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side:透也―3
しおりを挟む友梨の発言がショック過ぎて体が震える。
恐る恐る意味を確認する。
「ねぇ、ユリちゃん……どうして?」
「…………ごめん」
ユリが涙を拭った。
「そういうの、もう無理なの…」
「え……」
そういうの……とは、体を重ねる行為を指しているのだろう。
「……怖いのもあるけど、嫌なの」
「嫌って……」
彼女は、徐々に俺から距離を取っていく。
まるで汚いものを見るような目を俺に向けながら。
「ちゃんと理由聞きたい……聞かせて?」
友梨の肩を掴もうと伸ばした手は、強い力で弾かれた。
「あっ……ごめ…」
「ユリちゃん…」
怯える友梨を前に言葉を失う。
軽いボディータッチですら拒まれているこの状況が辛い。
「したい気分になれないし、これからもそういう気分にならないと思う。何でか分かんないけど、とにかく嫌なの」
「だからって気持ち悪いって……」
妊娠前は飽きる程した行為を今更気持ち悪いっていうのが理解出来ない。
「大和にとって良い父親で居てくれさえすれば良いの………病気や妊娠さえ気を付けてくれれば、浮気して貰って全然構わないから…」
友梨が俺に向かって深々と頭を下げる。
「だから、私に女を求めないで……お願い…」
目の前が真っ暗になった。
彼女の言葉を理解しようにも、受け入れられないでいる。
明確な理由はないのに、行為をしたくないと拒む友梨。
それ以前に、俺に触れられる事すら拒絶した。
愕然と項垂れる俺に追い討ちを掛けるように、彼女が言う。
「今日から寝室別にさせて貰うね」
「………」
悲しみから次第に怒りが込み上げて来た。
ワナワナと手が小刻みに震える。
「………何でだよ」
どうしてだか声が出し辛い。
「嫌だとか、気持ち悪いとか……意味分かんないんだけど」
「………」
「仕舞いには浮気しても良いって……おかしいだろ」
友梨は俺と目を合わそうとしない。
「俺達夫婦だろ?」
「うん………でもね…」
言葉に詰まる彼女に、更に腹が立った。
「でもじゃないし!ユリちゃんは俺の事嫌いなの?好きじゃないって事だよね?」
俺が捲し立てるように言うと、友梨が「好きだよ」とか細い声で言った。
かと思えば、威嚇するように睨み付けてくる。
「透也くんの事好きだけど、嫌なんだよ!気持ち悪いんだよ!!その欲にまみれた目で見られるのが堪らなく気持ち悪いの!」
友梨の目にまた涙が溜まる。
「透也くんの事好きだけど………駄目なんだよ……お願い、分かって」
切羽詰まったような友梨の表情に胸が苦しくなる。
「分かってって………さっぱり分かんないよ」
友梨がどうしても俺を受け付けなくなった事は分かったけど、俺はその事実をどうしても受け止められないでいた。
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