21 / 74
10月13日
しおりを挟む10月13日(日)
台風の翌日は、海が近い所為もあって、窓を開けた瞬間から磯の香りがした。
思わず鼻を摘まみたくなるような濃い匂いだった。
テレビをつけると、台風での大きな被害の様子を何度も何度も繰り返しアナウンサーが懸命に訴えていた。
私の住む地域は大きな被害はなかったけれど、よく遊びに行っていた隣県の悲惨な状況に、胸が締め付けられる思いだった。
この日は、点滴3日目。
前日より少し遅い時間に点滴開始。
毎回きっちり同じ時間に始めなくていいものなのか疑問だった。
旦那も同じように思っていたようで、それとなく看護師に聞いてみた所、その日その日に点滴を打てれば時間は関係ないみたいな事を言われたそう。
えっ、そんなもんなの?いい加減じゃない?……等と少し不審に思ったものの、所詮こちらは素人なので、口を挟まなかった。
相変わらずステロイドの影響で体が火照るようで、暑い暑いと旦那は団扇を扇いでいた。
それ以外は特に体調の問題はなし。
看護師に免疫がなくなってるので、面会時はよーく気を付けて下さい……と、念を押されたそう。
面会を控えた方がいいという意味なのかちょっと考えた。
旦那は私と違って全く気にしていないようで、マスクと手洗いと消毒さえしっかりしてくれれば大丈夫だろ……と、子供達との面会を切に望んでた。
家で作ったおかずをタッパーに詰め、旦那の荷物と一緒に病院に持って行った。
旦那は子供達の顔を見た瞬間目が細くなり、元からの垂れ目が更に垂れる。
下の娘の眉をはむっとするのが好きな旦那は、娘を羽交い締めにしてから、眉をはむはむ……
嫌がりつつも本気で嫌がっていない娘も娘だが、旦那の愛情表現は時々いき過ぎているようにも思えてならない。
見ていて面白いけれど。
病院の夕御飯は午後6時からで、少し早い。
食事が運ばれて来たのと合わせて、家で作って来たお弁当を広げた。
「遠足みたいだね」
子供達がお弁当を食べる姿を見て、嬉しそうに旦那が言った。
久し振りの家族団らんに旦那は満足そうだった。
その日の旦那のノートには
“やっぱり家族はいいな”
と、書いてあった。
いつも“暇”しか書かない人が初めてそれ以外の言葉を記してた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
7
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる