前向き時々後ろ向き

江上蒼羽

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10月12日

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10月12日(土)


ステロイド注入2日目。

10時30分から、一時間くらいかけて体に入れていく。

点滴の針は、点滴を打つ3日間ずっと刺しっぱなしというから怖い。

医師曰く、ステロイドが体に入ると元気になるらしい。

その為、不眠になり易いとか。

旦那が夜眠れなかったと言っていたのは、多分その所為と思われる。


この日の午前中、私の父と、一番上の姉が見舞いに来てくれた。

面会は14時からだと伝えたのだけれど、午後から来ると予想されていた台風を懸念しての来訪。

父と姉のお見舞いに少し緊張しながらも何度も頭を下げていた旦那。

丁度ステロイドの点滴を打つタイミングと重なった為、廊下で処置が済むまで暫し待機していた時、思いがけず姉から義兄の闘病中の話を聞かせて貰った。

義兄は、若くして胃癌を患い入院。

胃の大半を切除したものの、予後が悪く癌発覚から半年でこの世を去った。

闘病中、義兄と姉が医師から呼び出され、病気について話を聞かされたそう。

途中で義兄は退室させられ、部屋に姉だけ残されたという。

その時点で義兄は何かを悟ったらしい。

残された姉は、医師から義兄の癌はステージ4の段階でもう助からないと聞かされたそう。

明るく「ドラマの世界だよね」と語った姉は、もう吹っ切れているように見えたけど、心の中ではずっと何年も泣いているのかもしれない。

義兄の所に戻った時に、義兄から「何て言われたの?」と問われ、嘘をつくべきか本当の事を言うべきか迷い、何も言えなかったそう。

自分の態度で義兄は全てを悟ったんじゃないかと姉は言っていた。

二人共辛かったと思う。

そして、この世に神なんて居ないんだとも思った。

その話を聞いている時、父がぽつりと呟いた。


「どうしてウチの子達は皆……」


と。

たった一言でも十分意味を理解出来た。

一番上の姉は、結婚して5年と立たずに義兄と死別。

二番目の姉は未婚の母の道を選び、三女の私の旦那は難病発症……

別に私も姉もそれぞれ不幸だと思っていないけど、父親からしたら複雑な思いがあるのだろう。

二人に今後の治療の事等を話し、再三礼を言って見送った。

その後、旦那には台風の様子を見て午後また来れたら来ると伝えて、子供達の待つ家に帰った。


家に帰り溜まった家事をこなしていると、旦那の職場の先輩がお見舞いに来たとLINEが入っていた。

その先輩は、旦那より4つくらい下らしいのだけれど、何故か旦那を気に入ってくれていて、入院当初から気に掛けてくれていたそう。

先輩曰く、旦那が入院した事で会社が殺伐としているとの事。

旦那はゆるキャラみたいな扱いで、入社歴はまだ6年程度ながら会社の中心にいたらしい。

そんな旦那がいないものだから、どことなくギスギスしているとか。

仕事も相変わらず忙しいという。

早く戻って来て欲しいと言われたそうだけれど、一番そうしたいのは本人だと思う。 

先輩は一時間くらい滞在して帰宅。

その後、私も子供達を連れて病院に行こうかと思ったものの、暴風雨で断念。

旦那は子供達に会いたい、今日来ないの?等とLINEを送ってきたけれど、こんな状況で無理じゃい!!と突っぱねた。 

病院に居ると外の状況がさっぱり分からないらしい。


その日の夜、台風による家の揺れと台所の雨漏りに必死に耐えた。

旦那不在で心細かったけれど、子供達を守れるのは自分だけだと気合いを入れ、いつ避難勧告が出てもいいように荷物をまとめておいた。

避難しようにも外に出れるような状況じゃなかったけれども。

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