むっちゃんと不思議なクレヨン

江上蒼羽

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むっちゃんと不思議なクレヨン【4】

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むっちゃんとりりは、今度は岩だらけの場所にやって来ました。



赤茶色した固い岩が、あちこちにあります。


大きな岩、小さな岩、中くらいの岩……


どこを見ても、岩しかありません。




「おいしばっかだねぇ」


「みゃうぅ…」




むっちゃんとりりがキョロキョロしていると、おばあさんがやって来ました。




「おやおや、かわいらしい坊やと猫だこと。こんな所で何をしているんだい?」




おばあさんは、シワだらけの手でむっちゃんの頭を優しく撫でてくれました。




「かぜさんにつれてこられたんだよ」


「おや、そうかい。こんな辺鄙な所に子供と猫を運ぶなんて、意地悪な風だね」




むっちゃんは、おばあさんの後ろにある大きな岩を見上げて聞きました。




「ここはおおきなおいししかないの?」




むっちゃんの質問に、おばあさんは困ったように笑います。




「そうだよ。もう、何年もここに草は生えてこないし、花も咲かない………木も全部枯れてしまった……あるのは岩だけなんだ」




むっちゃんは、お花も草も木もない寂しい景色を見て、とても悲しい気持ちになりました。




「おばあちゃんは、おはなすき?」




むっちゃんの問いに、おばあさんは目を細めて小さく頷きました。




「よぉ~し、それなら…」




むっちゃんは、ポッケから緑色と黄緑色のクレヨンを取り出しました。




「みどりくん、きみどりくん、おてつだいおねがいね」


「うん、任せて、むっちゃん!」




そこへ、ピンク色とオレンジ色


更に、紫色に白色クレヨンがポッケから飛び出します。




「私たちにもお手伝いさせて~」


「ありがとう。みんなでがんばろう」




むっちゃんは、岩に向かって小さなお手々を動かしました。




「まぁ………何て事だい…」




青々と茂る草。


風にそよぐ、色とりどりのお花。


赤茶色の岩しかなかった場所が、むっちゃんとクレヨン達の力で見事なお花畑へと変わったのです。




「こんなに綺麗なお花畑を見るのは、何年ぶりだろうねぇ……」




おばあさんは、目の前に拡がるお花畑に、涙を流して喜びました。




「ありがとう、ぼうや」




一輪のお花に鼻を付けたおばあさんは「いい匂いだ……」と、にっこり。




「ほんとにぃ?」




むっちゃんもおばあさんの真似をして、お花に鼻を付けようとした瞬間


またまた風がビュウッと吹きました。




「わぁ~」


「にゃ~」

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