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【34】
しおりを挟む一旦生徒玄関で別れ、靴を履いてから再度合流する。
ドシャ降りだった雨は小雨へと変わっていた。
アイブロウ先輩は、彼女の雰囲気に合った淡い色合いの傘をさし、俺は俺で置き傘としてたまたま放置していたビニール傘をさした。
校門までの道をまた気まずい空気の中歩く。
雨が傘を弾く音がやけに大きく感じる。
沈黙が嫌で何か話題を……と探していると、アイブロウ先輩が恐る恐る口を開いた。
「………清原くんでも分かるくらいバレバレなのに、当の本人には全く伝わってないんだよね…」
悲しげに言う先輩。
足元に拡がった水溜りを避ける。
俺は何となく百田は先輩の気持ちに気付いてるんじゃないかと思った。
先輩の態度はあらさまだ。
だから逆にそれに気付けないというのは不自然過ぎる。
「あー……アイツ、鈍感そうじゃん?」
多分百田は敢えて気付かない振りをしているんだろう。
けど、それは先輩には黙っておいた。
校門での別れ際、アイブロウ先輩がいつも通りに手を振る。
「じゃ、また……明日は部活休みにするね。図書室に来ても居ないから」
「了解っす」
ビニール傘越しに見る先輩は笑顔だったけど、それはどことなくぎこちなくて、何故か胸が強く締め付けられる思いだった。
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