が聞こえたと思えば、彼女は呆れたように言う。
「………余韻に浸って動けないでいる私を見て察して下さい」
いちいち聞くなよ、言わせるなよ……との含みがある台詞から彼女が満足してくれたらしい事が読み取れた。
「じゃあ……良い方に受け取っておきますね」
密かに男としての自信を得た喜びを噛み締めていると、彼女が気怠そうに体を起こす。
その拍子に彼女に掛けたバスローブがずり落ち、白くて華奢な背中が顕になった。
ほんの何分か前まで触れ合っていた肌。
そこにいくつもの鬱血痕があるのに気付いた。
紛れもなくそれは自分が勝手に付けたもの。
いくら興奮していたからといって自分の所有物みたいに印を付けるのは如何なものか……と冷静になった今、自分の馬鹿さ加減に呆れる。
直視出来ずに目を逸らすと、彼女が恥ずかしそうに言ってくる。
「こちらこそすみませんでした。我が儘言いまして……」
「いえ………何か……気恥ずかしいもんですね」
彼女は我が儘と言ったけど、俺にとっては我が儘なんかじゃない。
そりゃ、最初は驚いた………というか、引いたけど。
気持ち良い思いをさせて頂いたのだから、こちらから丁寧にお礼を言いたいくらいだ。
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