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計画始動⑩
しおりを挟む「他人の空似じゃない?」
「いやいや、間違いないって。隣の男の人も芸能人だよ、多分」
「声掛けてみれば?」
「やだ無理。そんなミーハーみたいな事出来る訳ないじゃん」
「てか、二人、付き合ってんの?」
「知らないよ。でも、だったら尚更声掛けにくいって……プライベートなんだし」
おいおい……丸聞こえだよ…と、心の中で呟きつつ、忍足さんの方をチラ見。
と同時に、バッチリ目が合った。
忍足さんは、ニッと口角を引き上げる。
「腹、減ったね」
彼にも後ろの女子達の会話が聞こえている筈なのに、この余裕。
というか、全然気にしてなさそう……
一人、ソワソワしている私の方が馬鹿みたいだ。
「ーーで、覆面ライダーの最大の魅力は、やっぱり美しいフォルムにあると思うんですよ!体にピッタリフィットするライダースーツ……機能性を重視した流線型の装飾……もう、最高です!」
芸能人優遇サービスがあったら良いのに……と思う程長時間並んだ甲斐あり、漸くランチタイム。
とはいっても、ホットドッグとドリンクをテイクアウトしてベンチで食べているだけ。
何て事ない普通のホットドッグながらも、空腹が効いて極上の美味しさに感じる。
だからか、自然とテンションが上がり、饒舌になる。
「ストーリーや登場人物も魅力的だし……ただ悪を倒して、正義は勝つ~…という単純なものじゃないんですよね。悪役も己の信念を持って行動している訳だし……悪役にもストーリーがあるんですよ!そう思うと、悪役にも並々ならぬ愛着が湧いて来るんです。何が正義で、何が悪かが分からなくなるというか………ていうか、完全な悪っていないような気がするんですよね」
ホットドッグ片手に覆面ライダーの魅力を語り出したら、もう止まらない。
「本当、素晴らしい作品だと思います、覆面ライダーシリーズって。それから、武器も中々凝っていて……あ、私の一番のオススメは、第12作品目に登場するシャインボウという弓状の武器で…」
早口で捲し立てるように語る私に、忍足さんは唖然。
「この武器はその名の通り、光の矢を放つのですが、その光の矢はーー…」
「ちょっ………ごめん、どこで相槌打てば良いか分かんないし…マニアック過ぎてついていけない…」
忍足さんのドン引き顔にハッと我に返る。
またやらかしてしまった……と。
「す、すみません……つい、興奮しちゃって…」
「いや、別にいいけど。口の動きが異様に滑らかで面白かったし」
スイッチが入ると、一方的に熱く語ってしまう癖。
直そう、直そうと思っていながら、長年染み着いた癖は直せないもので、ふとしたきっかけで飛び出してきてしまう。
これで失敗してきた事は、数え切れない程あるというのに。
「どこで息継ぎすんのかなーって思って見てた」
「………あ、はは…そうですか…」
喋っている側はそれ程息苦しくはないけれど、聞かされている方は色んな意味で息苦しくなるのだとか。
「……こんなんじゃ、恋愛なんか出来っこないですよね…」
一人寂しく歳を重ねていく将来を見越して、溜め息が一つ。
「こんなオタク女子、異性からだけじゃなくて、同性からも嫌がられますし……」
親でさえ、私の覆面ライダーファンを理解してくれなかった。
唯一の理解者は、相方の間宮だけ。
ジャンルは違うけれど、互いにオタク同士、通ずるものがある。
「封印しよう、もうやめよう……なんて思っても、やっぱり覆面ライダー好きだし…コレクションも捨てられなくて………まともじゃないのは分かってるんですけど…」
思わず、ぎゅっと手に力が入る。
その拍子に、ホットドッグのソーセージがブニュリ……と頭を出した。
ソーセージが落ちそうになって慌ててかぶり付くと、忍足さんは「そんな事ないんじゃない?」 と笑う。
「好きなものは好きでいいと思うけど?ファッション好き、メカ好き、歴史好き………誰だって何かしらのオタクだよ」
意外な言葉にホットドッグをくわえたまま瞬いていると、彼はボソッと……
「俺だって、文庫本オタクだし」
思わず、口からホットドッグを離した。
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