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side:透也―1
しおりを挟む幸せって何だろう……?
最近良く考える。
可愛い奥さんを貰って、目に入れても痛くないって位、極上に可愛い子供が産まれた。
親馬鹿になんかならないと思っていたのに、妻そっくりの息子のあまりの可愛さにあっさり親馬鹿の仲間入り。
守るべきものが増え、独り身の時より責任は遥かに重い。
大切な家族を路頭に迷わす訳にはいかないから、辛い肉体労働を頑張れる。
額に汗して懸命に働いた後は、息子のお風呂の為に真っ直ぐに帰宅。
育児で疲弊しているであろう妻のフォローも忘れずにしている。
オムツ交換、ミルクの調乳、授乳にゲップは最早お手の物。
世のイクメンというやつには、まだまだ及ばないかもしれないけど、結構頑張っているつもりだ。
妻は慣れない育児に奮闘しながらも家事をきちんとこなしてくれている。
逆にちょっと位手を抜いてもいいんじゃない?って思う程。
家の中は綺麗で埃一つない。
仕事から帰れば飯の支度、風呂の支度が出来ている。
俺の汗臭い作業着を文句一つ言わずに洗ってくれるし、仕事の愚痴も優しく聞いてくれる。
何より、いつも笑顔で居てくれるのが嬉しかった。
何一つ不満はなかった。
出来た奥さんで自分は幸せ者だと信じていたのに…
何の疑いも持っていなかった事が疑問に変わったのは、妻がとある言葉を発してから。
息子の大和が産まれて一ヶ月が経った頃。
「……ねえ、一ヶ月健診どうだった?」
ベッドに横になった状態で、天井を眺めながら隣で寝そべる妻に聞いてみた。
彼女は「んー?」と眠そうに声を挙げる。
「順調だって。大和、体重1㎏増えてた。ちょっと重くなったかなー?って思ってたからやっぱりって感じ」
息子の成長の報告をする妻に「そっか、良かった」と返事を返す。
息子の報告を聞けて嬉しいけど、俺が求めていた答えじゃない。
「………それも、そうなんだけどさ…」
「ん?」
言い辛そうに口ごもりながら、欠伸を噛み殺す妻の方へと顔を向けた。
「ユリちゃんの体の方は?回復してきてるの?」
妊娠が分かった時、妻の友梨が怖いからって行為を拒んだ。
実際俺自身、万一お腹の子に何かあったら……って怖くて出来なかった。
出産後の一ヶ月健診で何の異常がなければ再開出来ると知って、それまでの辛抱だから……と、耐えてきた。
「順調に回復してるんなら………いいんでしょ?しても」
ずっと我慢してきた行為を再開させたくて、やんわり誘ってみる。
けれど、友梨は俺に背を向けたまま「……ごめん」と小さな声で呟いた。
「何か怖いからまだ無理。ごめんね」
「あ………そっか……だよね」
「ごめん」
俺を拒むように体を丸めた彼女の背中が何だか悲しかった。
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