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side:透也―2
しおりを挟むその後、タイミングを見ながらそれとなく誘ってみた。
「もうそろそろ………駄目かな?」
その度に友梨は表情を曇らせて言う。
「ごめん、疲れてるから……」
心底申し訳なさそうに言うから、こっちは強気に出られない。
あぁ………そうなんだ、そうだよねって。
「家事、手抜いても文句言わないよ?無理しなくていいからね」
「ん?ありがと。でも、ピシッとしてないと私が嫌なの」
「身の回りの事で手伝って欲しい事があったら言ってね。出来る限りは協力したいし」
「ありがと。でも透也くんは仕事大変でしょ?気持ちだけでいいよ」
家事や育児を完璧にしようとする心意気は凄いと思うし、とてもありがたく感じる。
でも俺は、そこまでの完璧さを求めていない。
部屋が少し位散らかってても構わないから、俺の相手をして欲しい。
晩飯のおかずの数が少なくてもいいから触れ合いたい。
初めは友梨の体を気遣い我慢を重ねた。
彼女がその気になるまで気長に待とうと思っていたけど…
半年以上拒まれ続けると、流石に心が折れる。
虚しく自己処理に明け暮れる日々があまりに辛くて、風呂上がりの彼女を衝動的に後ろから抱き締めた。
「っ?!」
いきなりの事で驚いたのか、友梨が声も出さずに身を固くした。
久し振りに感じる、彼女の体温と柔らかい感触に抑えが利かない。
Tシャツの裾から手を滑り込ませた。
「………もういい加減、待てないよ」
「と、透也くん………?」
友梨の声が震えている。
大和の誕生から半年以上経過したというのにまだ怖さがあるらしい。
「まだ怖いんなら、ゆっくりするから………駄目?」
「…………」
友梨御用達のシャンプーの甘い匂いが鼻腔を擽る。
眼前には洗い立ての滑らかな肌。
幸い大和は静かに寝息を立てている。
いくら子供を産んでママと呼ばれる存在になっても、俺に取っちゃ可愛い奥さんである事には変わりない。
好きで好きで堪らなくて
ずっと一緒に居たくて、大切にしたかったから結婚した。
愛してるから抱きたいと思うし、俺を愛してくれているなら拒まず受け入れて欲しい。
一人寂しく自慰行為に耽るのは嫌だ。
二人で気持ち良くなりたいって思っていたのに………
「………ち悪い…」
「え………?」
「気持ち悪いっ!!やめてよ!!」
「っ?!!」
悲鳴に近いような声を挙げながら友梨が俺の腕を振り払った。
右手の甲に鋭い痛みが走る。
「いっ、た……」
引っ掻かれた傷から、薄く血が滲む。
友梨の激しい拒否反応に驚いたと同時に、彼女の口から飛び出た言葉に大きなショックを受けた。
「き、気持ち悪い……って…」
手の甲を擦る俺の前には、肩で息をする友梨の姿。
その大きな目には、涙が滲んでいる。
「何で……?」
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