売名恋愛

江上蒼羽

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覆面ライダーオタクな女子(side 慧史)

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「私は、地球の危機を救うヒーローへ熱い声援を送ってきます」

「あ、ちょっと……」


通りすがりの一家が放った覆面ライダーショーという言葉に興味を持っていかれた様子の彼女は、渋る俺を置いて歩き出した。


「覆面ライダーショー……覆面ライダーショー……」


不気味にブツブツ呟きながら進む背中を眺め、小さく溜め息を吐いた。

こっちには段取りってもんがあるんだし、勝手な行動を取られたら困るんだよ……と、苛立っていると、耳に装着してある小型イヤホンから『すぐ後を追って』と司令塔から指示が入る。

それにまた溜め息を吐いて。


「待って、素良。付き合うから、一人で行動しないで」


仕方なく、彼女の後を追う。





何で良い歳してこんなガキ臭いの観なきゃなんないんだよ……なんて不満を抱いていたものの…


「がんばれー!」

「やっつけろー!」


会場の子供達がショーの主役に懸命に声援を送っている姿に胸を打たれた。


「いいぞー!ライダー!」

「まけるなー!」


一寸の曇りのない澄んだ瞳、期待に満ちた横顔。

それらを一身に受けるヒーローが羨ましく思えた。

それと同時に思い出す。

かつての俺も子供達に夢を与えるヒーローだった事を。

俺の拙い演技にも、子供達はあんな風に目を輝かせてくれていたんだろうな……なんて思ったら、感慨深いものがあった。

遊園地の子供向けショーにも拘わらず、手を抜かずに演技している役者達の姿にもグッと来るものがある。

意外と見応えあるよな……と思いながら、チラリと隣を盗み見ると、良い歳した大人の女性が、真剣な顔してショーを観ている。

子供達と一緒に声援を送りたいのを堪えているのか、固く結ばれた唇がヒクヒクしている。

膝に置かれた拳は、小刻みに震えているし、子供達同様、目がキラキラ輝いている。

そんな姿を見たら、黒歴史だった筈のヒーロー物出身という経歴が誇らしく思えてくるから不思議だ。


「ふっ……」


思わず笑みが漏れかけて、慌てて口元を押さえた。

幸い、彼女はショーに夢中で気付いていない。

この時からだったのかもしれない。


大切な事を思い出すキッカケを与えてくれた彼女に、特別な感情を抱き始めたのは。
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